【コラム】あなたの近くの外国人(裏話)(43)

身近な人たちからジェンダーについて考えた ①テレビ

坪野 和子

 今回から数回シリーズとして私の身近な人々との人間関係を通して、日本や各国のジェンダーについて感じていたこと・感じていること・考えたこと・考えていること・比較を伝えたい。順不同で思いついたことを述べる予定なので、取り留めがなくなるかもしれない。また「です」「ます」から「である」に文体を変えることにした。「です」「ます」が、なんとなく女性言葉の雰囲気の香りが漂うような気がするからだ。

 2月3月、この2カ月間、森喜朗氏の失言でメディアがにぎわっていたが、月が変わって4月、全くその話題には触れられなくなった。テレビをはじめとした大手メディアは、たいていは国民に知られたくない国会の動向を隠すために、誰かをスケープゴートにして、こっそり法案を決めていると、いつも感じるのだが、私の勘違いなのだろうか? しかも、日本の大手メディアの多くは、ある発言や行動に対してオリジナルすべてを公表するのではなく、一部を切り取って、そこをクローズアップして伝えている。だから、私も勘違いした。

 ◆ 0-1.「女性が多いと会議が長い」???

 この部分だけ切り取ると一瞬私も賛成した。なぜなら、専業主婦、パート主婦でもない私がPTA役員をやっていた経験者だからだ。要領を得ていない発言多数で時間がかかっていた。井戸端会議の延長だからたまらなく辛かった。しかもPTAの会合の結論は「前例通り」。あの当時は女性が多いからだと思っていた。
 だが、件の森発言は「女性は競争心が強い」云々を読んで私の共感は一変して変わった。競争心に男女の差を感じたことはない。男女ともにディベート文化がない日本だし、まして強いコミュニケーションのための言語能力の向上という教育を受けていない日本人には、要領の良い自己提案・発言は難しいと感じた。

 インド人の生徒に「日本人って話すのが好きなんですか?」と奇妙な質問をされたことがある。「国際会議で良い議長は日本人を喋らせる、インド人を黙らせる」というジョークがあるくらいなのに…。なんでも、時差があるいくつもの支社の国からのリモート会議に出席していた時、日本人の上司(男性)が会議の時間が終わってもずっと話していたのだと言う。あるあるだ。
 会議の時、独演会をしたがる人。終わってから意見を言い出す人。そんな人たちが気づかずに会議の時間を引き延ばしている。「マイクを持ったら離さない」と言う日本語を教えた。「もとはカラオケでずっと歌っている人を言いました。会議やパーティでずっと話している人にも言います」会議を長引かせているのは女性とは限らない。
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 ◆ 0-2.[蛇足]森喜朗氏…実父に似ている。

 森喜朗氏、実は私の亡くなった父親に、外見の雰囲気や発言などかなり似ている。「女はバカなんだよ。月に一度生理がある。5日間、勉強ができない。集中できない。男と差がつくんだ。男は1年が365日だが女は305日しかない」などと平気で言った記憶が忘れられない。他にもあったが。森喜朗氏が失言する度に実父を思い出し、恥ずかしい気持ちになる。

 ◆ 1.テレビの向こうのカッコいい女性たち(パキスタン)

 パキスタン人友人の家で現地からのインターネットテレビを見ていた。その時、子どもの頃から感じ続けてきた日本でのジェンダーギャップの違和感の意味にふと気づいた。
 この数か月、森喜朗氏の失言および、佐々木宏氏の「豚」を国際的なイベントで使おうとした国際感覚のない、当事者にとって失礼なグループLINEでのメッセージが頭に残っていた。ずっと心の中で引っかかっていたことに紐づけられていったのである。

 マララ・ユスフザイ氏によって「女性差別の国」というイメージを世界に与えられた国。しかし、テレビの中から見えてくる女性たちの姿は日本よりも、もっと女性を人間として尊重しているように感じた。
 国会の予算委員会の中継を見た。何かの福祉の予算の提案をしている女性議員。それに対して討論している男性議員と女性議員。一部を映し出された光景では3人くらい女性議員が続けて並んで座っていた。おばちゃん議員の数が多いことが改めて感じられた。バングラデシュのテレビでもインドのテレビでも同じようなシーンを見た。日本の国会中継では、ポツンポツンと女性が座っている様子しか見たことがない。議員の男女比は日本よりも高いといっても知れている。それでも見た目には大勢の女性が活躍しているように見える。60人の女性枠の割り当てがあるからかもしれない。

・パキスタンの女性議員 http://na.gov.pk/en/mna_list_w2.php?list=women

 ニュース番組における女性キャスターはヒジャブをかぶっておらず、ロングもしくは肩までセミロングの髪のツヤが美しい(着用しているキャスターもいるが少数派・私はまだ彼女たちを番組では見ていない)。美人なだけでなく、博士号を持っていたり、本人もジャーナリストであったり、プロデューサーも兼ねていたりと、かなりカッコいい! 既婚者も多く、配偶者と一緒の写真やお子さんと一緒の写真もインスタグラムなどで見ることができる。
 若手のセクハラの訴えをきいて「いつどこでだれが何を言って何をされたか、完璧なメモを取って正確にキャスター協会に話しをしなさい。男性たちが私たちを助けてくれるから」と10年前にマリア・メモンさんが発言している。彼女は自分自身で綿密な取材をしていることで知られている。彼女のツイッターからもそれがわかる。 https://twitter.com/Maria_Memon

 以下の動画は英語による。

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  Coffee Table | Women in Broadcast Journalism | Episode 200 | Indus News

 CMに出くる女性がまたカッコいい!

