【沖縄の地鳴り】
米国大統領選その後
米国の大統領選は民主党のバイデン氏が勝利し、トランプ大統領の負けが確実となった。だが、トランプ大統領は選挙に「不正がある」と異議を唱え、敗北を認めないまま開票から1週間余が経った。バイデン氏は“勝利宣言”したものの、混乱はなお続いている(11月11日現在)。
大統領選で結果を巡る混乱は過去何回かあったといい、珍しくはない。しかし、今回はかなり長期化しそうである。トランプ大統領の異議申し立ては、郵便投票、開票機械、監視員立ち合いなど多岐に及び、いくつかの州を問題視している。支持者にも訴え出るよう呼び掛けていて、共和党内にも訴訟を後押しする人たちがいる。敗北宣言は遠のいてしまった。
だが、訴えを棄却した州裁判所もあり、異議申し立てが勝敗を決する核心的な問題かどうか、疑問なしとしない。得票数や選挙人の数を引っくり返すほどの判決を取れるのか、“次の手”を考える時間稼ぎと見られても仕方がない。
4年後の大統領選に出馬するかも、という深読みの声も出るほど、トランプ大統領の総得票数はかなりのものであった。7,100万票はバイデン氏の7,400万票には及ばないものの、本人が自慢する票であった。この票に自信を得て、まだ大統領であり、いろいろ策を弄するのかも知れない。支持者に直接訴える集会を開き、気勢を上げ、バイデン支持者と衝突する恐れもある。
トランプ陣営の選挙戦終盤の勢いは相当なものであった。テレビから伝わる熱気はバイデン優位の世論調査を覆す盛り上がりであり、「ひょっとして逆転か」と思ったものである。攻撃性を帯びた支持者の熱狂は、コロナ対策で穏やかなバイデン陣営の集会を圧倒していた。トランプでなければ夜も日も明けないといった大きな塊(かたまり)であり、激戦州は文字通りの僅差となった。
どうしてトランプなのか。沖縄から米国西部に渡った知人の女性は「沖縄関係の婦人メンバーはほとんどがトランプ。私一人が別だった」と4年前を振り返り、その傾向は今回も変わってないという。沖縄から渡米した婦人たちはトランプ大統領の移民への強い姿勢を支持しているのだという。夫が米国人である婦人たちは当然ながら正式な米国籍を持って生活しており、そうでない移民者への微妙な心理が働いている、と彼女は見ている。
「アメリカファースト」のトランプ大統領は貧しい白人層の熱烈な支持を集めていると評されるが、必ずしも白人だけでなく、階層や人種などの中にある微妙な違いを実感する人たちにも食い込んでいるようだ。「隠れトランプ」は少なくないかも知れない。
とは言っても、新春はバイデン大統領の登場である。ハリス副大統領の人気もあってバイデン政権への注目度は高くなる。沖縄も「辺野古」問題など新政権の政策に関心を深めることになる。バイデン氏はオバマ政権下で辺野古移設を推進してきた人物の一人といわれるが、玉城デニー知事は基地問題について対話できる関係構築を目指しており、民主党などを通じての新政権との接触が課題だ。
トランプ大統領の型破りな政策変更に「あるいは沖縄基地の返還もありか」と淡い期待を寄せた時期もあったが、結局動かぬまま。新政権に対し地味であっても粘り強くプッシュするしかあるまい。それが道を開く力になるのだと思う。その都度訴え、沖縄を意識させる行動が必要である。
(元新聞記者)
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