【沖縄の地鳴り】

編集後記と辺野古関連月表
2016.3.19〜4.18

仲井 富

◆16・4・18
 辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会・沖縄学習交流集会が名護市で開かれた。故郷の土砂を戦争に使わせないため西日本7県の土砂搬出地と沖縄を結ぶというもの。鹿児島、岡山、福岡、熊本、長崎、山口、鹿児島、三重、沖縄など7県の代表によるもの。2013年12月、環瀬戸内海会議が、沖縄県知事、防衛相環境省に辺野古への瀬戸内海から辺野古への土砂搬出を止めるよう申し入れた。以後西日本各地で同様の運動が始まった

◆16・4・14
 政府と沖縄県は14日、名護市辺野古の新基地建設をめぐる和解内容を話し合うために設置した作業部会の初回会合を官邸で開いた。県によると、政府は、海上ボーリング調査に使用するフロートやオイルフェンスなどについて「撤去に向け検討する」と伝えた。ブイについては「臨時制限区域の問題があり、アメリカとの調整で時間が必要」と述べたという。

◆16・4・11
 名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブゲート前では、11日午前、新基地建設に反対する市民らが抗議を続けている。ゲート前には辺野古の闘いを支援するため県内外から多くの人が訪れ、約60人が集会に参加した。富士国際旅行社の「辺野古・高江をめぐるツアー」に参加し、千葉県から訪れた60代女性は「各地域で戦争に反対し平和な日本をつくるために行動していくことが、辺野古の闘いの支援につながる」と連帯のあいさつをした。ゲート前では市民らが「芭蕉布」や「月桃」などを合唱した。

◆16・4・10
 沖縄県宜野湾市の中心部にある米軍普天間飛行場の返還に日米両政府が合意して、12日で20年となるのを前に、市民団体による集会が10日、飛行場ゲート近くの広場で開かれた。普天間飛行場の早期返還を求める市民ら約200人(主催者発表)が参加し、「とり戻そう普天間」「フェンスを取っ払おう」と書かれたボードを掲げて声を上げた。返還と引き換えに、県内移設を推進する両政府を批判する決議案も採択した。沖縄県名護市辺野古の新基地建設に反対する抗議行動は10日も、米軍キャンプ・シュワブゲート前で続けられた。午後1時半ごろからはテントの下で集会があり、ロンドン大学学生のマーカス・カーさん(28)が、この地での反対運動について「今はすごく大事な時期。このムーブメントをロンドンでも、できるだけ伝えたい」と述べ、約2週間滞在した辺野古での生活に感謝した。

◆16・4・8
 防衛省は8日、2016年度の補助金計画(第1回)を発表した。沖縄分は総額88億6100万円。名護市を通さず久辺3区(辺野古・豊原・久志)に直接交付する補助金は、集会所などの設計費として計4千万円を決定した。米軍普天間飛行場移設の受け入れを拒んでいる名護市への再編交付金は見送った。区民広場を整備するための設計費に充てる豊原区へは2600万円を、辺野古区へは区民集会施設の設計費として500万円、久志区へは区民交流施設の設計費として900万円をそれぞれ決めた。辺野古区と久志区については、さらに事業計画が上がってきた段階で追加の配分を決める。
 米陸軍トリイ通信施設へ米軍牧港補給地区の倉庫などの受け入れを決めた読谷村に対し、再編交付金4200万円を昨年に続き交付。そのほかの再編交付金は、宜野座村5億1200万円、恩納村2400万円、金武町6100万円、浦添市2億1600万円となった。認可外保育園への防音助成は、嘉手納基地周辺で新規2施設(700万円)、普天間飛行場周辺で新規1施設(400万円)に配分を決定した。

◆16・4・6
 沖縄県名護市辺野古の新基地建設に反対する市民団体でつくる「基地の県内移設を許さない県民会議」は6日、在沖米軍司令部があるキャンプ瑞慶覧の石平ゲート前(北中城村)で集会を開いた。市民約700人(主催者発表)が座り込んでゲートを封鎖し、米軍警備員による芥川賞作家、目取真俊さんの拘束や、3月に起きた米兵暴行事件などに抗議した。

