【編集後記】


◎シリア軍事介入をめぐって迷走したアメリカにタオルを投げた形になり、久しぶりにプーチンのロシア外交が得点してモスコーの意気は上がっている。日本のメデイアがロシアの国内情勢について伝えることは少ない。私たちの「隣国」ロシアを見る眼が「四島」がらみだけでよいわけはない。9月末にモスコーの定例「日露学術・報道専門家会議」から帰国されたばかりの石郷岡建氏に最近のロシア情勢について『ロシアは何処へ行くのか?』として報告して頂いた。

◎このところ世界の警察官を自任してきたアメリカの著しい後退ぶりは誰の目にも明らかだが、まさか声高にアジア重視を唱えるオバマ大統領が国内の財政問題に足を取られ、TPPの年内取りまとめを急ぐための関係国首脳会議やAPEC出席、アセアン諸国訪問なども取り止めるとは誰も予想しなかった。いうまでもなく存在感を際立たせたのは中国の習主席だ。一番慌てたのはアメリカの軍事力をバックに時代錯誤の「中国包囲」などと動く安倍総理であろうか。

10月3日に開かれた日米外交・国防担当相(2+2)会談で17年ぶりに日米防衛指針の改定が合意された。もっぱら日本側が集団自衛権行使容認取組みなどを持ちかけ、アメリカ側がこれを認める形であったようだが、注目したいのは、その時、米側2閣僚が米閣僚としては初めて千鳥ヶ淵の戦没者墓苑で献花したことだ。これは安倍総理が5月の訪米で、靖国神社をアーリントン国立墓地になぞらえたのに対し、米側がアーリントンに相当するのは千鳥ヶ淵であることを明確に示したものだ。

◎アメリカはリムパックに中国海軍を参加させるなど日本側の思惑と違って巨大な中国市場(2012年米中貿易額は4845億ドルで日米貿易1726億ドルの約3倍)を失ってまで島を巡る日中紛争に巻き込まれたくないのは本音だ。とはいえ、今のアメリカは巨大な軍事・政治・経済力を持つ超大国であり、「国際標準」から見れば日本の政治・外交の現状は明らかにそのアメリカの「従属国」である。それは日本が「ワシントンシステム」ともいうべき装置にがっちりと組み込まれ、その意に沿って動き、しかも、それが知日派と称する少数の共和党系人脈(ジャパンハンドラーズ=日本村)によって握られているのだ。

この状態を変え、多様な日本の声をワシントンに伝え、また米国の意図を正確に読み取るには新たな仕組みが要ると、自らの「ワシントン体験」をもとに一人で「NPO新外交イニシアティブ」を立ち上げ、オリバー・ストーンの来日をコーディネートするなど着々と実績を上げているのが猿田佐代弁護士である。オルタ116号の編集後記でも書いたが改めて当事者からその意図を『日米関係に新しい外交を』としてご寄稿願った。

◎先のドイツ総選挙ではメルケル首相の中道右派が勝ったのだが、過半数はとれず、緑の党もそれなりに健闘した。緑の党といえばドイツを連想するが、実は世界でも広がっている。日本は自民党一強体制となり野党再編の先も見えないが、これについて広井良典氏は自著の『人口減少社会という希望』で、世界の政党はやがて「3大政党プラス“緑”」に収れんすると予想した。それは、㈰保守主義政党 ㈪自由主義政党 ㈫社会民主主義政党 ㈬“緑”ないし・・・環境保全政党 で日本も長期的にはその入り口だと見る。『変貌する世界の緑の党』(緑風出版刊)を翻訳出版された白井和宏氏に自著の紹介という形で世界の緑の党について論じて戴いた。

【運動資料】㈰TPPについて『大枠合意もできず破綻するアメリカの世界改造計画』として篠原孝議員の現地報告を ㈪原発について元スイス大使村田光平氏の『安倍総理あての手紙』をそれぞれお二人からの許諾を得て転載した。

◎【日誌】9月21日東海大学校友会館で「河上民雄先生を偲ぶ会」横路・江田元衆参両院議長・他政学関係者多数参加。25日南雲・岡田・荒木・徳泉氏らと懇談・神保町。26日荒木・藤生氏懇談・仙川。

10月6日三ツ谷洋子法政大学教授・懇談。9日参加型システム研究所・橘川俊忠神奈川大名誉教授・講演・動画取材。10日プログレス研究会・治安維持法研究・衆議院会館。11日浜谷・山口氏運動史研究会・参議院会館。15日リヒテルズ直子さんとのオルタ婦人執筆者懇談会・高沢英子・三ツ谷洋子・福岡愛子各氏・学士会館。17日岩根サロン・新宿。18日ソシアルアジア研究会・白井和宏氏・懇談・九段。

                           (加藤宣幸 記)

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