2018年11月20日 No.1

【沖縄・砂川・三里塚通信】2018年11月20日 No.1

仲井 富

<目次>
 ① 創価学会員の反乱 公明党に仏罰をと主要都市で一斉抗議行動
 ② 雑誌『正論』12月号 沖縄新知事誕生の闇 創価学会の敗北
 ③ 辺野古工事再開と沖縄県民投票 最初の提案者は維新の下地幹朗
 ④ 那覇市長選挙での自公維新の惨敗の原因 自公は市長選挙を捨てた

◆ 創価学会員の反乱 公明党には仏罰をと主要都市で一斉抗議行動
  <田中龍作ジャーナル 2018年11月10日 要旨>

 国民を苦しめ戦争に突き進む安倍政権を支える公明党は、もはや平和の党でも庶民の党でもない・・・創価学会員と非学会員たちが、きょう一斉に、全国5か所(※)の公明党本部前で抗議のスタンディングをした。(※札幌、東京、横浜、大阪、広島)

 東京信濃町の公明党本部前には学会員と非学会員20人余りがプラカードを持って集まった。「公明党よ民衆の悲痛な声を聞け」(70代女性)、「自民党には天罰を、公明党には仏罰を」(70代男性)。二人とも学会員歴50年を超えるバリバリである。
 所轄の四谷警察署は公明党本部手前の路地に参加者たちを留まらせて、そこから抗議活動させようとした。それでも学会員の女性は「公明党の看板が見える所で抗議しなきゃ意味がないんです」と押し切って、警察の規制を突破した。

 スタンディングはもともと札幌の非学会員がツイッターで呼びかけたもの。あれよあれよという間に全国の学会員に広がり、10日12時30分からの抗議活動となった。政府は辺野古の埋め立てを強行するため、私人になり済まして行政不服審査を申請した。茶番劇の大役を果たしたのが、公明党の石井国交大臣だった ― 沖縄への連帯がきょうの一斉抗議の原点だ。

 「学会員たちは真綿で首を絞められていることに気づいていない。プレミアム商品券なんて買わされるだけ。使える店も限られている。プレミアムなんかじゃない」(学会員70代女性)。学会員たちの怒りのボルテージは安保法制(2015年)の頃よりはるかに高くなっている。広がりも比べ物にならないほど出てきた。

画像の説明
後ろは公明党本部ビル=10日、東京信濃町 撮影:佐川由佳梨

◆ 雑誌『正論』12月号 沖縄新知事誕生の闇 創価学会の敗北/産経新聞副編集長 佐々木美恵

 『正論』12月号に注目すべき論稿が載った。産経新聞副編集長の佐々木美恵氏によるものだ。佐々木氏は要旨以下のように述べている。

 ――翁長雄志沖縄県知事の死去に伴う知事選(9月30日投開票)は、公明党の支持母体である創価学会が大号令で督戦したにもかかわらず、自民、公明などが推薦した佐喜真淳氏は、翁長県政の継承を強調する前衆院議員の玉城デニー氏の前に敗れた。いったい何が起きているのか。

 公明支持層の〝離反〟 沖縄県知事選で佐喜真氏は玉城氏に約8万票の大差をつけられた。共同通信社の出口調査によると、佐喜真氏は自民党支持層の74.8%から後押しされたが、公明党支持層は67.6%にとどまった。別の調査でも、公明党支持層で「佐喜真氏に投票した」と回答したのは6割だった。
 投開票から一夜明けた10月1日、公明党の古参幹部は「学会が本気で取り組んだ選挙でこれほど大敗するとは思わなかった」と肩を落とし、「議席を減らした昨年の衆院選と同じか、それ以上のショックだ。沖縄の気持ちを舐めてはいけないということだ」と打ち明けた。

 ■敗戦に沈黙する機関紙
 腑に落ちなかったのは、組織をフル稼働したにもかかわらず、知事選の結果に関する学会・公明党の発信があまりに乏しかったことだ。11月1日付の公明党機関紙『公明新聞』(関東版)は、知事選の投開票日と同じ9月30日に東京で開かれた公明党大会に大きく紙幅を割く一方、知事選については「結果は2日付に掲載します」という「お断り」のみの寂しい紙面だった。
 2日付の公明新聞(同)に目を通しても、知事選の結果に関しては2面掲載という目立たない扱いだった。それも、投開票当日に井上義久前幹事長から交代したばかりの斉藤鉄夫新幹事長名の「全力で支援した佐喜真候補が敗れたことは大変に残念です。ご支援いただいた党員、支持者、沖縄県民の皆さまに心よりお礼を申し上げます。知名度不足と、候補の人柄、能力、実績を浸透させる時間がありませんでした。(後略)」という談話が載っていただけで、いさかか拍子抜けした。

 では、学会の機関紙、聖教新聞はどうだったか。こちらも、11月2日付紙面の政経欄で「沖縄県知事に玉城氏 沖縄県の翁長雄志知事の死去に伴う知事選が9月30日に投開票され、前衆院議員・玉城デニー氏が初当選した」という5行の短報のみ。東京五輪のマスコットが起用された年賀はがき発売のニュースよりもはるかに小さい扱いだった。
 投開票翌日、東京・信濃町の創価学会本部で恒例の朝礼が行われたが、職員らを前にした原田稔会長の挨拶は、9月の訪中に関する成果報告が大半を占めた。一方、知事選への言及はなかった。ある学会関係者は「訪中と同時期に多くの学会員が力を尽くした知事選に会長が一切触れなかったことについて、釈然としない表情を浮かべる人がいた」と囁いた。この出席者の気持ちは分からないでもない。というのも、「佐喜真氏全力支援」の旗を先頭で振っていたのは原田氏ら学会最高幹部だったからだ。――

