【視点】

非正規労働者の増大と労働組合の対応・組織化=日本と欧米主要国との対比

成川 秀明

<問題意識>
 ここ数十年間、経済のグローバル化、サービス化、民間市場重視などの影響を受け、日本、西欧の雇用構造は、フルタイムで雇用期間限定なしの正規労働者数が減少し、それに代わって、パート労働者、有期労働者など非正規の労働者が労働者の約4割前後もの大きな比重を持つように変わってきた。
 この雇用構造の変化の影響を受け、日本、西欧、米国の労働組合は、90年代以降に、その組合員数を大きく減少させ、雇用者に占める労働組合員数の比率である組織率は傾向的に低下しており、労働組合の社会的影響力の減退が指摘されるに至っている。この労働組合の組織率低下傾向に対し、欧米の労働組合は、21世紀に入り、非正規労働者の労働組合加入を進める非正規労働者組織化活動を活発化させており、英国等では労働組合員数は減少を阻止できた状況を作り出している。
 日本では、非正規労働者の組織化活動は、一部の労働組合にとどまり、多くの非正規労働者は、依然として労働組合の外にあり、労働組合員数も低迷状況を続けている。労働組合が、労働者の声を代表する組織の位置を取り戻すためには、日本においても非正規労働者の組織化が不可欠になっている。
 英国、ドイツ、オランダの労働組合における非正規労働者の組織化活動を紹介している幾つかの英文論文の要約を示し、日本における非正規組織化の課題について、以下で検討したい。

Ⅰ 欧米労働組合における非正規労働者の組織化活動

 英国、ドイツ、オランダにおける組合組織化の特徴(以下は、◇ETUI <WorkingPaper 2010.02> “Following the ‘organising model’ of British unions―Òrganising Non-standard workers in Germany and the Netherland ― “筆者:Kurt・Vandaele(ETUI上級研究員)、Janiene Ⅼeschke(コペンハーゲン経営大助教)”からの要約)

1.欧州における非正規労働者の増加と上記論文の狙い

 ここ20年間ほど間(2010年時点)に、非正規労働者が著増してきた。その背景には、グローバル化による正規職の減少、そして、労働者失業率の引き下げを目指した各国政府、及び「欧州雇用戦略」(フレクスビリティ)などの政策がそれを促した。ドイツとオランダでは、パート労働、有期労働、請負自営業(偽自営業)が増加。英国では、有期労働者は減少しているが、パートを中心に非正規雇用が増えた。
 これらの非正規労働者は、不安定賃金、雇用不安、不十分な社会保障給付、また教育訓練機会の欠如にさらされ、女性、若者、低技能者、移民労働者に特に多い。
 これらの非正規労働者を労働組合に組織化できれば、(組織率を低下させている)労働組合の活動を、今後は活性化できる。英国の労働組合は、米国型の組織化モデルを実地した。それを受けて、ドイツ、オランダの労働組合は、非正規雇用を中心とした組織化活動を展開している。以下では、それら対応について検討したい。

2.3か国における非正規雇用の増加とその差異

 EU指令(1997年EUパートタイム労働指令、 1999年EU有期労働指令、2008年EU派遣労働指令)」において、雇用形態での「均等待遇原則」を策定。「比較可能なフルタイム労働者よりも不利な取扱いを受けないもの」とし、EU各国はこの指令に準じた国内制度を整備・実行している。

◎ パート労働者
 英国、ドイツ、オランダの雇用者に占めるパート労働者の比率は欧州平均より高い。2008年には、英国、ドイツは雇用者の4分の1、オランダは47%。オランダのパートタイムは、1980年代に労働時間短縮の手段として合意(「ソシアル・パートナーシップ」)して普及。女性の社会進出と重なって増加。女性は家事育児の役割を担いつつ労働市場に参入。
 欧州では、パートタイム労働者の9割は女性、男性は1割(独、英)。オランダではパートの24%は男性で男性パートが多い。男性パートは、教育、訓練、またはフルタイム雇用が見いだせない人。オランダを例外として、欧州の諸国(英、独も)では、低収入のパートが年金加入要件に満たないことから、低収入のパート等非正規雇用者の退職後生活が貧困に陥いっている社会問題が多くの国で現れている。

  図1 パート労働者の雇用者比率(eurostatから。原図は1992年~2008年)
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◎ 有期労働者(temporary workers)の雇用比率
 有期労働者にも、正規労働者の賃金・労働条件に対応した「均等処遇」(97年EU指令)が法的に適用されている。
 2008年の雇用者に占める有期労働者の比率は、オランダ18%、英国5.4%(90年代に減少)、独14%強。有期労働者の多くは、若者と女性(ただし、独では男女拮抗)である。
 英国、ドイツでは、有期労働者の半数は正規雇用が見いだせない理由で有期を選択。オランダではその値は4割。正規雇用でなく、有期雇用を自主的に選択している人は、英国で35%と多いが、独、オランダでは1割以下。各国の差異は、有期契約雇用に対する法的規制の強さが作用。法的規制の強さ(正規雇用、有期雇用ともに)は、ドイツ、次いでオランダ、緩いのは英国。

