【オルタ広場の視点】

安定・無風の日本なのか――参院選を巡る政治環境

羽原 清雅


 2019年7月21日の参院選。一定の「民意」が示され、今後の政治動向が決められようとしている。これからの日本はどのように進むのだろうか。
 選挙の結果は、ひと言でいえば現状の安倍政治肯定。表層的には、安定・無風の色合いの濃い結果だった。これで、安倍政権下での衆院選、参院選は各3回ずつ勝利を収めたことになる。一強政治が続き、一方では強いがための狭隘さと社会不安も醸成される。

 安倍首相が敢えて改憲志向を強めた選挙戦だったが、改憲実現の「3分の2」勢力確保に及ばなかったことを、各紙とも大きく報じた。しかし、内情はそうではない。慎重ぶりを見せる与党・公明党のこれまでの路線決定を見ると、いざとなれば自民党の描いた図式にわずかな修正によって同調してきており、改憲問題にもまたどこまで抵抗するかは疑問がある。一枚岩追随型政党の怖さである。
 さらに、自民党傾斜の日本維新の会の議席が増え、国民民主党の玉木雄一郎代表までが、早くも改憲論議に乗る構えを見せた。無所属系議員や新登場のN国党議員らの間でも、改憲志向の声があがる。つまり「3分の2」勢力は事実上温存されている、と見るべきだろう。

 しかも、安倍首相が改憲に取り組むに必要な「時間」が与えられた可能性が、参院選の結果によって広がっている。つまり、2021年9月までの自民党総裁の任期が、最大3年間の幅で延長される土壌が確保されつつある、と言っていいだろう。
 二階幹事長が「党則改正」によって安倍総裁、つまり首相としての任期延長の旗を振り、安倍側近の萩生田光一幹事長代行が大島理森衆院議長の改憲論議への取り組み不十分を理由に議長更迭の発言をするなど、改憲へのひそかな戦略が進められている。
 投票率が戦後2番目に低い48.80%という政治不参加率の高まりは、憲法を巡る国民投票にどのような影響をもたらすのだろうか。

 対外的な課題も多いが、ひとつだけ触れれば、日増しに悪化する日韓関係は、安倍政権の姿勢で打開できそうにない。両国民の間に亀裂を生じさせ、それぞれに狭隘な愛国心を高ぶらせ、敵対感情を増幅させ、それぞれの政治権力に国民を結束させる傾向も生まれている。この空気は、安倍首相の安全保障強化路線の支持につながり、北朝鮮問題を硬化させる。

 本来、韓国側には戦前の植民地時代の、ジワリとした怒りが根底にあり、日本側は戦後の日韓請求権協定による一応の決着をもとに論じようとしており、基本的なすれ違いがある。日本政府は避けたいだろうが、ここまで広がると、戦前の日本がおこなった行為に言及しないだけの姿勢では決着はつかないだろう。韓国の権力者の政治姿勢にも、国際認識に欠け、国民を挑発するばかりで、緊張関係を抑制する姿勢が見えない。
 さらに、自国第一主義の路線で、国際的な妥協を許さない空気がみなぎり、トランプ型の政治姿勢が日本に持ち込まれつつある今日、対韓国にとどまらず、中国政策にも響いてこよう。経済的封鎖は、相互不信感を助長し、経済活動の縮減のみならず、安全保障面、さらには防衛の名を借りた軍備の増強に向かう可能性がある。

 内政面でも、人口減・高齢化社会の到来は、早くから想定されていたにもかかわらず、いまだに年金問題、将来的な生活保護者の増加、高齢社会への対応策などへの十分な回答が出ていない。長期的な課題である上下水道、鉄道、道路や架橋など公共施設の老朽化対策も、不安が消えない。政策に長期展望がないのだ。
 課題が多いがために生まれた閉塞感や不透明感が、逆に怒りや改革志向を鈍らせ、その社会的空白感がある程度の豊かさのもとに<安定・無風>の状態を作り出しているのか。

