【沖縄の地鳴り】
「辺野古新基地」裁判、最終段階へ
「辺野古新基地」に絡む那覇高裁(正式には福岡高裁那覇支部)での裁判が9月16日、判決を示す。第1回口頭弁論は8月5日にあったばかり。弁論はあと1回で打ち切り、という。早い判決は国の要望であり、沖縄県側はいぶかっている。
この裁判に至るまでの経緯はいろいろあって、ややこしい。ちょっと整理をする。
仲井真前知事の埋め立て承認を、翁長知事が取り消したのは昨年10月13日。「辺野古新基地」問題の大きな根本的な転換である。慌てた国は国土交通相が取り消しの効力を停止し、知事(県)に是正勧告などを出したが、県は不履行とした。そこで国交相は、県に代わって執行できる「代執行訴訟」を那覇高裁に提訴した(15年11月17日)。これが第一段階。
ほかに、国交相の「効力停止」に対し、県が「抗告訴訟」を那覇地裁に訴えていたが、「代執行訴訟」で那覇高裁が5回の口頭弁論のあと、和解案を示した。これを国が受け入れて(16年3月4日。県はすでに受け入れ表明していた)、新局面(第二段階)となった。和解協議へ、という展開である。
ところが国は、和解案受け入れ表明の3日後に「埋め立て承認を取り消した処分は違法であり、是正するよう」県に指示。「是正指示」は和解条項の手続きの一環ではあったが、和解協議の始まる前であり、知事は反発し、その指示には従わず、「国地方係争処理委員会」に審査を申し出た(3月14日)。第三段階である。
だが「係争処理委員会」の審査結果も、国と県に協議を促すというもので、「是正指示」の違法、適法性については判断をしなかった(6月17日)。そこで国が、是正指示に従わないのは違法だとして県を那覇高裁に訴えた(7月22日)。現在の「違法確認訴訟」である。第四段階ということになるだろうか。
行政手続きの煩雑さと国・地方の関係の複雑さは、順を追って丁寧に解きほぐさないとなかなか理解できない。「辺野古新基地」埋め立てをめぐるこの指示や反発の経緯を振り返るとき、専門用語が飛び交う裁判の争いでもあり、難しさを実感する。いったい本質的な問題は何なのか。原点に返る必要があるだろう。
原点とは、沖縄にさらに大きな基地負担を強いるのか、埋め立てには正当で相当な理由があるのか、ということだ。沖縄県民はこの問いに対し何回も答えを出している。普通の国なら、選挙を通じて示された住民の強い意思に真剣に耳を傾けるはずだが、今の日本国は逆である。「辺野古が唯一」などと県民の声を無視し、裁判に訴えて強行突破を図ろうとしている。
先日の「違法確認訴訟」弁論で裁判長が県に対して“判決結果に従いますね”などと聞いたという。国も同様に県に「負けたら負け、従います、と言えばいいでしょう」と問い詰めてきたようである。
どうもこの裁判は国主導のように思えてならない。県側は「賃金訴訟で負けたらお金払いますか、と聞くようなものだ」と裁判長に怒ったという。
原点を見据えるべきだ。結論ありき、の進行であってはならない。
(元沖縄タイムス編集局長)