  図2 有期労働者(日本のアルバイト、契約職員、嘱託に対応)の雇用者に占める比率
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◎ 一人自営業(Òwen account-worker)
 増大するサービス業において、また失業脱却のための起業として、(最近ではGIGワークやフリーランスとして)一人自営業が増えている。労働組合は「偽」自営業(bogas)は批判している。(日本でも「フリーランス保護法案」の参議院委員会・可決(2023年4月)、文面契約、60日支払い、値引禁止などの緩やかな保護策。)。

  図3 一人自営業の雇用者に占める比率
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3.独、英、蘭における雇用形態別の組合組織率の推移(1992年~2008年)
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◇ 独・英・蘭の3カ国の労働組合の組織率を、雇用形態別にみると、無期フルタイム労働者の組織率は、パート、有期雇用よりも高い。しかし、この標準労働者の組織率は、80年代から90年代にかけて、3カ国ともに顕著に低下している。一方、同じ期間にはパート労働者が増大した。労働組合は、このパート労働者の組織化を進め、ドイツ、英国ではその組織率は高まり、オランダではその水準を維持し、3カ国ともに標準労働者の組織率水準とパートの組織率水準の差は縮小している。英国、オランダではパートの組織率は標準労働者の3分の2までに縮小している。

◇ 補論
 2010年以降では、パートの組織率は、上記表の拡張部分に示したように、2010年頃の水準を3国ともに維持している。それに対して、標準雇用(無期フルタイム)の労働者の組織率は、2010年以降に3国共に低下している。フルタイムとパートの組織率水準の差は縮小傾向を見せている。

◇ 有期労働者の組織率は、やや低下(1992年~2008年)
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◇ 有期雇用の組織率は、英、オランダともにパートタイマー組織率よりも低い。
 これは、有期労働者は雇用の継続が途切れるなど、パート労働者よりも職場の継続性が低いこと、したがって、組合加入の機会が少ないなどが影響している。
 一人自営業の組織率は、3国ともに公式統計がない。労働組合は一人自営業に対しては、最近になって組織化活動を強めており、今後の課題になっている。オランダ、独では、自営業者の組織化については、別途に独立の新労働組合を設立している。オランダでは2007年から公式統計にも計上している。

4.パート、非正規労働者の組織率が正規労働者よりも低い主な理由

 非正規労働者の組合参加意欲が低いとは言えない。非正規労働者の近くに労働組合が無く、その結果、組合の認知度が低いことが大きな要因であろう。
 非正規労働者は中小企業にも厚く存在している。これら企業では大手企業に比べ、労働組合員がいない、また組合組織がない企業が多い。そのため、非正規労働者は、労働組合活動に接する機会が少ない。このことで、非正規労働者の組合認知度は大手企業の従業員よりも低くなる。このことが、非正規労働者の組合加入率を低めている。
 非正規労働者の組合組織率を高めるには、非正規労働者に届くような参加勧誘や共同活動を行うなど、中小企業の現場で組合組織化活動を実施することが重要だ。

5.組織化運動におけるサービス強化モデルと組織化モデルの提唱

 労働組合員の減少が80年代以降に進んできた中で、90年代の後半に、この組合員の減少を克服する活性化等の策について多くの分析がなされた。その中で、労働組合の組織化活動に対して、二つの理念モデルがそれぞれの根拠から提案された。
 その一つは「サービス強化モデル」であり、組合が組合員へのサービスを教育訓練、職探し、相談などの活動へ強化拡大することで組合員の獲得を目指すとするモデルだ。組合役員が先頭に立って組合員向けのサービス活動を強化拡大して、新組合員の勧誘を図るとする(合理的選択理論)。

 もう一つの「組織化モデル」は、上記「サービス強化モデル」を批判し、必要な改革は組合員による組合員獲得活動や、組合員参加のキャンペーン活動を推進する運動の創出であり、この新たな運動こそが新組織員の加入を進めるとする「組織化モデル」(コーネル大・ブロンヘンブレンナー教授1998年刊)である。この「モデル」は米国のSEIU労組が行った「Justice for Janitor」運動の成果をモデル化したもの。勧誘・キャンペーン等について多くの戦術・行動が提案され、「モデル」自体の形態は多様化・希薄化している。しかし、英国TUCを中心に欧州の組合が、組合員減に対処する組合再活性化策として、この「組織化モデル」を導入した。その態様と成果について以下に検討しよう。米国の学者(Turner:2007年刊)は、欧州の組合が、組織化モデルの原点・「草の根組合員の参加活動」の取り入れが不十分と指摘し、これら欧州での組織化運動を批判している。

