【編集後記】

加藤 宣幸


◎1月25日東京・学士会館で、オランダから教育・社会研究者のリヒテルズ直子さん、長野県から佐久大学理事長の盛岡正博さん、元NHKプロジューサーで映画監督の河邑厚徳さん、小児科医で衆議院議員の阿部知子さんをゲストスピーカーに迎え、オルタ新年懇親会があった。出席者には元有人宇宙システム主幹技師・自然食研究家で女性猟師・建築デザイナー・弁護士・民芸運動アーカイブ制作者・元銀行家・生協幹部・作家・出版社社長・医師・元大学教授・ジャーナリスト・元大手映画会社経営幹部・中小企業経営者・元TV解説者など異色・多彩なメンバーが多数参加し盛り上がった。この会を呼び掛けたメールマガジンオルタは、今年3月に創刊13年で配信数毎月約15,000通。ホームページのビジター数は毎月約29,000人という、ささやかなものだが、イラク戦争の不条理に市民の声を上げようというのが創刊趣旨だから、当日は同人誌のように仲間うちだけの自己満足に終わらず、一人でも多くの人に平和の大切さを伝えようとする志を参加者が共有できて嬉しかった。

◎アメリカ大統領選挙で「偽(フェイク)ニュース」を流し、相手を攻撃する手口は全世界に「ポスト真実」(Post truth:客観的事実よりも人々の感情や主観の方が世論の形成に大きな役割を果たす政治状況)という言葉を瞬くまに広めたが、同時に利益至上主義の既成メディアとこれに飽き足らない新興ネットメデイア(SNS)との相克という側面も見せた。今はSNSを使えば誰もがニュース発信者だ。しかもやりようによっては広告収入まで稼げる。真偽混ざりあった情報が一瞬に世界を駆け巡る。(本号・石郷岡論文参照)。日本でもヘイトスピーチ・嫌韓・嫌中の虚実情報がネットに溢れる。この情報空間でオルタは愚直にも原則として実名主義を貫き、長文でも質の高い論考に注力したが、率直にいって長い文章を読まない若年層や政治的無関心層への浸透力は弱い。

◎トランプ政治は早くもアレコレと混乱を引き起こしている。その本質的な評価にはもう少し時間をかけたいが、彼の出現がアメリカ一極支配時代の終わりを早めたのは確かだ。日本でも安倍政治は、戦後70年の不戦の時代から次の戦争が出来る時代へ着々と手を打っている。彼らは間もなく改憲国民投票を仕掛けてくる。こちら側にどのような準備があるのか。私たちがこの大きな流れにあらがうには今までの発想や活動のスタイルを大胆に変えたい。「オルタ」も13年続けた活動の殻をどう脱皮するか。いま自己革新が問われる。

◎最近、ビデオジャーナリストとして活躍する澤口佳代さんから、日本の市民WEBメデイアの現状について貴重なレクチャーを受けた。彼女によれば、市民メデイアの YouTube 登録者を分析すると、リベラル系メディアは数こそ約25だが最も多いのはビデオニュース31,897で、その他合わせても74,294に過ぎない。これに比べて非リベラル(右系)は KAZUYA Channel 36,2701など合計388,439と圧倒的に非リベラル系が強いという。

◎私達はこのデータを見て、幅ひろく国民各層に訴えるには、長文論考中心のオルタの充実とは別に動画など映像を軸にした新しいニュースメディアが創出できないか検討に入った。是非広く皆様のお知恵とお力を頂きたい。

◎1月は定期的にご寄稿頂いているオランダのリヒテルズ直子さんと中国の今村隆一さんが一時帰国されたので、最新の現地情報をお聞きした。昨秋、オルタはフランスから鈴木宏昌さん、アメリカから武田尚子さんを東京にお迎えしたが、これら素晴らしい執筆者の方々にあらためて感謝申し上げたい。
【訃報】2月3日、翻訳家でオルタ編集委員武田尚子さんのご夫君デヴィド・ヤリンさんがニュージャージー州の自宅で亡くなられました。謹んで哀悼の意を表します。

【日誌】1月21日:自宅・矢野凱也偲ぶ会打ち合わせ会。6人。22日:自宅・オルタ懇親会打ち合わせ会4人。25日:学士会館・オルタ懇親会・リヒテルズ直子・盛岡正博・河邑厚徳・阿部知子ほか35人。27日:九段・ソシアルアジア研究会・「トランプ現象が意味するもの」JILPT主任調査員・山崎憲。連合会館・「トランプの登場とアメリカの行方」桂木行人・白井聰・北岡和義・三上治。30日:自宅・新メディア検討会・河邑厚徳・澤口佳代・白井和宏・野沢汎雄・荒木重雄・佐藤智登世。31日:学士会館・今村隆一。千代田図書館・「検閲官」。

2月1日:飯田橋・仲井富。2日:九段事務所・白井・澤口。3日:自宅・野沢。4日:荻窪・苫米地雄三通夜。6日:医科歯科大検診。映画「スノーデン」。9日:飯田橋・加藤好一・白井和宏。12日:神保町・木村寛。自宅・藤田裕喜。13日:自宅・新メディア検討会。14日:飯田橋・仲井富。議員会館・プログレス研究会。16日:仏教に親しむ会・竹中・浜谷・山田。


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