【コラム】ザ・障害者(6)
障害者にも「働き方改革」が必要だ!
堀 利和
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雇用促進法の一般就労と支援法の福祉的就労の歴史的位相を検証してみると、なるほど就労形態の今日的多様性、しかしそこにはみごとに能力主義に彩られた輪切りの実態が貫徹されていることに今さら驚く。これほどまでにきめ細やかな「多様」な制度は他国にはみられないであろう。その点について、先ず歴史をふり返ることにする。
1960年に身体障害者雇用促進法が制定され、それに先立ち、戦後まもなく結核患者回復者のためにコロニー授産事業所が設けられ、障害者福祉の分野でもその後、授産事業が進められた。70年代に入ると、雇用促進法は義務化され、一方、小規模作業所が自治体の助成により「生きる場」対策として増えていった。
80年代には身体障害者雇用促進法から障害者雇用促進法へと改正され、その制度の中に特例子会社が設けられた。また、福祉制度の予算措置として福祉工場も誕生した。
2006年以降の自立支援法では、就労移行支援事業、就労継続支援事業A(雇用型)、B(非雇用型)、地域活動支援センター2型(就労系)、あるいは、生活・就業支援事業および就労支援など多岐にわたって施策が展開されている。
それらの諸施策を肯定的に評価すれば、障害者一人ひとりの職業能力とニーズに応じて働く「場」が用意され、「多様」な形態の働き方が進められてきたといえる。それは、自立支援法がもつ政策目的の一つが、福祉から雇用へであるからである。
政策全版を見渡せば、たしかに「多様」な働き方の機会が用意され、能力に応じてステップアップしていくかにみえる。だが、たとえば就労継続Bに通所する障害者が一般就労に移行するということはほとんど皆無に等しい。おそらく万年B型障害者であろう。職業能力に応じて、しかしそれは結果として分けて・分離して、なぜなら政策対象が「障害者」だけに限られた支援になっているためであるため、自ずから固定した「場」にならざるを得ず、本来のソーシャルインクルージョン、コミュニティインクルージョンにはなりえていない。たとえそれらが地域福祉と謳われようとも、私はそれを「地域の缶詰」という。家→送迎→通所施設(支援学校・放課後デイ)→送迎→家、毎日繰り返し。
ここで共同連が提唱・実践している社会的事業所について一言ふれれば、それらと明らかに異なり、障害者を含め社会的に排除された者(ひきこもり、依存症者、刑余者、シングルマザー、ホームレスの人など)を30パーセント以上、そうでない人と共に働く、かつ対等平等にそれぞれ自分らしく働く反能力主義の事業所、しかも、政策対象が「事業所」なのである。
話を元に戻すと、直接雇用の民間企業、特例子会社、就労継続AとB、地域活動支援センターといったように、職業能力別に序列化され、固定化されている。だからこそ、障害者にも、社会的事業所を政策化した「働き方改革」が必要ではないだろうか。国家戦略特区に家計学園でなく、社会的事業所を!
一方、欧州では職業能力の判定が徹底しており、賃金補てん制度を含めた一般雇用か、もしくは福祉サービス制度に明確に区分されている。それだけに、社会的協同組合、社会的企業が政策化され、まさに医学モデルとしての障害者ではなく労働市場から排除された社会モデルとしての者、それらの者を30パーセント以上含む社会的協同組合、社会的企業が存在しているのである。
さらに東アジアに目を転じれば、韓国ではすでに法定化された社会的企業、台北市の庇護工場・社会的企業、フィリピンの労働協同組合などもある。しかも、いずれも雇用促進法があっての上である。
職業能力別に序列化、固定化された働く「場」を克服するためには、障害者にも「働き方改革」が必要ではないのか!
(元参議院議員・共同連代表)
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