 この空白感、閉塞感が怖い。あと一年足らずに迫った東京五輪は、国際的な理解や協調の機運に向わず、メダルを追う選手らへの注目にとどまり、愛国心が謳歌され、政治や外交への関心が狭められることにもなりかねない。
 日本の行く道を、反憲法の方向に進ませる契機にならないといいのだが。
 参院選に感じたいくつかの点を、簡単に触れていこう。

<自民党> 強い、というしかあるまい。政権の安定を求める空気を握って離さない。景気の不振や政策のヒズミを抱えながら、国民に「我慢」を強いていける強さだろうか。
 安倍首相は選挙中、野党の攻撃するモリカケ疑惑、公務員の統計や文書操作、あるいは原発の扱いなどの言及を避け、沖縄の基地や日米地位協定などにも触れず、年金問題などの争点集中を回避して、論点を逸らし、巧みな現状の安定をアピールし続けた。民主党政権の失敗を突くことで、政治の安定を強調した。長く務めてきた首相としての自信が、有権者を引き留めたといえよう。
 野党各党は攻撃はするものの、争点を絞り込めず、丁々発止の論争を挑めなかった。

 また、自民党は従来通りに、各地に張り巡らした政治家個人の後援組織、産業別や同業の組織などのネットワークを生かしきった。その裏には、利益誘導の暗黙の期待があり、「近づく者有利」の印象を広げるなど、いわゆる大型、小型のドブ板選挙が健在だった。
 問題は最近の議員の質に及ぶ。寄らば大樹の陰、のせいか、失言や行き過ぎ発言、素行不良が多く、しかも強い政権のもと、責任をとらせない体質が根強く、将来に懸念を残す。
 比例制の3年前(投票率54.7%、今回は48.8%)と比較すると、総得票数では240万票も落ち込んだが、19県では得票比率は増加している。石川、山口県は投票数の50%を超えた。侮れない底力である。

<公明党> 選挙区、比例区で各7人の14議席を確保して、引き続き手堅い選挙戦とした。ただ、比例区の総得票数は3年前よりも103万票減らした。党勢自体が後退気味なのか、次期衆院選が注目されよう。党内一枚岩、というより、上から下された方針を論議なく追従する体質は、強みでもあろうが、弱みにもなる。
 改憲に慎重、という雰囲気で受け止められた公明党だが、今後どう進むのか。政権与党として自民党の下駄の雪にすぎないか、あるいは揺るがない路線を示し得るのか、結果次第では党の盛衰のカギになるだろう。

<立憲民主党と国民民主党> ともに「連合」頼みであるが、改憲、原発の扱いでは格差があり、連合自体がこの股裂き状態に悩むところだ。立憲は選挙区9、比例区8の計17人(非改選と合わせ32人)、国民は選挙区、比例区ともに3の計6人(非改選と合わせ21人)で、どちらも振るわない。比例区の得票も、立憲791万(15.8%)、国民348万(7.0%)で、合わせても全体の4分の1にも達しない。立憲は旧総評系の自治労、日教組、JP総連、情報労連など、国民は旧同盟系の自動車、電力、電機、ゼンセンなどに分かれる。連合の労組員の組織率は継続的に減っており、17.5%ほどという。
 選挙公報を見ると、立憲は消費増税10%阻止、教育、福祉への投資で経済のボトムアップを主張、一方の国民は家計第一をうたって児童手当の増額、暮らせる年金、家賃補助などを公約。だが、野党を代表し、政権をめざそうという勢力が、このような細やかなスケールのアピールにとどまっていいのか。こうした生活密着的な主張なら、自民党など政権サイドによる具体化、実現性を信じるだろう。有権者の思いは多様だが、利益誘導に乗るのではなく、現在の政権のもたらすマイナスを排除し、政権をとってどのような社会を目指すか、より大きな政治的視野を具体的に示すことが、野党勢力への本来の期待ではないか。