◆16・4・3
 安全保障関連法廃止などを訴える全国の地方議員でつくる「自治体議員立憲ネットワーク」の研修会が3日、恩納村で開かれた。議員114人を含む125人が参加した。翁長雄志知事が「闘う民意」と題して講演し、米軍普天間飛行場の移設先とされる名護市辺野古の新基地建設について「地方自治、民主主義の問題につながる」と強調。和解直後に是正指示を出した国の姿勢に触れ「地方自治をいかにないがしろにしているかが分かる。日本を変えることができるかの瀬戸際だ。危機感を持ってほしい」と県外の議員らに訴えた。

◆16・4・3
【琉球新報】「嘉手納近く」に普天間移設 96年返還合意直前 米軍資料に明記
 1996年4月12日の米軍普天間飛行場返還合意の発表から1カ月前の同年3月12日、カート・キャンベル米国防次官補代理(当時)がペリー米国防長官(同)に示した説明資料で、普天間飛行場を返還する代わりに「嘉手納基地の近く」に兵舎や貯蔵エリアなどを備えたヘリポートを建設する案が明記されていたことが分かった。当時の橋本龍太郎首相がクリントン米大統領に普天間の返還を持ち掛けたのが2月24日。そのわずか約3週間後には米国防総省内で議論の焦点が普天間の「返還」から「県内移設」にシフトし、さらにその1カ月後、県内での代替ヘリポート建設などを条件に盛り込んだ普天間返還合意を迎えたことになる。

 資料は「普天間飛行場の移設」という題で「極秘」扱い(現在は機密指定解除)。沖縄国際大の山本章子非常勤講師が入手した。山本氏は「当時、米軍が考えていたことは沖縄の負担軽減ではなく、老朽化が始まっていた普天間飛行場を移設し、機能強化することだったことがうかがえる」と指摘した。資料は、当時沖縄の基地負担軽減を目的に設置された日米特別行動委員会(SACO)の協議で「普天間は移設の候補施設ではなかった」と説明している。一方、「しかし」と下線で強調した上で「橋本首相が2月のクリントン大統領との会談で返還を要求した」「日本は普天間飛行場の返還抜きでのパッケージ案は受け入れない意向だ」などと説明しており、基地問題に関して日本政府が強く迫ったため、米政府が一定程度考慮していたことも示唆している。知日派で知られるリチャード・アーミテージ氏(後に国務副長官)も「普天間飛行場は(政治的に)長持ちしない」などと分析していることも紹介している。これに付随して統合参謀本部が作成したとみられる資料は、普天間を移設する場合には(1)朝鮮有事の際の国連軍の受け入れ(2)有事の際の自衛隊航空基地の追加的な使用(3)ヘリコプター56機、固定翼機16機を受け入れられる設備の整備—などが必要になるとしている。

◆16・4・2
 沖縄国際大学の佐藤学教授ら有識者がつくる「沖縄米軍基地問題検証プロジェクト」はこのほど、基地問題や国際情勢についての誤解を反証する冊子『それってどうなの? 沖縄の基地の話。』を発行した。米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古での新基地建設阻止を目的とした「辺野古基金」を活用して作られた。インターネット上にあふれるデマやうわさ話を集めた。(1)新基地を造らないと中国が攻めてくる(2)普天間基地は何もないところに建設され、後から人が住み始めた(3)オスプレイは欠陥機ではない—など、ネットにあふれる56の主張とそれに対する反証を収めている。

◆16・4・1
 1日午前9時20分ごろ、沖縄県名護市辺野古の辺野古崎付近の海上で、新基地建設に抗議していたカヌー隊の男性1人が米軍警備員に身柄を拘束された。関係者によると、拘束されたのは芥川賞作家の目取真俊さんという。フロート(浮具)内の米軍提供水域の中に入った刑事特別法違反の疑いとみられる。

◆16・3・31
 沖縄県は31日、県民を対象に実施した安全保障に関する意識調査で、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設について反対が58.2%を占め、賛成の25.5%を大きく上回ったと発表した。県が辺野古移設の是非について調査をしたのは初めて。また、普天間飛行場の閉鎖が進まずに固定化された場合については、「容認できない」が68.6%に上った。結果を受け、翁長雄志知事は「辺野古の新基地は造らせないということを引き続き県政運営の柱にし、普天間飛行場の県外移設を求める」とのコメントを出した。

