【編集後記】 

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○4月8日の投票で地方選挙前半が終わり、注目の東京都知事選は残念ながら
石原知事の三選となった。「オルタ」としては都知事選について生活クラブ生
協関連のシンクタンク市民セクター政策機構編集長米倉克良氏に、神奈川県
知事選は市民運動家で元横浜市会議員の皆川昭一氏に、北海道知事選につい
ては元旭川大学講師の南忠男氏に緊急にコメントしていただいた。短い文脈
のなかにも、それぞれの地域における政治状況が活写されている。   

○「オルタ」39号の王鉄橋教授の『花から見た日中の文化比較』には多くの反響
があった。この号では国内の今井正敏さんと中国在住の佐藤美和子さんからの
寄稿を「オルタのこだま」で紹介したが、引用された唐詩をめぐり河南省の王
先生と大阪の西村先生との文学対話が生まれるなど早速、「オルタ」を介したネ
ットでの日中知識人の交流が始まった。さらに日中関係では、去る3月2日に
オルタの執筆者を中心に開らかれた「オルタ新春の集い」で、日本留学の経験
を生かし在日中国人の立場からユニークな活動を活発に展開する段躍中氏の講
演があったが、その記録を載せ全国の読者にお伝えすることにした。

○日中関係といえば来日した温家宝首相は両国の2000年にわたる交流の歴史
を説いたが、韓国と日本もまた深く長い歴史を共有している。このほど、そ
の歴史を両国共同の作業で一つの教材にまとめるという大変難しいが待望の
事業が完成した。その意義と経緯そしてこれについての両国のマスコミの対
応などについて、この実務を担われた明石書店編集部朽見太朗氏の報告と、
韓国全南科学大学教授金正勲教授からは、さきにオルタ出版室が刊行した『海
峡の両側から靖国を考える』の韓国語訳に取り組む動機について率直な気持
ちを述べていただいた。これらの出版物で日韓の相互理解が一歩でも進むこ
とを期待したい。

○“日本版ネオコン路線”とでも言うような『戦後レジユームの破壊を目指す』
とかいう怪しげなスローガンを掲げて突っ走る安倍首相は国民投票法を強行
採決した。
私たちは、いよいよ九条改悪阻止のためにあらゆる力を合わせたい。今月の
「オルタのこだま」にはオルタの読者が中心になって活動している三重県の
津市と栃木県大平山麓の二つの「九条の会」からの報告を載せた。

○吉田勝次教授の短期連載「ガン闘病記」はいろいろな方の感動を呼んでいる
が力石定一先生からは「ガンと闘う一般的な治療方法に対するオルタナテー
ブとして興味深く読んでいるがメールマガジン「オルタ」(=オルタナテーブ)
は文字通りガンだけでなく他の病気にたいするオルタナテーブの療法を紹介
する常設欄を作ったらどうか」という
 提案があり、編集部としてもガン以外にも障害者や認知症の家族を抱えてお
られる方々の励みになる企画を考えていきたい。

○先月、ワシントンポスト紙が安倍首相の慰安婦問題についての姿勢を批判す
る社説を載せると、日本政府はあわてて河野談話の継承を表明するというド
タバタ劇があった。
「オルタ」としてはこの社説全文を資料として読者に紹介することを企画し、
西村徹先生や初岡昌一郎先生とご相談したが著作権問題のクリヤーに時間が
なく断念した。しかし世界の主要論調に窓を開く編集企画は今後とも課題と
していきたい。

○先日、60年安保の前後、『構造改革』路線提起のために共に戦った貴島正
道氏の卆寿の会に招かれた。会は東チモール独立運動を支えた若い人たちが
主催した楽しいもので、生まれたばかりの若い国、東チモールの駐日大使も
心のこもったお祝いを述べられていた。嬉しかったのは久し振りに元気な貴
島氏に会えたのと、彼が東チモール独立運動の支援者・恩人として島民や日
本人活動家から敬愛されているのを知ったことだった。
彼は戦時中日本陸軍の経理将校としてチモール島に駐屯したのが縁で、長い
間東チモール独立運動を支援し、困難だった独立の達成に貢献した稀有な日
本人であったのである。最近の東チモール情勢は大統領選挙をめぐる深刻な
紛争など心配であるが、私たちは独立国東チモールの国創りが着々と前進す
るよう心から願わずにはいられない。

○4月1日・2日マルクス主義の理論家・革命家として名高いローザルクセン
ブルグの国際シンポジュームが中央大学記念館であった。河上民雄先生からご
案内を頂き、昔、彼女の社会主義における民主主主義の高い評価に強い関心を
持ったことがあったので出席した。国際会議らしくヨーロッパ・南米・インド・
中国など外国からの参加者が国内のメンバーを上回るほどであったが、「グロー
バリゼーションと資本主義の未来」というタイトルの割には伝統的なマルクス
主義からの報告が多く特筆するような新しい問題提起は少なかったたように思
う。むしろコメンテーターとして一橋大学加藤哲郎教授(アクセス数13万を誇
るネットカレッジ主宰)が『世界を一瞬に結ぶネット民主主義の時代にローザ
の民主主義論をどう考えるかという視点が欠け、議論の角度が古すぎる』と総
括されていたのが印象的であった。

○今月号では緊急特集「統一地方選挙前半を振り返る」があったため連載中の
「回想のライブラリー」(19)および「人と思想」(5)を休載し次号に繰り
延べさせて頂きましたが、著者・読者のご了解をお願いするとともに、先月
号では久保孝雄氏の巻頭論文『アメリカ覇権の終焉と岐路に立つ日本』のタ
イトルで「岐路」を「枝路」と誤り、さらに『危険な独身女性、フエミの嫌
いな殿方』という堀内真由美さんの玉稿を最終版での転載ミスで掲載せず、
また先月、編集部加藤のPCが完全にパンクし、一部の読者には送信不能に
なるなどのご迷惑をおかけしました。ここに執筆者および読者に重なる不手
際を深くお詫び致します。(加藤宣幸記)