<3つのダメ野党> この二つの政党に加えて、旧民進党から分かれた野田佳彦ら数人の「社会保障を立て直す国民会議」がある。もっとも、この3グループを合わせても、国会外では大した影響力は持ちえない。
 彼らは、政党としての地方組織と活動家の育成に努力していない。野党の基本的な伸張策としての政党組織化への努力がない。たしかに、SNSやスマホ依存のネット社会になり、かつての政党組織の時代とは大きく変わってきている。しかし、各地で日常的に有権者に直接語り掛ける仕組みを持たずして、ファンともいうべき支持者を広げられるだろうか。選挙時のみの、議員や候補者自身だけの、かつ大きな労組中心の一時的活動によって、総体的な政治のありようをアピールし、思考のチャンスをもたらすことなどできるわけがない。

 自民党、公明党、共産党にしても、各選挙区に有力な支持者や党員がいてはじめて日常の継続的な活動ができる。かつての社会党が、政権には遠いながら一応の議席・勢力を維持できたのは、総評などの労組組織、複数の地方議員、それに地元ごとの活動家やシンパたちの支えが、多少ながらあったからだ。

 昨今の、些細な違いを拡大してにらみ合う離合集散好きの野党群が、強大な自公勢力の向こうを張ることなどはできるわけもない。風待ち・ムード待ち・敵失待ちなどで、政権など手にできるわけもない。それに政党として、中核となる魅力ある指導者を作り出し、支えていく風潮もない。
 希望の党が出来かかると、一斉に飛び乗ろうとし、崩れるとまたも次のウマを探す。そこには、政策や理念の一致を模索する気風すらない。議員たる者に、主義主張を語り続ける素養すらなくなっている。これが国会議員なのか、と思わせる内容のない軽薄な人物を、連合や地方組織がよくぞ送り出すものだ、と感心する。政権党たらん、とする以上、せめて最低の努力を求めざるを得ない。

<共産党> 「赤旗」は、党の議員が後退しても、負けた、とは決して言わない。今度の参院選でも、選挙区3、比例区4の計7人が当選、非改選と合わせてマイナス1の計13勢力になった。比例区得票は3年前と比べて153万票減って10.7%から8.95%に落ち込んだ。投票率が6%近く後退したのだからやむをえまいが、「よく頑張った」といった姿勢ばかりを貫く。
 気落ちして動きが鈍ってはいけない、との配慮だろうが、日常の活動量からすれば、厳しい評価を突きつけられたのだから、その原因を分析し、反省材料にすべきではないか。一枚岩政党にありがちな、内部での本音としての「反省」はなかなか表には出てこないが、それで前進は計られるのだろうか。党員もそれぞれの思いはあり、軽視すべきであるまい。

 地方議員を見ていても、よく動き、よく語る。戦前からの不屈不撓の精神なのだろうか。その点では、スゴイ政党なのだろうが、現代社会にあって、プロセス抜きに命令一下で動くような組織は伸張できるだろうか。

<社民党> いつなくなるか、との話題が続く。今回も比例区得票104万票で非改選を含めて2議席維持、得票2%超、と厳しいながら、なんとか持ちこたえた。日本社会党時代を知る人がどんどん減って、往時が語られることもなくなった。派閥抗争、労組依存、議員党的体質、非現実論争、組織活動劣化、日常活動不足が指摘された大政党の命運がこのようになるとは、思いもよらなかっただろう。
 日米安保をめぐる60年代の世代など高齢層の間には、この党への思いも残るのだろうが、組織を失った政党の哀れを、今を生きる立憲などの野党は感じておかなければなるまい。

<日本維新の会> 選挙区、比例区とも当選5で、公示前よりも3議席増えて16議席に。比例区得票は3年前よりも0.6ポイント増えて9.8%に。大阪基点の政党が東京にまで広がった。しかし、感覚は浪速<なには>の政党だろう。奇妙な発言をする議員らも抱えて、吉本興業に近いかと思っていたら、この興業会社のほうは自民・官邸直通だという。裏社会は分かりにくいものだ。
 与党でなく野党でなく、「ゆ党」なのだそうだ。従って、その去就はいずこにつこうが、不思議はない。スジを通すとすれば、どのような筋なのだろうか。

