【編集後記】

加藤 宣幸


◎2015年の安保法制に反対する市民の運動は60年安保闘争以来の規模で学生・大学教員・一般市民など組織動員ではない個人に広がり、人々が「我々の」でなく「私の」立場で参加し大きく盛り上がった。この運動は安倍政権による秘密保護法制定・96条「改憲」裏口手法反対から引き続く長い運動なのだが運動の潮目が明らかに変ったのは6月4日に行われた衆議院憲法審査会における長谷部恭男早稲田大学教授=自民党・公明党・次世代の党推薦、小林節慶応大学名誉教授・弁護士=民主党推薦、笹田栄司早稲田大学教授=維新の党推薦、の3人の著名な憲法学者による「安保関連法案」は違憲だという明確な国会証言だった。

特に政府・自民党を痛撃したのは自分たちが推薦した長谷部教授の証言と長年改憲派学者として自民党の知恵袋であった小林名誉教授の証言だった。この発言をきっかけに国民の怒りが高まり、殆どすべてといってよいほど多くの憲法学者や弁護士など法律の専門家が明確に反対を表明したのは記憶に新しい。国民の多くがこの証言に鼓舞され運動に加わった。その運動の先頭に立ち街頭演説に講演にマスコミでの発言に執筆にと、それこそ獅子奮迅の勢いで東奔西走された学者の一人が小林節氏だ。オルタ本号では、その小林氏と、社民党から民主党に移り、原発ゼロの会や安保法制批判などで保守リベラル派長老とも幅広く政治的に連携する阿部知子議員との対談が実現できた(動画はYouTube発信)。関連して【本の紹介】欄でも『「憲法改正」の真実』(小林節対談樋口陽一・集英社新書)を浜谷惇氏に紹介して頂いた。

◎中国経済の減速で世界の資源価格が全面的に下落し、資源輸出国だけでなく世界経済全般も下ぶれし、世界が中国の動きを固唾をのんで見守る中、3月5日から15日まで北京で2016全国人民代表大会(全人代)が開かれた。この全人代は習近平政権下で初の5ヵ年計画が提出され、同時に今後30年先の構図も示される重要なものだった。“中国ショック”の影響は日本も例外ではないが、日本のマスコミは中国蔑視に通底する「中国崩壊論」を囃し立てるだけで「全人代」が持つ政治的・経済的意義については殆ど正確に伝えていない。

 これについてオルタは中国事情に精通する専門家で、日本のマスコミでもしばしば発言される凌星光氏に「創新(イノベーション)・協調・開放・緑色(グリーン)・共享(共に享受)」の五大コンセプトの下に作られたこの第13次5ヵ年計画の重要な意義について分かりやすく論じて頂き、さらに長年NHK記者として活躍され、現在は北東アジア動態研究会代表として、東アジア連帯について発言される木村知義氏には全人代への冷静な視点とともに日本メディアの全人代報道についても触れて頂いた。

◎北朝鮮の核実験につづくミサイル発射、米韓軍の大規模演習、国連の制裁決議、と北朝鮮をめぐる動きが急速に慌ただしさを増すが、何といっても事態収拾の鍵を握っているのは中国だ。いったい中朝関係はどうなっているのか。世界は中国の政策が微妙に変化しつつあるのを感じてはいても正確には分っていない。『中国の北朝鮮政策の何が変わったのか。どういう風に変化が現れたのか。その変化から実は中国外交、米中関係の行方を見るヒントも隠れている』として丁寧な追跡を試みたいとの視点から、中朝関係の歴史にも詳しい東洋学園大学教授朱建榮氏に深く論じて頂いた。

◎【日誌】3月21日:自宅・小林吉雄。22日:参議院会館・江田五月・荒川文生。衆議院会館・プログレス研究会。24日:学士会館・北岡和義・井上桂子日大教授。25日:神保町・荒木重雄。明大キャンパス・海外ユニクロ労働問題シンポ。26日:ちよだプラットホーム・オルタオープンセミナー・猿田佐世弁護士。27日:家族会。29日:神楽坂・白井和宏。

4月2日:市ヶ谷・大河原雅子東京勝手連。4日:神楽坂・野沢汎雄。5日:調布・荒木重雄。7日:議員会館・近藤昭一・羽原清雅・大原雄・岡田充・小暮剛一。8日9日10日:松本・小林吉雄・竹中一雄。11日:自宅・仲井富。12日:稲毛・仏教に親しむ会。13日:都市センターホテル・山崎拓・阿部知子。菱山郁郎・浜谷惇・仲井富・福岡愛子・藤田裕喜。14日:千代田区役所・小枝すみ子・仲井富・自宅・加藤周生。15日:自宅・荒木重雄・南雲智・野沢汎雄。16日:新宿・佐々木柾夫出版記念会・菱山郁郎。19日:東洋学園大学講座・プログレス研究会。

■【今月のオルタ動画案内】
  YouTube配信 http://www.youtube.com/user/altermagazine

◎『日米外交を紐とく』    猿田佐世弁護士


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