◆16・3・24
 沖縄県の翁長知事による、辺野古の埋め立て承認取り消しの是非をめぐる、総務省の国地方係争処理委員会の初会合が開かれた。国が沖縄県を訴えた「代執行訴訟」をめぐっては、和解条項に基づき、国が行った是正支持を不服とし沖縄県は、総務省の国地方係争処理委員会に審査を申し出ていた。24日に開かれた委員会の初会合では、翁長知事による埋め立て承認取り消しが適法かどうか、今後審査していく方針を確認し、近く国に答弁書を、沖縄県には答弁書に対する反論書の提出を求めることになつた。

◆16・3・23
 政府と沖縄県は23日、同県の基地負担軽減などを話し合う「政府・沖縄県協議会」の会合を首相官邸で開いた。米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の名護市辺野古移設をめぐる訴訟の和解を受けた初の協議となったが、対立の根幹である辺野古移設で双方が譲らず、話し合いは平行線に終わった。普天間飛行場の危険除去に関する会議の早期再開では一致した。

◆16・3・21
 那覇市内で起きた米海軍兵による暴行事件で、「海軍兵による性暴力を許さない緊急抗議集会」が21日午後2時、名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブゲート前で始まった。沖縄平和運動センターや県統一連などの団体でつくる「基地の県内移設を許さない県民会議」が主催している。

◆16・3・21
 MV22オスプレイの墜落事故で死亡した海兵隊員の父親が、機体を製造するボーイング社などを相手に提訴する計画を立てている。米海兵隊専門紙「マリンコータイムズ」が21日電子版で報じた。父親は同紙に対し「砂ぼこりがエンジンに吸い込まれるため、オスプレイが安全に飛行できないということを証拠が示している」と、製造会社提訴の理由を説明している。提訴を計画しているのは、事故で死亡したマット・デターマン上等兵の父マイク・デターマンさん。マイクさんは「兵士に最善な装備を提供されることは当然だ。この航空機は最善から程遠い」。

◆16・3・20
 安倍政権が推進する米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設計画に疑問を呈する意見書を可決した地方議会が、阻止を掲げる翁長雄志沖縄県知事の就任(2014年12月)以降で39に上ることが20日、共同通信の調べで分かった。沖縄以外で可決した8都府県の23議会の大半は、地方自治の理念を損なうとして政権の姿勢を批判した。

◆16・3・19
 県女性団体連絡協議会(女団協)の伊志嶺雅子会長らは18日午前、外務省沖縄事務所を訪れ、13日に発生した米兵女性暴行事件に抗議し、米政府による被害者への謝罪や容疑者への厳重な処罰を求めた。これに対し、同事務所の中野大輔副所長は「事件は遺憾だと米側に伝えるとともに、再発防止と綱紀粛正、捜査への全面協力を求めた。頂いた意見を本省にも伝える」と答えた。伊志嶺会長は「これまで事件が起きるたびに『遺憾だ』『綱紀粛正の徹底』という言葉を聞かされてきたが、空文句で県民の人権を守るものではないことは明らかだ」と述べ、実効性のある防止策を求めた。

◆16・3・19
【琉球新報】<社説> 基地めぐる誤記述 教科書内容を即刻改めよ
 文部科学省が来年春から主に高校1年生が使う教科書の検定結果を公表したが、帝国書院の「現代社会」は「県内の経済が基地に依存している度合いはきわめて高い」と記述していた。事実誤認も甚だしい。不勉強な執筆者に執筆の資格はない。
 沖縄の基地関連収入が県経済に占める割合は復帰直後の1972年は15・5%だったが、その比重は大きく低下し直近(2012年度)では5・4%にすぎない。そうした説明は官民のあらゆるレベルで繰り返されてきた。基地は経済発展の大きな阻害要因であることはもはや常識だ。一部インターネットなどにはまだ「沖縄は基地で飯を食っている」といった虚言が流布するが、その類が教科書にもあったとは驚くしかない。
 冒頭の記述の前には「日本政府も、事実上は基地の存続とひきかえに、ばくだいな振興資金を沖縄県に支出しており」とある。これも明らかな事実誤認だ。「基地と振興はリンクしない」とする政府見解とも相いれない。
 国庫支出金と地方交付税交付金を合わせた国からの財政移転額は13年度で沖縄は全国14位。人口1人当たりでは6位。歴史上、ただの一度も1位になったことはない。県民経済計算で見た1人当たり公的支出額は15位(12年度)だ。
 執筆者に「沖縄には他の46都道府県にはない上乗せ分の振興予算がある」といった誤った知識があるのは間違いない。

 (「沖縄の地鳴り」欄編集者・オルタ編集委員)


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