<令和新選組> 山本太郎なる人物はおのれの落選を覚悟して、ふたりの身障議員を生み出した。国会内のバリアフリー、医療的介護の対応などが急ピッチで進んだ。身障者の就職時の公的補助などにも一部道を開いたが、社会全体としては問題提起にとどまっている。これまでになかった力仕事であり、「いいね!」と言いたい。確かに、身障者の社会進出に大きな道を開き、これからも前進が図られよう。

 ただ、疑問がある。山本自身は意気軒高に次期衆院選を目指すようだが、送り込んだ病床の二人の議員はどのような政治活動をするのか。能力はいいとして、国会のしきたり、弁論のありよう、各派交渉など、アマチュアに代わってリードできる政治家なしで活動しきれるものか。現職である山本のもとなら、彼の交渉能力によって打開できようが、議員の助けなく任務が続行できるのか。そのような議員活動のサポート面に不安を感じる。彼らに精神的不安を与えるなら、国会での議員活動では大きな負担を強いることになる。
 こうした面に懸念はないのか。山本的決断力の外形は良いが、内実はついてくるのか。いかにも、パフォーマンス先行の即席党らしいが、小党としてフォローがどうなるのか、本筋における不安材料がある。山本ムードは上々のようだが、国会活動はそう容易とは思われないところに、不安が残り、目先に踊りがちな日本の政治行動の舞台を感じる。
 クレームということではなく、このおふたりの国会活動が順調であることを願う。

<N国党> 4月の統一地方選で芽生えた「NHKから国民を守る党」が、ついに国政に進出、比例区で84万票をとり、1議席を得た。地方議会にはすでに20人余が進出しているという。
 シングルイシュ―を掲げて、いわばNHKの受信料不払い運動のみで台頭してきたのだから、世の中は分からない。余計なカネは払いたくない、という打算に乗じたわけだ。
 それでは、改憲、原発、核軍縮、日韓問題、消費増税、北方領土など、個別の問題にはほとんど関与しない、という政党が国政を担い切るのか、と疑問を抱いたら、北方領土を武力で取り戻すかの発言をして日本維新の会を追われた丸山穂高議員が入党、NHKに関心が薄く、自民党を離れた渡辺喜美議員も連携した。一個の議会人が政策も一致せずに、群れる図は気持ちのいいものではない。
 政党人、議会人の節操、誇りのようなものはないのか。政治のレベルは落ちたものである。選んだ人の顔も見たいとも思わない。

<投票率の低下> 投票率は史上2番目の低さで、48.80%。1995年の44.52%に次ぐ数字だ。2人に1人は棄権したことになる。首に縄をつけて引っ張って来るわけにいかないので、黙認するしかない。民主主義の根源、国民としての権利であり義務、国民としての重要な政治参加・・・・などと教条的なことを言っても仕方あるまい。
 ただ、折角投票権を得たばかりの18、19歳の3分の2は投票に出かけない、というから、将来の政治の決定は怖い。政治の関わる範囲は極めて大きく、仮に戦争に巻き込まれた場合、そのプロセスに大多数の国民が関与していなかったら、どうなるのか。日中戦争、第2次世界大戦中、情報を管理された国民は踊らされるばかりで、まして当時の女性には選挙権がなく、意思表示さえも許されなかった。

 言ってみれば、かつては国民としての意思表示が許されていなかった。子どもや夫を戦争に取られながら、賛否も言えない時代だった。政治の流れを読み、この方向は危険だ、阻止すべきだ、という程度の意思表示の機会すらなかった。それが、今日はその意思表示を自ら蹴とばすかの状況で、いわば国民の資格を放棄したかの現実である。
 政治が面白くない、との理由はよく分かる。しかし、意思表示の権利を放棄して、決められた方向にひたすら従うだけでいいのか。そうなら、戦前の社会に戻るようなものだろう。

