【コラム】
あなたの近くの外国人(裏話)(36)

「近く」と「遠く」のコロナの話し②

坪野 和子

 日本では非常事態宣言が解除され、学校も分散登校から通常授業になりました。解除から今まで、仕事に出かけると、その途上で見かける人々が普通ではないと感じることが多くありました。まず目つきが心もとないです。さらに、姿勢が悪い人が増えています。自宅にこもっていて、筋力が低下しビタミンDが不足しているではないのでしょうか? 見知らぬ人だけではなく、知り合いも…。偶然、日本人知人女性を見かけたのですが、あまりの様子で声を掛けることもできませんでした。
 私自身も長距離通勤慣れしていたのですが、長いこと長距離の移動をしていなかったので、疲れを感じています。ですが、姿勢だけはキープしようと、身体を起しながら歩いています。だんだん鼻だしマスク、顎マスクの人を見かける回数が増えました。顔や目線の表情が豊かとはいえない日本人やベトナム人のマスク姿は意外に違和感がなかったのですが、どこか一部が見えると、ああ一応表情があるのね…新たな発見をしました。

◆ 1.「近く」のコロナの話し パキスタン人青年だんだん日本がわかってくる

 「コロナウイルス・私の周辺の外国人は…」32回連載でも触れましたパキスタン人息子? コロナ流行初期には日本人のマスクが不安そうでしたが、日が経つにつれ、マスクをしないと自分が危険だし人目にもつく、絶対にマスクしないで外出してはいけないことがわかってきました。「おかあさん、外出のときはマスクつけてね」…あらら、わかったのね。
 ぼつぼつマスクが出回り始めたころLINEに写真を送信して「おかあさん、マスク見つけた」「良かったわね」「おかあさん、ほしい? 送るよ」「足りているから大丈夫」「足りなくなったら教えてね、送るよ」また「自粛」「休業要請」という言葉はわからないようでしたが、様子が理解できるようになってきたようでした。子どもの頃、学校で銃撃事件にあったとのことで、コロナが銃撃と同じような怖さを感じているのかもしれません。

◆ 2.「遠く」のコロナの話し 母の日と女性リーダー

 毎年「母の日」にはSNSのメッセージで誰かしら「うちの息子」ならぬ「そとの息子」がGIF(動く短い画像)カードを送ってきてくれています。今年は「息子」だけでなく、年齢問わず「男性」から「母の日カード」を送ってきてくれました。コロナロックダウンで仕事がなくて暇があったからでもあるでしょう。ですが、コロナロックダウンで家庭にいて、女性=母親がいかに家族の健康と安全と生活向上を考えているのかが分かったと「男性」たち。代表的なのは、インド教育コーディネーターのサメパルさん。彼は自分のタイムラインに・・・。

  男が管理している国は、最悪。
  ドナルド・トランプ、米国。
  ジャイール・ボルソナロ、ブラジル。
  ウラジミール・プーチン、ロシア。
  ナレンドラ・モディ、インド。
  ボリス・ジョンソン、英国。
  ペドロ・サンチェス、スペイン。
  ジュゼッペ・コンテ、イタリア。

  女性が管理している国。コロナ対策勝利。
  メット・フレデリクセン、デンマーク。
  カトリン・ヤコブスドッティル、アイスランド。
  サンナ・マリン、フィンランド。
  アンジェラ・メルケル、ドイツ。
  ジャシンダ・アーダーン、ニュージーランド。
  エルナ・ソルベルグ、ノルウェー。
  蔡英文、台湾。

   そして、私に「女性は家の掃除、おいしい料理、
   子供の健康と社会的責任の世話をする方法を知っています。
   男性はお金の出所と妻との娯楽しか知りません」

◆ 3.「遠く」のコロナの話し ライブ動画

 台湾で知り合ったインド人シタール奏者ウマ・シャンカールさん。楽器と自身が一体になっているような人です。彼の人柄がそのまま演奏に表れています。優しくて人懐っこい、誰からも愛される人です。コロナロックダウンでロックや昨年流行ったポップスの動画を YOUTUBE や Facebook ページにアップロードしていました。人と会えない寂しさが伝わりました。
 ある日、彼は、みんなの力になれればと、デリーの自宅から自分の古典音楽のソロ・ライブ動画を配信しました。私は彼のため、日本在住のインド人と日本出身者のために、様々なグループと彼のライブ動画を共有しました。あとで気づいてくれて、とても喜んでいたことを伝えてくれました。その後、彼は自分の演奏だけでなく、お友達の演奏を一緒に楽しめるよう「ウォッチパーティー」(自分が鑑賞している動画を友達と共有して観ること)を何回も行っています。おかげで、いろいろなインド音楽を楽しむことができます。
 また最近、「おうちでヨガ」をやる世界の人たちのための演奏もインターネットで配信しました。彼の状況は演奏会ができないし、国外の招聘もキャンセルされて、ありません。ですが、そんなことを苦にするような様子がなく、自分の演奏や音楽を楽しんでもらうことばかり考えているようです。

<ウマ・シャンカールさん UmaShankar Sitar Artist>
  https://www.youtube.com/channel/UCHoQU4RcdPPQ4RTLAlviFOQ/videos
  https://www.facebook.com/UmaShankarSitarArtist/

◆ 4.「遠く」のコロナの話し カネオクレタノム乞食

 ある日、ラジャスタン州の音楽グループの男性からビデオ電話がありました。「はは、ロックダウンで暇だ。あんた無事かい?」そして、暇そうにしているご近所さんが集まって(!)お茶して、ベタベタしたお菓子を同じ皿から取って食べて、また密になってトランプをしている様子を見せてくれました。「ここは大丈夫だ」…そうかなあ? 当時、ジョドプールはワースト5位くらいの感染者数だったのですが(今もワースト10の圏内です)。

 それから2週間後、「ロックダウンで、イベントがない、パーティーがない、年中行事がない、冠婚葬祭がない、金がない。カネオクレタノム」私は慌てて電話を切りました。数日後、また同じ男性から電話がありました。「ロックダウンで、イベントがない、パーティーがない、年中行事がない、冠婚葬祭がない、金がない。カネオクレタノム」「私もお金がない、仕事がない、カネオクレタノム」と言い返しました。「あんたは何をしてほしいの?」「自分で考えなさい」私は電話を切りました。その後、その男性から何度か電話がありましたが無視しています。

 同じラジャスタン州で別の音楽グループの女性がオンラインで有料ダンス講座を始めることにしたと連絡がありました。

 コロナの自粛やロックダウンで、危機・危機感が人間性の奥深いところが露呈してくるものだと感じています。自分は、どんなときもいい人でいられるようにしたい。

 (東京ベイインターナショナルスクール顧問)

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