【編集後記】 

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◎折角、国民の手で誕生した新政権だが、政権運営に不慣れとはいえ如何にもも
たついている。これは内閣支持率の急速な低下にも現れているが、その主因は驚
くほどルーズな鳩山・小沢両氏の金銭感覚・政治資金管理能力である。この二人
には国民があれほど忌避した古い自民党的体質そのものが残っているからだろう
が、再び自民党政治に戻りたくない私たちはこの二人が主導する新政権をどのよ
うに考えるのか。オルタ73号の久保孝雄氏の『「平成維新」の成就をめざして』
に引き続き、『「小鳩政治」を変えられない不幸』として元朝日新聞政治部長の
羽原清雅氏に、また公害問題研究会代表として各地の市民運動家とネットワーク
をもつ仲井富氏に『民意でなく小沢忖度では民主党に未来はない』と民主党政権
を鋭く論じていただいた。

◎北海道大学名誉教授でNPO法人「ロシア極東研究所」を主宰される望月喜市
氏からはマスコミが殆ど報道しなかった09年12月27日の岡田外相訪ソについて『
岡田外相訪ソの成果に注目する』との報告を頂戴した。

◎おびただしい検察のリークによる小沢叩き、執拗な八つ場ダム事業継続要望、
そして日米同盟崩壊の危機を煽る日米合意履行要求など、マスコミの新政権叩き
には違和感をもつが特に沖縄関連報道はひどい。たとえば中央各紙は昨年12月21
日米国務省が駐米藤崎大使を「呼びだし」日米合意の履行を求めたと報じたが「
大使のほうが立ち寄った」と国務省HPで否定された。このようにもっぱら「ア
メリカの意向」を創りだすものだが、この「誤訳」はインターネット上で的確に
指摘されている。また逆に伊波宜野湾市長や社民党が普天間基地のグアム移転、
日米地位協定の改定などを訴えても東京新聞を除き各メデイアは殆どその可能性
を検証しない。《これらの記事や「誤訳」の指摘は日米対比のサイト
http://peacephilosophy.blogspot.com/ )で読める》
 
吉田健正氏はオルタの71・72・73号でグアム移転、日米地位協定の改定を強く

えられたが、これらについて『沖縄の海兵隊はグアムに行く―米軍のグアム統合
計画―』(高文研刊・1200円)を緊急に出版された。この号では、これが広く読
まれることを願い紹介文を載せた。
 
◎2月1日東工大の田町キャンパスで第5回公共哲学カフエが開かれ、国際基督教
大学千葉真教授の著書『「未完の革命」としての平和憲法』―立憲主義思想から
考える―の研究会があった。千葉教授は「活憲」の立場から積極的に市民による
平和活動にも参加される憲法学者で、オルタは3月号でこの本の書評を載せる予
定である。
 
◎2月12日ソシアルアジア研究会で千葉大学名誉教授中村光男氏の『イスラーム
と民主主義:インドネシアにおける展望』という報告があり、新聞報道では知る
ことの出来ないインドネシア社会の実相について学んだ。ちなみに中村氏はかっ
て学生運動の指導者として安保闘争を闘かわれたあと、米国での長い研究生活の
あと日本の教壇に立たれたインドネシア研究の第一人者である。

◎【お祝い】このほど毎号オルタに俳句を寄せられているオルタ共同代表で俳誌
「渋柿」同人代表の富田昌宏さんが傘寿を機に句集『千寿万寿』を上梓された。
地元の下野新聞も大きく報じたが、私たちも心から祝意を表し、俳句の世界での
精進を大いに期待したい。

◎【訃報】オルタ執筆者の兵庫県立大学吉田勝次教授がガンのため2月14日逝
去された。吉田教授はソビット体制・ロシア政治・台湾民主党などについて多く
の研究書をもつ国際政治学者だが、同時に非常にエネルギッシュな社会活動家で
もあった。また、ガンに侵されてからも闘病記を出版されるなど生涯を通して私
たちに生きることの尊さを教えつづけられた。オルタにも度々ご寄稿いただいた
ことを改めて感謝し謹んで哀悼の意を表します。

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