6.英国の労働組合が展開した非正規労働者への組織化活動の特色

 英国の労働協約制度では、労働者の多数支持を得ている組合が労働協約締結権をもつ単線型である。従って協約が適用されるのは企業従業員の半数以上が組合員である企業に限定され、独などの産別と経営協会の合意による全国協約ではなく、地域的協約である。そのため、労働者多数の支持を得るためのキャンペーン活動や組合加入促進運動が組織化の基本になって来た。
 上記のような労働運動の構造を背景に、英国のナショナルセンターTUCは、1998年、組織化オルグを養成する「組織化アカデミー」を設立(一期54名、計150名養成)。そして組織化活動計画を傘下組合と協議して組織化運動を開始した。主な傘下組合は、非正規労働者の導入反対というこれまでの組織方針を撤回し、これら非正規労働者の採用そして組合加入を認める新方針を表明した。そして、「組織化モデル」を参考に、組織化オルグを地域に配置して組合員が参加した新組合員勧誘活動、組織化活動を開始した。組織化活動を積極的に展開したのは、流通関係、サービス関係、非正規労働者の参加を既に果たしていた幾つかの労働組合(UNISON[公務部門労組]、GMB[全国都市一般労組]、ユナイト[民間一般部門Amicusと運輸一般労働組合(TGWU)合併])である。派遣労働者、有期労働者、一人自営業労働者(教育分野)、またメディア・娯楽産業等のフリーランサーをターゲットとし、さらに新たな産業・企業での組合員の獲得を目指して、勧誘キャンペーン、組織化活動を展開した。

 この組織化運動は、組合員数の増加を実現している。しかし組織率の低下傾向を阻止するまでには至っていない。また、労働組合員が既に存在していた企業職場等での新組合員加入が組織化の中心となり、新規職場における組合結成まで至った例は少なかった。さらに、この組織化運動を行った時期は、労働党政権の誕生(97年)や労使関係法改正(99年)、経済環境の好転(失業減少)など経済社会環境が良かったことも背景にあった。
 加えて、この組織化運動では、労働組合ごとでばらついており、組合リーダーの熱意の差、不十分な運動資金(財政)、「社会的パートナー」依存など、「組織化モデル」の展開には濃淡、戦術の相違も大きく、「組織化モデル」が効果的に働いたか否かを実証的に示すことは難しい。
 しかし、厳しい環境下で組合員減少を阻止しようと新たな組織化運動を展開した実績は大きい。その中で、その戦略・戦術については、内部の対立、既得権の主張などの影響が見られている。

◇ 補論(Maarten Keune:“Trade union responses to precarious work in seven European countries” 2013年・アムステル大教授の論文から)
 TUCは2007年に不安定労働者対策委員会を設立、これら労働者への組合対応と政治的課題を検討。それを受けて幾つかの傘下組合が不安定労働者の組織化活動を展開。既に組合と協約がある場合(看護婦、芸術家など)にはその内容を強化し、また民営化された労働者に対する協約強化活動を実施。特に交通部門における不安定労働者の組織化・協約活動、さらにポーランド移民の清掃労働者に対する組織化、高等教育機関での有期契約者、時間契約者、さらに出来高制の芸術家に対する組織化・協約化活動を行った。そして、オルグ活動家と活動資金を準備した場合には成功している。また組織化活動には資金と組合人材(役職員、オルグ)の熱意が不可欠で、長期に継続することは困難と論じている。

7.ドイツの事例:社会的パートナーシップ制度に依存した組合での新たな挑戦
 東西ドイツ統一(1991年)による東西ドイツの労働組合統合は、それ以降のドイツの労働組合員数と組織率の減少に大きな影響を与えた。
 統合以降には、特に旧東ドイツの組合員数が経済不振の影響により大きく減少し、このことが、統合後のドイツの労働組合員数、組織率の急激な低下を生み出した(組織率:1991年33%→2008年20%)。しかし、この減少および組合員年齢の高齢化進行にもかかわらず、労働組合の中央組織DGBでは組織化議論は起きなかった。それは、DGB、傘下産別組織が「社会的パートナー」制に基づく独占的な産業労使関係=産業別労働協約制度と企業・従業員協議会(代表)制度に対する信頼感が強固で、組合員減少の事態に対する危機感を欠いたことが大きく影響した。
 しかし、労働協約の適用除外企業が増加して労働協約機能が弱体化し、協約カバー率の減少が進み、さらに、サービス産業や中小企業において従業員代表制度のない企業が着実に増加して、90年代末には、産別組織はその組合員獲得機能(従業員代表制度に依存)を活用できない事態に立ち至った。また、この時期には非正規労働者が増大することが続いた。