◆ 辺野古県民投票の行方 二者択一方式で最初の提案は維新の下地幹朗

 米軍基地の辺野古への移転について、県民投票で決めるべきと最初に発案したのは維新の下地議員だった。氏は2014年の知事選挙で「県民投票で決めるべきだ」という独自の立場を鮮明にして立候補。その当時のインタビュー記事で以下のように述べている。

<日時 2014年10月15日(水)18:00~ 場所:下地幹郎後援会事務所(沖縄県那覇市)IWJ岩上安身インタビュー>

 11月16日に投開票を迎える沖縄県知事選に立候補を予定している元郵政民営化担当相の下地幹郎氏に10月15日、岩上安身がインタビューし、辺野古への移設をめぐる米軍基地問題や集団的自衛権の問題など、下地氏の見解を聞いた。
 米軍基地の辺野古への移転について、下地氏は「県民投票」で決断すべきだと語る。賛成でも反対でも、県民の意志で決断した方向に進んでいく覚悟を語った。

岩上:「県民投票の聞き方について」
下地氏:「県民投票は辺野古に賛成・反対の2者択一」
岩上:「辺野古NOという答えが出ても、イコール県外移設とは限らない?県内のどこかということも?」
下地氏:「県外は今の段階ではできない。74%ある基地を30%まで段階的に減らしていく。減らし方も中国や北朝鮮を見定めながら丁寧に減らしていかなければならない。時間のかけ方も必要。現実的な減らし方をしていくことになる」
 (中略)
岩上:「全世界が注目しますね」
下地氏:「県民の意志が投票で決まったら、安倍さんはそんなこと(辺野古移設強行)はしないと」

 下地氏はこの提案を掲げて2014年知事選挙に立候補し、約6万9千票を獲得した。その下地氏は一転して、自公維新希望の与党連合の一員として先頭に立った。現在は県民投票に対して、旗幟を鮮明にできない立場のようだ。

◆ 那覇市長選挙自公維新の惨敗の原因 自公は市長選挙捨てた

 任期満了に伴う那覇市長選挙は10月21日に投票が行われ、沖縄県の玉城知事や野党が支援した現職の城間幹子氏が、自民・公明両党などが推薦した新人を抑え、2回目の当選を果たした。
  ▽ 城間幹子(無所属・現)当選、7万9,677票 得票率65%
  ▽ 翁長政俊(無所属・新)次点 4万2,446票 得票率35%
 9月30日の知事選における那覇市の得票と得票率は
  ▽ 玉城デニー 9万3,000票 58%
  ▽ 佐喜真淳  6万6,000票 42%
 得票比率は玉城58%に対して、佐喜真は42%だった。投票率の違いがあるにしても、わずか一カ月に満たない間にダブルスコアに近い敗北である。

 2017年10月の総選挙で自公維新の比例区票合計は約68,000票、共、社民、立憲合計票約57,000票だった。自公維新の翁長は比例区票の61%しか獲得できなかった。城間現市長は比例区票に2万票以上を上乗せして大勝した。その原因は何か。一言で言えば自公本部は、那覇市長選挙の敗北を予測して、県知事選挙のような体制を組まなかった。というより最大の集票組織創価学会が、県知事選の大敗を受けて、那覇市長選では全く動けなくなったのである。自公の翁長候補の事務所には、創価学会員の姿はなかったと各社が報じている。

 安倍政権は10月21日の那覇市長選投票日直前の10月17日に、沖縄県による辺野古沿岸部の埋め立て承認撤回に対抗措置を講じた。2015年に沖縄県が承認を取り消した際と同じ手段だった。3年前と同じく、行政不服審査法に基づき、「身内」の国交相への申し立てを選んだ。これに怒ったのは地元の自民党だった。沖縄タイムスが以下のように報じた。

<2018年10月2日> ――沖縄県知事選、豊見城市長選に続き那覇市長選でも敗北し、3連敗を喫した自民党。知事選では菅義偉官房長官ら閣僚や重鎮議員を大量に送り込み、国政並みの選挙戦を展開した政府・与党だが、那覇市長選では翁長政俊氏「劣勢」を見越し、選挙戦に配慮する姿勢を示さなかった。

 選挙終盤の17日、政府は名護市辺野古の埋め立て承認撤回への対抗措置を打ち出した。政府はこれまで、投票結果への影響を避けるため選挙中は新基地建設工事を中断することが常とうの手法だった。
 今回も、対抗措置は那覇市長選後との見方が強かった。17日の発表を聞いた県連関係者は「厳しい情勢調査の結果を見て、もう、選挙に配慮する必要はないと判断したのだろう」と指摘。「これまで政府とのパイプ役を担ってきた翁長氏をこうも簡単に見捨てるのか」と憤った。

 さらに、陣営内には知事選から続く、連日の選挙疲れもあった。自民、公明、維新の3党態勢で臨んだが、「人海戦術が持ち味の創価学会員の姿が見えなかった」(県連関係者)という。翁長氏選対関係者は「勝てないと思ったら、みんな手を引く。これが現実だ」とため息をついた。――

画像の説明
  相手候補当確の報を受け、言葉を交わす翁長政俊さん(右)と
  自民党県連の国場幸之助会長=21日午後8時すぎ、那覇市牧志の選挙事務所

 (世論構造研究会代表・オルタ編集委員)

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