【コラム】
酔生夢死

航空機事故でも同盟優先か?

岡田 充


 「いま乗りたくない飛行機は」と聞かれれば、迷わず「米ボーイング737MAX8」と答える。エチオピアで3月10日墜落し157人が死亡する事故を起こした同型機は、昨年10月にもインドネシアでも墜落している。事故は米国の衰退と、日米同盟を金科玉条にする安倍政権の姿をみせつけた。

 事故発生直後の11,12の両日、エチオピア、インドネシアはもちろん中国や欧州連合(EU)など世界約50か国が、同型機の運航停止を相次いで決めた。一方、「航空機の安全秩序の最高権威」とみられてきた米連邦航空局(FAA)は「機体自体は安全に飛行できる」として、13日まで停止措置はとらなかったのだ。
 原因は機体の失速を防止する制御システム上の問題とされる。米連邦捜査局(FBI)は、FAAがボーイング社に出した飛行の安全性などに関する「型式証明」が適切だったかを捜査中。

 興味深いのは、エチオピアが事故機のブラックボックスの米運輸安全委員会への引き渡しを拒否し、フランスが解析することになったこと。運航再開についても、これまではFAAが承認すれば他国もそれに従ってきた。だから「最高権威」と言われてきたのだが、今回は一変した。

 中国や欧州、カナダ航空当局は飛行再開に当たって、FAAの判断に従わず独自の検証を行う方針だ。米中貿易交渉がヤマ場を迎える中、米国航空産業の衰退を印象付ける。中国の航空機需要は今後20年間で、世界の約2割に当たる7500機とされ、中国が安全秩序のリーダーシップをとるきっかけになるかもしれない。

 日本の対応も大問題。石井国土交通相は12日の記者会見で「今後の動向を注視し、適切な措置を講じる」と「ようす眺め」を決めこんだ。全日空グループが同型機を30機発注しているものの、現在は運航していないからか。
 しかし中国、韓国、シンガポールの4航空会社が同型機を運航し、成田など6空港に定期運航している。事故直後に停止措置を出して当然のケースではないか。ところが国交省が、同型機の日本発着と上空飛行停止を決めたのはなんと14日。FAA決定を受けてようやく踏み切ったのだった。

 米同盟国と言っても対応は異なる。カナダ政府はFAAより先に運航停止を決め、同国運輸局者は「いつも(米国と)同じように行動する訳ではない。一定の安全の基準を超える必要がある」と、ロイター通信に語っている。
 先進7か国(G7)では最も対応が遅かった理由は何か。「FAA妄信」? それとも「日米同盟基軸」最優先の「忖度」? 安倍政権は、普天間基地移設や米国が要求する中国通信大手の排除問題でも、日米同盟が絡むと必ず「思考停止」に陥る。航空機の安全問題では同盟を優先してはならない。(了)

画像の説明
  墜落事故機の同型機 737MAX(Wikipedia)

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