 21世紀初頭、ドイツの産別組合は、それまでの非正規雇用導入反対の立場を撤回し、非正規労働者の雇用改善の要求に方針転換した。そして非正規労働者の組合加入が労働組合の活性化にとって必要不可欠と認識するに至った。
 ドイツ最大の産別組織IGMETALは、2000年代前半期に地方支部が現場組合員参加型の組織化活動を開始し、2003年からは工業集積地のノースライン・ウェストファーレン地区支部が地区・ローカル主体で現場組合員参加型の組織化・組合員獲得活動(英国TUCの「組織化モデル」導入)を展開して、新規の組合員獲得に成果を挙げた(2008年にはNRW支部の組合員数は約20年間の減少傾向から初めて増加に転じた)。その評価が広まり、2007年には、IGMは組織化重視の新執行部を選出した。
 このIGMの組織化活動では、自動車関連およびエレクトロ部門で多く働いていた派遣労働者に対する組織化活動として、「同一労働同一賃金」の街頭キャンペーン活動のもとに、従業員協議会の設立、新組合員勧誘活等の組織化活動を実施した。また、産別本部内に組織化キャンペーン部門も新設した。
 建設関係のIG BAUは、2004年に「欧州移民労働者組合」を設立、3年計画で建設および農業分野の季節労働者に対し、組織化活動を行った。また、2005年に、一人自営業労働者も組合員にできるとする組織綱領に改訂した。

 Ver.di(統一サービス産業労組【2001年に5つのサービス関係組合[民間サービス、公共部門従業員等]を合併した産別労組】)は、非正規労働者の新しい組織構築を目指した諸活動を展開した。その一つとして、市内ワンストップサービス窓口を設置し、組合員が気楽に職務や労働条件等についての相談・職業訓練など、組合から助言を得られる活動を強化した。また、組合間、組合員相互に直接ネット交信により相談や情報交換ができる対話網を新設した。
 Ver.diは、その組織化活動では、従来同様に従業員協議会と労働協約活動に依拠した方式を取ったが、2004年には「チェーン・スーパー・Lidl」の低賃金・悪労働条件に対して3年間の街頭キャンペーン活動を実施(米国労組のウォルマート・キャンペーンに学び)し、市民組織との共闘活動も行った。そして、従業員協議会の設立と新組合員を獲得した。しかし、この運動は中央依存型であり、広がりを欠くなど不十分さがあった。
 2006年、Ver.diは米国労組SEIUの協力のもとに、ハンブルクにおいて、ミニジョブ依存の安全保障サービス業界に対し、総合的なキャンペーン活動を1年間実施した。その運動の成果として、賃上げ、新規組合員獲得、幾つかの企業で従業員協議会の設立、組合員サークル結成等を実現した。この運動によりVer.diの社会的評価と労働組合の組織化活動に対する社会的認識が高まった。しかし、その運動は短期にとどまり、財政的制約の問題などの限界があった。
 また、Ver.diは、一人自営労働者(own account workers)を組合員にできる規約に改正した。当初は、メディア関係、芸術、文筆分野の自営労働者を対象としたが、今では、すべての分野の自営労働者に相談・助言・保険等の組合のサービスを行っている。しかし、法的には従業員協議会の結成は自営業労働者には認められていない。

8.オランダの場合:組合サービス中心の組織化活動

 1980年代までは35%の組織率だったが、1980年代後半から2000年代前半にかけ、製造業の人員数急減などで、組合員数が急減し、2007年の組織率は23%に低下。しかし、90年代から2000年代にかけて、女性の労働市場進出が急増し、その多くが労働組合員となり、女性組合員は増加。
 この組織率の低下に対して、産業別組合は、組合合併で財政制約等に対処したが課題山積。多部門産別・FNV連合(1998年合併:製造・食品・サービス・運輸)はこの間の合併の代表格である。この産別組合は、ナショナルセンターFNV連盟傘下の最大産別であるが、全国組織に頼らず、財政的な困難を抱えつつも独自の産別サービスを始めている。
 FNVは、オランダのナショナルセンターのなかで最多の組合員数を要する連盟組織であり、オランダ全組合員の63%が加入している。以下、FNV傘下の産別を中心に運動の特色をまとめる。

 オランダの労働組合は、ドイツの場合と同様に、制度化された産業別労使関係制度下で活動しており、自らが積極的な組織化活動に取り組む要因にかけている。その中で、2001年に国会は前年に続いて組合員数減少の場合に、全労働者に労働協約の拡張適用を行う制度に疑問を示して、労働組合の労働者代表制を弱めた。加えて、組合間の競争が激化したことから産別間の協力関係が弱まった。さらに、旧来の産別組織は、全国組織未加入の新しい独立した小組合の競争に直面した。これら新独立組合は協約適用の除外を企業に与えて既存組合を脅かした。また、これら近年に結成の独立組合は、メディア部門に浸透し、組合サービスをインターネット活用で行い、組合費を低額化した。2005年設立のオルターナティヴ労組(AVV)は、若い労働者の利益を代表する組合を宣伝し、スト基金は不必要とし、組合費を低額にしている。2006年には一般組合・DeUnie(ホワイトカラー従業員組織の傘下)、およびCNN連盟のサービス部門労組が設立された。いずれもインターネット型労組であり、教育訓練サービス、キャリア相談などの組合員サービスを削減し、机上相談が中心のサービスに限定し、インターネット世代の組合加入を目指している。

