【投稿】

松尾芭蕉の俳句、英訳(誤訳?)のこころみ

吉川 佐知子
高沢 英子

 最近ふるさと伊賀の天満宮の老朽化がひどく、建替えを迫られて、町の県立高校の同窓会から、募金を募る通知が寄せられました。この天満宮、慶長16年(1611年)伊勢伊賀一帯の領主となった藤堂高虎が、もとの伊賀領主筒井氏が建てた神社を改築、出城の外堀に近い現在地に遷座したものとして、多年上野の町びとの唯一の産土神として、尊崇され、秋のだんじり祭は華やぎに充ちた由緒ある祭で2016年に無形文化遺産に登録されています。      
 実はこの神社、寛文12年(1672年)松尾芭蕉が、伊賀の俳人たちの三十番の發句合せに自判の判詞を加え「貝おほい」と名付け、祈りを込めて奉納し、このことが、かれが職業的俳諧師となる機縁となっている、と考えられています。
 そしていまや、ヨーロッパ諸国、フランス、スエーデン、またアメリカなどでも、言葉の壁を越えて、短詩としての「俳句」というジャンルが注目され、句作をこころみる例が多々見られるようになりました。それなら日本人が、ためしに名句の英訳をしたらどうなるか、俳諧の自然を鑑賞する細やかな感性、表現語彙の豊かさが着目されている今日、それを英語に訳すれば、どういう風にできるかお笑い草になるのもかまわず誌面を汚す試みにアタック、ためしに広く知られた数句5句を選んでみたのですが、意外に難航、ボケ防止の勝手な試みお許しください

 閑(しずか)さや 岩にしみいる 蝉の声
   Stillness sinking into the rock the cicadas shrill
 面白し 雪にはならん 冬の雨
   Fanny its not snow but rain in winter
 夏草やつわものどもの夢のあと
   The summer grasses shadows in dreams of lost soldiers
 初時雨 猿も小蓑を 欲しげなり
   At first rain the monkey seemed to want a strawraincoat  
 こもり居て 木の実、草の実 ひろわばや
   Stay field and let’s pick up nuts of trees, nuts of grasses
   
     参考図書:山本健吉著 芭蕉全発句(講談社学芸文庫)
     TUTTLE publishing 著 WRITING HAIKU

(2023.10.20)
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