<厳しい社会教育環境> 学校教育は、社会の教科として政治・歴史・国際の3分野で、社会との関わりを教える。教科書の表現も、かなりしっかりしている。ただ、社会と自分との関わりについてのありようは、ともすると上滑りになりかねない。というのは、現実の政治動向に立ち入って、是とか否とかの判断を問うような授業は、政治教育にもなりかねず、提起しにくいのだ。従って、民主主義の原理や三権分立の仕組み、憲法の理念、選挙の仕組みなどの「学び」はあるのだが、具体的な政治的事例で意見を述べ合うような「自主的で対話的で、深い学び」という学習は取り組みにくく、どうしても表層的、観念的、暗記的になりがちなのだ。

 生徒会委員の選挙活動などで選挙の体験をする、といったレベルで、たとえば日韓関係を歴史と現状から考える、といった勉強の場は持たれていない。先生も、避けて通りたい部分なのだろう。いきおい、社会という学習は、現実を踏まえにくく、高校生になってもあまり現実の社会構造や矛盾などを考えることは少なくなる。新聞を読むという習慣も遠のいているので、ますます社会の抱える課題に正面からふれるという機会は乏しくなっている。
 要は、政治的関心を遠ざける教育現場なので、投票への関心が低いのも、ある意味でやむを得ないような結果になっている。

<女性の政界進出> 参院選の女性議員の当選は自民10、立憲6、共産3など計28人。非改選と合わせると56人で、定数245議席の22.8%、つまり5人に1人が女性ということになる。LGBTなどが話題になるなかでの男女比率の問題だが、国際的にも日本の女性の政治進出は少なく、遅れている。政党自体にも問題はあろうが、基本は議員の質の問題で、女性が多ければいい、という問題ではない。優れた資質の女性は多くなっているが、選ぶ側の男性陣にその眼力を備えず、ミーハー的に選びがちな人物が多すぎないか。

 つまり、自民党には男性に従属するかの男性型女性が多いのだが、望ましいのは、政党に所属しながらも女性というポジションを拡大進化するような言動の人材が多く排出されること。遅れている女性の社会進出を拡張するには、女性議員の数ではなく、質の課題の方が重要だろう。政党の候補者選定にあたって、人気をかきたてる美形であるとか、女優など芸能関係、テレビタレント、スポーツ選手、知名度高い学者といった集票能力に依存しがちだが、それ以上に国会活動で有能ぶりを発揮できるか、が課題である。ここでは触れないが、名前だけで浮上したものの、発言内容は愚かしく、出来の悪さを示したばかりに、出身母体の世界に戻ることも出来なくなった著名な女性議員も少なくない。
 男性も全く同じことだが、女性政治家も優れた人材であることをベースに選び抜き、またその育成に努めることが政党としての本来のありようだろう。

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 8月6日と9日、ヒロシマ、ナガサキの原爆74年の日にこの原稿を仕上げている。安倍首相の平和祈念式典での挨拶を聞く。両市長ともに、米ロの中距離核戦力(INF)全廃条約の失効に触れ、来年には発効50年を迎える核拡散防止条約(NPT)の履行、2017年の国連採択の核兵器禁止条約の批准を求めた。世代は変わりながらも、日本人に共有された「核廃絶」の悲願に対して、安倍首相は、「核保有国と非保有国との橋渡しに努め、国際社会の取り組みを主導する」と述べた。

 政治が悠久の目標を忘れ、折々の流れに身を任せ、ことばのみの「平和」で努力を避け、逃げる。これは、いつからのことだったか。共有された国民の声を、もっともらしくかわし続ける政治でいいのか。
 「一強」の政治のなかで、このように、あるべき姿がゆがめられていく。時間と歴史が、事態をゆがめつつある。政治の信念には、変わることが許されない厳しさのあることを、個々人の胸に刻み込んでおきたい。

 (元朝日新聞政治部長)

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