 1998年に建築・木工労働者労働組合(BWU)は、一人自営業(own-account worker)の組合員加入を受け入れた。FNV連合は、農業・介護・ICT・製造・サービス ・運輸部門の一人自営業を別途の独立組合(FNV自営業労働組合)として組織化を始めた。そして、この組織は、ナショナルセンターFNV連盟の一員となった。独立自営労働者は、電話を活用した加入勧誘キャンペーンで組織化され、その組合員はwebサイトで情報サービスや助言が行われている。自営業組合員への組合サービスは、従来型組合サービスに加えて、税処理情報、起業サービスなどもある。さらに、FNVは自営業者への社会保障や税での制度改善を要求している(2007年FNV政策要求)。この動きに対応し、オランダ第2位のナショナルセンター・キリスト教全国労働組合連盟(CNV)も2007年に自営業労働者の組織化を決定している。これら新たな自営業労働者組合は、組合員数を他の組合よりも伸ばしている。

◇ 補論(Maarten Keune論文から)
 オランダの組合は、1990年代末に、雇用状況の悪化に対処して、フレキシビリティを高めるパートタイマー、有期労働、派遣労働の導入を認め、同時に、労働協約で正規雇用と等しい労働権をこれら非正規労働者にも確保する方針を取った。しかし2000年代の後半には、労働協約による非正規の制御が難しく、当初の方針の見込み違いを認知するに至った。そのため、FNVは、これら不安定な非正規雇用に対し、① ILOの「ディーセント・ワーク」推進運動で改善を目指す、② フレックス雇用は、従業員が「病気及び繁忙期」のみに認める、③「均等労働・均等賃金」原則を非正規雇用に厳格に適用する、との方針を打ち出し、傘下の産別組織に、以上の要求についてのキャンペーン等を行い、社会に向けた発言を強めるよう求めた。そして、非正規雇用が多く、対策が必要な分野を明示した。その分野は、郵便、清掃業、食肉加工、スーパー、家事支援、建設、教育、タクシーである。
 また、これら非正規労働を対象とした労働協約の改善強化を産別に求めている。さらに非正規労働者に対する厳格な規制対策を組み込んで、「ポルダーモデル」を変更するように、3者構成の社会経済会議、さらに2者構成の労働機構に提案している。

9.UK、ドイツ、オランダの労働組合の組織化事例(ETUI・ワーキングレポート)が示す主な論点

① 上記3国の労働組合(Ncおよび主要産別)は、組合員数の減少傾向を断ち切るため、非正規の組織化を進めることを組織決定して、組織化活動を展開した。
② その成果もあって、パート労働者の組織化率は、2010年時点では、やや高まり、典型雇用者の組織率の約3分の2前後(オランダ3分の2強、UKは3分の2で約20、独は6割強水準の15%)となり、典型雇用との組織率格差は縮小した。
③ 有期労働者については、パートの場合よりも、この間の組織化の改善度は低く、UKでは組織率をやや低め2010年時点で17%、オランダでは、ほぼ水準維持の9%であり、典型雇用との差は、典型雇用の組織率が低下したことから、縮小した。
④ 自営業については、3カ国の関係労働組合はいずれも、自営業の労働組合結成の活動を展開しており、組織としては別途の独立した自営業組合を立ち上げ、保険の適用など自営業組合員へのサービスの提供を行い、組織拡大を目指している。そして、インターネット活用型のサービス提供が行われている。
⑤ 非正規労働者の組織化では、労働組合が非正規労働者の意思を代表しており、そして非正規労働者自らが組合活動に参加するなど、労働組合機能の質が問われている。ドイツ、オランダの組合では非正規労働者の組合活動を促す情報ネット(インターネット)整備、独立組織の結成など、組合活動への組合員参加活動が配慮されている。
⑥ 非正規労働者の組織化活動では、イギリスの組合は米国型の「組織化モデル」を実践してきた。ドイツの主要産別(IGB、Ⅴer.di)も「組織化モデル」を導入し、地域キャンペーン活動、勧誘活動を行ってきた。オランダの組合は「サービス提供強化モデル」の広範囲な実行により組織化を行ってきた。組織化の「モデル」は各国の条件の差異のなかで展開され、一定の成果を生み出している。米国の学者は「現場労働者の参加が組織化の鍵」として、これら3カ国労組の「組織化」活動を批判的に分析している。

