【編集後記】

加藤 宣幸


◎安倍政権は5月15日安保法制関連法案を国会に提出したが法案の総称を「平和法案」とすることなどで早速もめている。この内閣は歴代政権に比べても小手先政治をやり、詭弁を弄し、あろうことか首相自ら答弁席からヤジを飛ばすという品位のない政権だから、集団自衛権行使法案を「平和」法案と詐称するぐらいは朝飯前だ。戦中の国民は「満蒙は帝国の生命線・東洋平和のためならば」と歌わされて侵略戦争に突込まされた。今の状況はどうか。

◎原発・安保・改憲・沖縄などの重要政策で国民の反対意見が多数なのに政権支持率が高いのはなぜか。景気浮揚を期待する国民に金融緩和や株高などで政権のイメージ操作を成功させ、マスメデイアは劣化し批判力を無くしているからだ。状況は戦中と似てきたが、私たちは決して愚行を繰り返してはなるまい。

◎政治は言葉で人々を動かすというが、先頃ようやく行われた翁長沖縄県知事と菅官房長官、安倍首相との会見あるいは県民集会などでの翁長氏の発言は、空疎な安倍首相の言葉と違って国民の胸を打った。(知事・総理大臣会見発言要旨・オルタ136号に掲載)「自治を否定するキャラウェイの発言に重なる」「粛々は上からの目線」「沖縄の基地は銃剣とブルドーザーで取り上げたものだ」「沖縄は平和の中で万国津梁の精神で世界の架け橋になり、日本のフロントランナーになる」「誇りある豊かさを求める」などなどは日米安保条約を尊重する保守政治家翁長の発言である。これらには近頃の日本の政治家にはない言葉の重みがある。
安倍首相は翁長知事の説得力を警戒し、会談冒頭公開の約束時間を破って非公開にする暴挙に出た。これこそ政権側が恥部を隠そうとする醜い姿だ。

◎オルタはささやかな市民WEBメディアだが、沖縄の辺野古反基地闘争に連帯するため毎号の巻頭に【沖縄の地鳴り】欄を置き、マスコミが伝えない沖縄現地の息吹を広め、逆に本土の市民連帯活動を沖縄の人々に伝えたいと念じている。オルタでも掲載している〔辺野古基金〕はすで2億1千万円が集まり、その70%が本土からだというから、連帯意識が高まってきたのだ。

◎中国を包囲すると呼号して金をばら撒き、「地球儀外交」と称して飛び回り原発と新幹線を売り歩いたが、ふたを開ければAIIB(アジア・インフラ投資銀行)で日米だけが孤立する始末だ。AIIBほど安倍外交の失敗を表徴するものはない。西側諸国をふくめ、世界から日本の対米追従ぶりが失笑されている。これについて、日中の研究機関に属しTVなどにもよく出る凌星光氏と民主党の論客として注目される篠原孝衆院議員の明快な発言を載せた。

◎ウクライナ問題は西側とロシア側の言い分があまりにも食い違って分かり難い。冷静なロシア分析で各界から評価の高い元毎日新聞特別編集委員・石郷岡建氏に問題点についての視点を、そして域内市場統合を目指すASEANに注目が集まる中、タイを拠点に域内からインドまで縦横に取材活動をするアジア・ジャーナリスト松田健氏には生々しい現地の息吹を伝えて頂いた。

◎【追悼】5月6日、政治学者・法政大学名誉教授松下圭一先生が亡くなられた。縁のあった久保孝雄・初岡昌一郎・浜谷淳・山田高各氏の追悼の辞をいただき加藤宣幸も追想を記した。

◎【日誌】4月23日・経産省前・反原発座り込みテント荒木・加藤。24日・飯田橋・小林吉雄。28日・本郷・東洋学園大・「アジア共同体の展開」・鄭俊珅。29日・学士会館・大森暢之偲ぶ会。30日神保町・唐笠一雄・篠原令。

5月1日・自宅・浜谷淳。6日・自宅・仲井富。九段下・渡辺文学・小枝みえ子。8日・教育会館・ソシアルアジア研究会・横田耕一九大名誉教授・「日本国憲法と天皇制」。10日・下北沢・ARIC設立記念シンポ・日本のレイシズムをどう「見える」ようにするのか・金明秀関西大学教授・明戸隆浩関東学院大学講師。夜・新宿・会食・竹中一雄。11日・医科歯科大・検診。12日・東洋学園大・「日中国交正常化から見る問題克服の東洋的知恵」・呉寄南上海日本研究学会長。夜・学士会館・北東アジア動態研究会・「沖縄から日中経済交流を構想する」・泉川友樹国貿促。13日~15日・松坂市・社会党青年部OB会。18日・衆院第二会館・「専守防衛と自衛隊の役割」・柳沢協二他。19日・東洋学園大・「日中摩擦の8割は誤解による―「共同知」構築はまず相互理解から―」麗澤大特任教授三猪正道。夜・議員会館・プログレス研究会。

■【今月のオルタ動画案内】
  YouTube配信 http://www.youtube.com/user/altermagazine

◎仏教に親しむシリーズ      荒木 重雄(元桜美林大学教授)
◎「日中国交正常化から見る問題克服の東洋的知恵」   呉 寄南


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