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  Coke next. 日本だったら、可愛い女の子がミニスカート履いてアクションかと思う。

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  明治のフォローアップ・ミルクCM。賢母である雰囲気が出ている。

 比較。日本のインターネット広告。

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  ※「母乳代用品の販売流通に関する国際規準」=WHOコードによって粉ミルクの広告には「母乳は大切な栄養」と表記。

 さきほどのコーラのCMで思い出したパキスタンのアニメーション。

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  「ブルカ・アヴェンジャー」英語の説明がある。

 番組で取材されていたベテラン女性アーティスト(YOUTUBEなし)。
 視聴者に媚びることなく、自分のことを話していた。私にとってすべて納得できるものだった。女性に対する尊敬が伝わったからだ。「○○の部屋」とまったく違う。E-TV(NHK教育)のような番組だった。日本の民法でこういう番組を久しく見ていない。

 ◆ 1.なぜ私はテレビを見ないか分かった(日本と比較)

 イメージを優先する日本のテレビ。日本人の明文化されていない潜在的なジェンダーが浮き彫りになっているからだ。
 パキスタンでは女性キャスターを「ブロードキャスト・ジャーナリスト」と呼ぶ。
 日本では…「女子アナ」と呼ぶ。女性キャスターは「報道」するのではない。女優やタレントやモデルや声優が司会進行するだけだ。おそらく、パキスタンの女性キャスターに近いのは、ラジオパーソナリティの小島慶子さんくらいではないだろうか? 地方の放送メディアについては知らないが。

 以下、日本について。
 気象予報士・お天気キャスターが女性だと「お天気おねえちゃん」と呼ぶ。「お兄さん」もいるようだが、どちらもあまり親しみを感じる呼び方ではない。
 ワイドショー・情報番組では、繰り返し繰り返し同じことがコメンテーター変えて報じられ、まるで視聴者を洗脳しようとしているかのようだ。女性アシスタントCMは「いじられキャラ」で、番組を盛り上げる意味しか持たない。またインテリジェンスの高い女性コメンテーターに対して視聴者の共感度が低いとされている。

 コロナでテレビに多く露出していた岡田晴恵さんが気の毒だ。芸能事務所に所属しているのだから仕方ないかもしれないが、キャバクラ嬢みたいと言われるほど無理した姿でテレビ出演したこともあり、視聴者に寄せたつもりだったのだろうが、単に制作の意図を事務所が読み違えたのだろうと思う。こういった番組でなにかやらせや炎上が生じると「女性目線で」と謳っているようだが、男性スタッフが「これなら女性にウケる」とイメージしたことを表現しているだけではないかと。

 ストッキングのCMなら脚を強調した「ミニスカート」は納得するが、基礎化粧品・飲食物・旅行のCMでなぜ「ミニスカート」で女性もしくは女の子が登場する? 作品?によっては、女子高校生が校則違反の制服ミニスカート。
 お菓子などのCMで「女の子」がまるでアニメのキャラクターのような出で立ちで宣伝している姿は、「日本ロリコン文化」を象徴しているようで恥ずかしい。

 健康バラエティー番組でこれがいいと紹介されると、翌日スーパーでは品切れになる。慌てて試さなくてもいいのにと思いながら、空になって「品切れ」と書かれた紙を見る。こんな番組は効果があるという結果を出すための操作を重ねて作られているのに。
 「TVで話題」の商品を買い物かごにどんどん入れていく姿は大抵中高年女性だが、実際に家事をしながら流して見ていて、いや聞いていて、家事に参加しない男性配偶者がテレビを集中して視聴していて、妻さんに、買ってきてほしいとか、一緒に買い物に行って口で指図して買わせている場合もあることを知っている。日本におけるメディアリテラシーの男女差はないと考えている。これもまたディベート文化を作ろうとしない日本の教育政策だろう。

※健康のためのサプリメントのCMでは男女ともに「年より若く見える」を強調されている。基礎化粧品に至っては異常なほど若作りしている女性が愛用者として出演している。
※これは、いずれ台湾との比較で後述したい。

 インド人生徒(会社員・在住9年)に質問された。「日本の高校生は大人っぽいのに、社会人はなぜ子どもっぽい?」彼の質問に日本のジェンダー文化が潜在的に働いているのではないかと感じた。

 続く。

 (東京ベイインターナショナルスクール顧問)
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