Ⅱ 日本における雇用構造の非正規化と労働組合の組織化活動の現状

1.日本の雇用構造の変化
◎ 日本の労働者構成と労働組合員の特色(非正規との関係を中心に)
 日本の労働者構成と非正規従業員;非正規が4割弱に、その高まりは主にパートの増加による。パートの雇用者数に占める比率は2022年で18%(労働力調査:下図)。
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 非正規従業員は、民間企業(小規模で特に厚い)とその他法人で多くが就労している(就業構造基本統計)。
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 パート従業員は、小規模企業で非正規の55%と厚く就労しているが、中規模、大規模企業、でも非正規の4割前後、その他法人では56%を占める。非正規職員では女性が民間企業で7割弱、官公庁、その他団体では7割強をしめる(就業構造基本調査2017年)。
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2.日本における組合組織率の推移:長期にわたり低落
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〇 2022年の労働組合員の推定組織率は16.5%。パート組合員の短時間労働者に占める割合は8.4%。パート組織率は全体の組織率の約半分の水準(正規より半分弱)。パートの組織率は2000年台後半から2020年にかけて増加。2020年以降はやや停滞気味(労働組合基本調査)。

  組合員数とパート組合員数の推移(労働組合基本調査)
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〇 日本の労働組合の組合員数のピークは1994年の1270万人であり、90年代後半から2000年台前半にかけ、バブル崩壊後の経済不況により、組合員数を年々20万人前後減少させた(99年から2003年には30万人前後減)。2006年以降2015年にかけては年数万人前後の減少、2010年台後半からは数万人の増だが、21年、22年は数万人減となり、1千万人を割った。
 パート組合員数(女性)は、1990年以降から労働組合基本統計で調査・公表され、2013年以降から現在まで、年々4万~6万人の増となっているが、2020年には7万人の減となっている。

3.組合員数の減少の特色

 組合員数は、90年代半ばから2010年ごろまで急激に減少したが、2010年半ば以降には水準を維持している。減少期には、民間企業の組合は、規模にかかわらずに減少。水準維持の2015年以降においては、中小、中規模、官公部門では減少傾向が継続し、民間大企業の組合は増加に転じて、全体水準を維持している。大企業の組合員数の増加では、小売り・サービス(飲食)産業の大企業(UAゼンセン同盟傘下)組合が女性パート労働者を組織化し、組合員数増加に大きく貢献している。
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  出所:労働組合基本調査
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◇ パート労働者の組合員がいる産別組織(労働組合基本調査2022年)
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4.非正規労働者の組織化事例の特色

 2000年代後半以降に、幾つかの労働組合では、パートなどの非正規労働者を組合員に迎える非正規労働者の組織化事例がみられるようになった。(連合総研「非正規労働者の組織化」(2009年刊)、同「有期・短時間雇用のワークルール調査研究報告」(2014年)、JLPT「非正規労働者の組織化と労働組合機能に関する研究」(2016年)
◇ 非正規組織化事例の論考(日本労働研究雑誌「橋元論文」(2009年10月号)、同「禿あや美論文」(2016年7月号)等。

◎ 組織化の主な対象者と要因
 ① 業務中核の短時間従業員の組織化:
  イオンリテール労組、小田急百貨店労組、西友労組、サンデーサン労組(飲食業)。
 ② 基幹非正規従業員の組織化:
  日本ハムユニオン、全矢崎労組(自動車部品)、敷島パン労組。
 ③ 正社員代替非正規職の組織化:
  クノールブレムゼ労組(自動車部品)、広電労組、市川市保関係職員労組(非正規のみ)、八王子市臨時・非常勤職員組合。
 ④ 補完常用非正規職の組織化:
  浜松ホトニクス労組(電子部品)、日赤労組松山支部。

 現在時点での日本の労働組合の非正規労働者の労働組合への組織化状況について、2021年の労使関係総合調査(実態編:労働省)で見ると、まず組織化活動を組合活動の特に重点課題としている組合は、25%にとどまっている。そしてパート労働者の組合員化を重点課題としている組合は、14%に過ぎない。(下表参照)。
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 また、現在の労働組合規約で非正規労働者を組合員として定めている組合は、約4割であり、6割の労働組合では正規従業員のみを組合員と定めている。

  表 「非正規職を組織加盟している労働組合の比率(労使関係総合調査(実態調査))」
     <正社員以外の労働者の組合加入資格有無の労働組合比率(%)>
   2021年調査
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5.日本における非正規労働者の労働組合参加の現状:一部業種の大手組合のみ

 以上のように、「労使関係総合調査(実態調査)」によると、パート、有期雇用者が組合員にいる労働組合は、2021年には約3割である(6割強の組合は正規職員のみ加入)。7年前に比べて、非正規従業員を組合員に有する組合は8%ポイントほど増加している。
 しかし、主要産別の組合員数統計(3-3項のグラフ参照)の数値では、現在の組織化されたパート組合員の大多数は、スーパー等大規模小売店や広域チェーン展開飲食店の分野に限定され、いずれもUAゼンセン同盟加盟の大手組合である。その他の産別の非正規職の存在は、JP労組で2割強、情報労連、全自交、損保労連が1割弱と目立つのみであり、残りの産別は数%以下であり、非正規労働者の組合参加は少ない。
 非正規従業員が厚く滞留している民間中小、中規模企業、その他法人・団体においては、当該の労働組合の組織化率も低く、非正規従業員の組織化はほとんど進んでいないと判断できる。

