【追悼】仲井富
初めて出逢った人とすぐ友人に-―仲井富さんの想い出
仲井富さんが旅立ちました、91歳。1月24日、腸に穴が開き入院、2月15日、あの世へ逝かれました。30年越しの長いお付き合いでした。
昔、私が農水省を担当していた時、富さんが飄々と記者室に現れ、初対面の私に「あなたの木頭村細川内ダム反対の記事を読みました。いい記事です、私も支援したい」と、エールを交換に来ました。
以来、実に濃厚なお付き合い、戦後間もなくから社会党のオルグとして全国を走り回り、今では歴史書の1ページでしかお目にかかれない砂川闘争、60年安保闘争、三里塚闘争や、各地の反原発、反公害、禁煙運動など、ありとあらゆる現場に立ち会った方でした。江田三郎の秘書としても国会や議員会館を隅々まで走り回り、幅広い人脈、知己に恵まれました。
徳島県木頭村のダム問題も、約束通りに大勢の国会議員を現場に連れて行ってくれました。議員は自分の目で確かめ、問題の在りかを理解しました。その甲斐あり、国会でも鋭く追及してくれました。紆余曲折ありましたがダムは中止となり、3千数百億円もの巨大な税金無駄遣いをやめさせることができました。
とにかく人を集める組織力と行動力が抜群。「〇〇に行きませんか」とお誘いの声が掛かると、ホイホイとついていった私、楽しい思い出ばかりです。その都度、各界の知らない方もご一緒されており、たくさんの人と知り合いになることができました。屋久島の原生林と猿、吉野の桜吹雪、鯨の町太地、十日町の雪景色、会津の野天風呂、彼の故郷の津山の桜、備前焼の藤原謙さん宅訪問、冬の高山の囲炉裏山荘等々。
酒が全く駄目で、無類の甘党であった点が私と大違い。初めて出会った人と、すぐにお友達になれる名人でした。晩年は四国のお遍路さんを、何回も経験されました。多分、今頃はあちらで待ち構えている旧友たちとの語らいで、大忙しなことでしょう。
富さんの豊かな経験を、もっともっと聴いておきたかったという思いで一杯です。
最近まで書き継がれてきたブログ『老人はゆく 老人は歩く 老人はわが道をゆく 老人はやがて逝く』は、とても味わい深い内容でした。
http://haikairou.blog22.fc2.com/
【ひらの・まさし=元共同通信記者】
2024年2月19日
(2024.5.20)
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