■【編集後記】

加藤 宣幸


◎新年をお慶び申し上げます。オルタは創刊13年を迎えたまだ若い市民WEBメディアでユーザーも約2万というミニコミですが、今年も一人ひとりが平和のために声を上げようという幡を高く掲げて皆様と共に歩み続けますのでよろしくお願いします。

◎敗戦の日に戦争報道の責任をとって朝日新聞を退社し、故郷で『週刊たいまつ』を創刊。30年もの長い間、文字通り「たいまつ」のように自らを燃やし続け昨年亡くなった、むのたけじ氏(河邑厚徳監督・映画『笑う101歳×2 笹本恒子 むのたけじ』本年6月封切り)は私が心から尊敬するジャーナリストだが、その彼でも『そんなことを、いつまで続けるつもりか、続けたって世の中は、ちっともよくならぬではないか。むしろますますおかしくなるではないか。』と内心激しく葛藤したと記した。そして長い歩みを振り返り『私は「みんな」と「ひとり」との関連を学んだ。どんなに多数の全体でも実際の中身は一人ずつだ。そして、どのように小さく少なかろうと、一人ずつが動き続ければ、全体が必ず動き始めて波立つ。だから私は、週一回の新聞発行を続けながら多くの社会運動に参加してきた』と述懐された。

◎以前、拓大教授関良基先生の『歴史における個人の役割とバタフライ効果(私の歴史観)』を読んで感銘を受けたが『バタフライ効果とは気象学者ローレンツが地球大気の動態をシミュレーションするための非線形微分方程式の数値計算をする中で見出した「カオス」によって名付けられ、彼は大気の運動の中に初期条件のわずかな変異で未来の気象状態が全く異なったものになるカオス現象を見つけた。これが「北京で蝶が羽ばたけばニューヨークで嵐になる」という比喩で広まり、後に「バタフライ効果」と呼れることになった』とのことだが、社会のシステムが臨界状態にあるときには「小さい羽ばたき」がすごい威力を発揮する。その例は北川正恭元三重県知事による「マニフェスト選挙」だと指摘された。私たちは平和の構築を目指し小さいことでも「バタフライ効果」を期待して活動を続けたい。

◎旧臘28日安倍首相は「和解」と「同盟深化」を唱えて真珠湾を訪ねた。アジア諸国との「和解」をしない「同盟深化」は日本の対米従属を表徴するだけだと強い批判もあるが日米両国民に先の戦争を考えさせる契機の一つにはなったはずだ。私は1941年12月8日の『本日未明、西太平洋において帝国陸海軍は米英と戦争状態に入れり・・・』という大本営発表。1945年8月15日の『忍び難きを忍び・・・』という敗戦を告げる昭和天皇の放送。そして子供心に刻み込まれた2・26事件(1936年2月26日)で戒厳司令官が『今からでも遅くない・・・』と反乱軍に原隊復帰を繰り返し呼びかけた放送。この三つの肉声をはっきりと思い起こした。

◎加藤陽子東大教授は近著『戦争まで』で、日本人は「リットン報告拒絶」「三国同盟締結」「ハルノート拒否」の三つで選択を誤ったと指摘されるが、この責をすべて軍だけに負わせて済むものではない。何も知らされない国民を軍と一体で戦争へ駆り立てたのは政治家とジャーナリスト達だ。「大本営発表」を垂れ流し国を破滅させたメディアの罪は重いが今もその劣化はひどい。例えば今回、官邸はあらゆるメディアを動員し安倍首相の真珠湾訪問が現職首相初と大々的に報じさせた。ところが数日後、吉田・鳩山・岸の3氏が現職首相として訪問していたことが判明。外務省が慌てて修正し各メデイアも恥ずかしげに小さく訂正するお粗末。こんな簡単なことをわが日本外務省は「把握していなかった」というのだから全く呆れたものだが、裏も取らずに官邸の意を忖度してデカデカと報じた新聞もTVも赤恥を世界に曝した。これも世界に悪名高い「記者クラブ」制度のお陰だろうか。

◎新年号は恒例となった久保孝雄氏・石郷岡建氏をはじめ読み応えのある論考を35人もの方々から頂いた。2017年の世界は大変動の時代に入ったが、オルタは読者とともに「世界の潮流」を深く読み解いて平和・共生・連帯をキーワードに進みたい。

【日誌】12月20日:議員会館・プログレス研究会。21日:自宅・荒木重雄・野沢汎雄・小暮剛一。22日:学士会館・小沢成一・浜谷惇。25日:家族の会。27日:神保町・竹中一雄。30日:自宅・趙慶春・延恩株・南雲智・荒木重雄・竹中一雄。

1月1日:本郷・家族の会。3日:自宅・白井和宏・沢口佳代。6日:自宅・プログレス研究会新年会・8人。14日:自宅・新メディア検討懇談会・河邑厚徳・野沢汎雄・白井和宏・沢口佳代。15日:ゆりか誕生会。18日:稲城・仏教に親しむ会・新年会。

■【今月のオルタ動画案内】
  YouTube 配信 http://www.youtube.com/user/altermagazine

◎山岳信仰と修験道          荒木 重雄
◎諏訪大社の歴史と御柱の大事な意味  林 郁


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