6.非正規労働者の低賃金(雇用不安定)の是正は緩慢

 パートタイム・有期雇用労働法(2021年4月全面施行)により、パート労働者、有期契約労働者に対して、「均衡・均等処遇」(人材活用の仕組みの違いによる格差を是認しており効果は限定的)が制定され、中小企業にも2021年4月から適用。しかし以下のデータに見るように、その効果ははっきりとは確認できない。
 パート労働者の組織化も2010年代の後半から進み始めているが、賃金格差の是正の歩みは遅々としており、パート労働者の組合加入が賃金格差を是正するまでの効果は生み出せていない。むしろ、パート賃金の引き上げには、最低賃金の底上げの効果が出ている。

  出所:「賃金構造基本調査」各年盤から。
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Ⅲ 西欧等の労働組合組織化活動から提起された日本の労働組合への検討課題
1.組合員数の低下・停滞に対する対応策(組織化等)が不可欠

 各国の労働組合員数は、約30年間にわたって低下傾向を続けている。特にドイツは、東西統一後の東独での失業増の影響で、組合員数を大きく減じてきた。その中で、英国は組合員数の落込みは比較的に小幅にとどまっている。
 この組合員数の低下では、各国ともに製造業の男性組合員数の低下が著しい。それに代わって、各国ともに官公部門の従業員の組合員数が増加している。しかし民間組合員数の減には及ばない。その中で、各国ともに、組合員数に占める女性の比率が顕著に増加している。
 上記に見たように、1990年代、2000年代には、この組合員数の減に対して、非正規労働者の組合加入の組織化活動が欧州主要国で展開された。
 これらの欧米組合の組織化活動の展開に対し、日本では、ここ20年の間に非正規労働者の組織化を街頭キャンペーン等社会的に呼びかけた組織化の例は少ない(ゼンセン流通部門のパート組織化は、企業内交渉が中心。一部中小組合の労働争議では共闘行動)。
 また、組合員中の女性組合員の割合は、日本の場合は35%(2022年)にとどまり、欧米諸国(独40%、米48%、英58%)よりかなり低い。
 欧米の組合活動では、社会的な集団的労使協議・労働協約が基本だ。これに対して日本は、企業内協約が基本で、労働組合活動の社会的影響力は「春闘方式」など限定的にとどまっている。
 さらに、労働組合が存在する企業は、下記表に見られるように、日本は中小企業では1割未満にとどまり、大企業中心(4割)である。一方、欧州諸国では、中規模、小規模企業においても、1割~5割の企業で組合があり、50人未満の企業でも1割~2割強の普及率である。
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2.「非正規労働者」に対する「均等待遇」「同一労働同一賃金」原則が日本では脆弱

【1】日本と英国における「同一労働同一賃金」ルールの差異
 欧州では、非正規労働者の組織化では、「同一労働同一賃金」街頭キャンペーン(ドイツ、英国)、「非正規労働者にディーセント・ワークを」(オランダ)などの訴えに見られるように、非正規労働者への「均等待遇」ルールが非正規労働者に適用されることは「社会正義」になっている。一方、日本では、パートタイム労働者の「均等待遇」は、企業内の労使交渉内、裁判での争い等、狭い範囲の問題にとどまり、「均等待遇」ルールの適用では経営者意向が配慮されており、欧米の「均等待遇」原則との間に大きな落差が存在している。

【2】英国の同一労働同一賃金法(2010年:平等・人権委員会のwebから)のポイント
◎同一賃金は、従業員、労働者、見習い、派遣労働者、パートタイム労働者、雇われ自営業者に適用される。

◎「同一労働」とは
 ・'like work' (類似労働)– work where the job and skills are the same or similar
 ・'work rated as equivalent' (同一格付労働)– work rated as equivalent, usually using a fair job evaluation(公正職務評価)This could be because the level of skill, responsibility and effort needed to do the work are equivalent.
 ・'work of equal value(同一価値労働)' – work that is not similar but is of equal value This could be because the level of skill, training, responsibility or demands of the working conditions are of equal value.
 <When differences in pay might be allowed>(賃金差が許される場合)
 例: it might be possible for someone to be paid more than someone of the opposite sex who does similar work because:
 a)その職務ではスキルが決定的な意味を持ち、b)生計費水準が異なる地域での雇用(例ロンドン地区)であり、c)夜勤であり、d)雇い主がその賃金でないとその性の夜勤者を雇えない場合。
 ◇ Equal pay and other forms of discrimination
  By law:雇い主は、their disability, race, religion, sexual orientation or another 'protected characteristic' により、賃金、労働条件に格差を付けることは許されない。

