■ 自然エネルギーに市民が自ら行動するとき        佐藤 一子

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 1992年にブラジルで開催された地球サミットの翌年に、神奈川県が全国の自治
体に先駆けて「アジェンダ21かながわ」を策定した事に触発され、1993年に女性
5名でソフトエネルギープロジェクトを発足した。同年、神奈川県がエネルギー
プラン、横浜市がエネルギービジョンを策定しており、神奈川県がスウェーデン
1国とほぼ同じエネルギーを消費している事、また、神奈川県は全国でも珍しい
エネルギーの需給バランスの取れている自治体である事を知り、この自給バラン
スを保ち、可能であれば供給を減らし、近隣の都市にエネルギーを供給する自治
体になれないかと考えた。

 しかしその学びの中で、福島等東北の原子力発電の電力が東北では使われずに
関東のエネルギーとして供給してくれている事を知り、なお一層神奈川県内のエ
ネルギー消費を減らす事に尽力したいという思いを強めた。また、横浜市のエネ
ルギービジョンにより、横浜市内には地下鉄の排熱、汚泥処理によるバイオマス
利用、太陽光発電の活用等、都市ならではの未活用エネルギーが多数ある事を知
り、それらの未活用エネルギーの推進が会の大きな目的となった。

 10年に及ぶドイツのNGO、大学教授、緑の党、教育委員会等との交流や視察で
子どもの家庭、保育園、学校等での体験型の環境学習の大切さを知り、県下の幼
稚園・保育園・私立高校等に太陽光発電を設置し、2004年からは、かながわボラ
ンタリー活動推進基金事業として県との協働により、県立高校4校、小田原市・
横須賀市・平塚市の小学校3校に、さらに横浜市との連携により、市や区の関係
施設2か所、合計9か所に太陽光発電を設置し、子どもたちや市民の自然エネル
ギー・省エネルギーの推進拠点としてきた。

 また、神奈川県内の学校の授業、自治体等のイベント等への参加によるPRや、
個人住宅へのアドバイス等に力を入れてきたが、この20年の間に、太陽光発電や
省エネルギーに対して市民の意識が少しずつ変わってきた事をひしひしと感じて
いる。もともと、日本のエネルギー自給率はわずか4%しかなく、地球温暖化の影
響等により、今後世界的にエネルギー・水・食料の奪い合いが始まるだろうと言
われている。

 エネルギー自給率向上、そして省エネルギーは日本の重要課題であるのだが、
市民には、エネルギー・電力の削減は見えづらく難しいテーマとなっていた感が
ある。しかし3月11日を境にエネルギー問題、電力の問題が一気に市民や企業の
重要課題となった。

 大手企業は15%削減が義務づけられ、15%を超えると1時間100万円の罰金が科
せられる。電力が何とか足りているのは企業の努力に負うところが大きい。もう
一つの課題は、電力不足が加速する国内の企業の空洞化である。未来を生きてい
く子どもたちの事を思うと、働く場、国内企業の充実はとても重要なテーマであ
る。戸建住宅やマンション、学校等の電力は太陽光発電や省電力でなるべく自立
をし、少しでも電力不足を補い企業の使う電力の確保を進め国内産業の促進を図
る必要がある。

 上記の様な視点から、黒岩神奈川県知事が推奨している個人住宅への太陽光発
電設置を是非実現していたただきたいと願う。個人住宅にも発電量総量買い取り
が適用されて、その買い取り分でリース会社、銀行等に支払いをしていく事によ
り、個人住宅への大量設置が推進される事になるが、今のところ個人住宅の総量
買い取りは適用されないようであるが、4kwを設置した場合、今の補助制度でも
設置宅の省エネにより、売電を増やし、10年で設置費用の元が取れる試算もあ
る。8月26日再生エネルギー法が国会で成立した。

 この法律は、24年7月に施行され、太陽光以外の風力発電、バイオマス、水力
等のエネルギーも発電量総量の買取が実施される。その買取価格設定について
は、第三者委員会が設置され、そこの意見も尊重される。また、この総量買取費
用は、市民・企業の電気代に上乗せされるが、エネルギー大量消費企業、中小企
業・低所得者に対しては加重とならない様な配慮もされる。

 既に設置されている学校等の蓄電機能も避難所の役割を考えると必要である
が、いずれにしても、神奈川から都市部で活用できる太陽光発電の推進に期待
し、また最大努力もしていきたい。東日本大震災で多数の方が亡くなられたが、
その尊い犠牲に報いるためにも、今私たちはどの様な暮らしを進め、そして未来
の子供たちに何を残すのか。国や自治体に任せるだけではなく、市民自ら行動す
る時代と言えよう。
             (筆者はNPO法人ソフトエネルギープロジェクト理事長)

注 この原稿は『参加システム』9月号に掲載されたものに加筆して頂いたもの
です。

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