【3】日本日本における「均等待遇」:「ガイドライン」(パートタイム・有期雇用労働法2020年4月施行;中小企業には21年4月施行)の問題点
◇ 賃金差別とならない例(判例、および「ガイドライン」例示)
 定期的に職務の内容及び勤務地に変更がある通常の労働者、あるいはキャリアコースを選択した場合には、勤務地変更のない労働者、またはキャリアコースを受けていない労働者との間で賃金差があっても、合理的であり、賃金差別とは認められないとされている。
◇ <賃金の決定基準・ルールの相違がある場合>の取り扱い(ガイドライン例示)
 「賃金の決定基準・ルールの相違は、通常の労働者と短時間・有期 雇用労働者の職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものの客観的及び具体的な実態に照らして、不合理と認められるものであってはならない。」<「賃金表」差別を是認!>。
 (浅倉睦子早稲田大教授:労働協会雑誌2018年11月号:『ガイドライン案は、正規・非正規に異なるルールを用いること自体を問題にする観点がない。正規労働者には「年功給」「職能給」、非正規労働者には「時間給」という待遇差自態を問題とせずに均等待遇を実現する道筋があるとは思えない』)

3.厳しい時代には労働組合は、市民運動との連携・共同行動が必要

 2010年以降には、世界金融危機による不況、およびEU・各国政府の厳しい緊縮政策の影響を受け、失業増、福祉給付減、そして公共部門の縮小など、EU諸国の労働組合は、それまでの組合員数の減少、組織率低下の傾向に加えて、公共部門の労働者・労働組合の縮小・削減の大きな圧力を経験してきた。さらに、この間には、各国政府の経済政策が、新自由主義的政策に傾斜し、「社会的パートナーシップ」(2・3者協議制)が背後に押しやられ、また労働組合とその友誼政党との関係も疎遠な状況になるに至った。
 これら政治・経済状況の悪化のなかで、西欧各国の労働組合は、自らの社会的発言力を維持・強化するために、組織化活動、社会的キャンペーン活動を展開し、その運動では市民運動体(NPO・NGO等)との連携、共同行動を意識的に追求するようになった。

 英国のTUCは、傘下の公共部門関係の組合と共同し、医療など公共部門サービスの削減に反対する市民キャンペーンにweb等で取り組み、市民団体の参加・支援を得た。フランスでは「26歳未満の試用雇用期間法案」に対して、労働組合が「労働条件引き下げ法案」(2006年)と批判して社会的キャンペーンを広範に実施し、学生、市民団体を結集した大規模デモ、また数派のストライキ闘争を実現し、この法案を撤回させた。ドイツでは、低賃金・反組合のスーパーに対して、産別組合Ver.diは、市民団体、地域団体の応援を得て、組織化キャンペーン活動を展開して、組織化に成功している。また、2016年にはDGBは「貧困賃金解消」をスローガンに、マスコミ・webの双方で、最低賃金制度の導入を訴え、市民団体の支援を得る中で、最低賃金制度の国会成立を実現した。環境問題についても、ドイツの産別組合は、環境NGOと共同行動を広く行い、自らの産業現場においても環境改善活動に取り組み、脱原発方針に転換している。

 また、西欧の多くの労働組合は、組合員の差別・権利問題を進めるために、差別禁止・権利平等の目的を掲げた女性、障碍者、LGBT、人種、外国人労働者、少数民族などの市民運動と連携し、さらに共同行動を追求し始めている。
 加えて、ここ20年ほどの時期に新自由主義に傾斜して労働組合とは疎遠・冷えた関係に立ち至っている「友誼政党」との関係に対して、労働組合は、組合の意見・方針が尊重される新たな関係を構築する動きを強めている(特に英国、ドイツなど)。
(“Trade Unions in Europe‐Innovative Responses to Hard Times‐”FES刊(2014年4月)
 著者:MAGDALENA BERNACIAK(ETUI研究員)、REBECCA GUMBRELL-MCCORMICK(ロンドン大先任講師)、 RICHARD HYMAN(ロンドン経済大労使関係教授)から。
 以上のような西欧の事例を参照するなら、日本においても、労働組合運動を強めるには、社会的差別から解放を求める「ソーシアル・ジャステス」運動を進める市民団体等との連携・共闘を積極的に進めて、非正規労働者を含めた組合員参加型の労働組合活動に転換する必要がある。
 さらに、日本の労働組合は、平和・戦争、地球環境などの人類的課題、また組合員参加で政治理念と活動課題を明確化し、その実現に向けて、友誼政党との関係強化をはかるなど、労働組合の政治活動についても、日常活動として展開すべき局面にあると指摘できる。

<参考資料>
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 ◇ 非正規労働者に関わる取り組みについて(2021年労使関係調査報告(実態調査))
 ① 過去1年間に使用者側と正社員以外の労働者について話し合いが持たれた組合比率(2021年)
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 ② 団体交渉で話し合われた。
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 ③ 労使協議で話し合われた。
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  以上
 (労働組合運動研究者)

(2023.7.20)
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