【沖縄の地鳴り】

猛威続くコロナ―沖縄県の場合

平良 知二

 新型コロナウイルスの感染が衰えない。東京、大阪などへの非常事態宣言が延長され、変異株が急速に広がっている。東京オリンピックの開催は瀬戸際に立たされ、大阪の医療体制は崩壊寸前(すでに崩壊か)。頼みのワクチンの見通しもまだ不透明――テレビ、新聞で連日、情勢悪化を知らされ、社会全体がシーンと静まり返ったようである。
 沖縄も例外ではない。それどころか、全国各地と比較して最大の感染地帯に陥っていると言っていい。深刻な状況が続いている。

 感染者数を調べてみた(10日現在)。5月に入ってからの10日間は沖縄の感染者は1日当たり66人(小数点は切り捨て)。九州では福岡377人に次ぐ2番目の数で、熊本65人、大分61人が続く。このところ九州各県は感染者が急増しており(特に福岡は増加が著しい)、沖縄のダントツぶりはやや薄らいだ感がするが、1日と9日の感染者は100人を超えている(記録外だが11日も132人の感染者)。

 今年の感染者は1月が2,126人(1月1日のみ数に入っていない)、2月643人、3月1,290人、4月2,981人で、5月は10日まで668人。全国比較で上位に位置する。
 ちなみに昨年春以降これまで(5月10日まで)の沖縄の累計感染者は1万3,129人。1万人を超えたのは東京14万7,167人を筆頭に11都道府県あり、沖縄はその11番目である。九州では福岡県に次ぐ。人口比ならもっと上位にいき、1、2位を争うであろう。

 特に4月の数は異常であった。1カ月2,981人は1日当たり何と99人。ほぼ100人である。調べると100人超の日数が14日間もあった。月の半分は3ケタの感染者が出ている。東北各県や、1年間の累計で感染者が400人前後でしかない鳥取、島根両県と比較するのがはばかられる。県の総人口が違うとはいえ、鳥取、島根両県の1年分を4日間で積み上げてしまったとなれば、笑い話にもならない。
 観光地であり、一定の人流(最近はやりの言葉)はやむを得ないという見方があるにしても、上の数値は普通ではないはずだ。

 沖縄の人口密度は首都圏並みだという捉え方もあり、総人口だけで比較するのもどうかと分析する人もいるだろう。確かに本島中南部は狭い面積に人家が密、と言える。それにしても感染者がとにかく多すぎる。

 玉城県政の取り組みに問題はなかったか。先日、家族でバーベキューしたことを自分でツイートし、県民の批判を浴びた玉城知事だが、その件は大目に見るとして、コロナ対策のリーダーシップが弱いように感じる。「まん延防止等重点措置」地域に指定されたのも、政府の督促があったからと言われている。
 主な都府県では知事自ら「非常事態」「まん延防止」への指定を政府に迫ってきたのに、玉城知事はおとなし過ぎるように思う。今年に入ってからの数字を見れば、躊躇する理由はなかったはずだが、はた目には渋っているように映った。

 観光業界をはじめとする経済界の苦境があり、支援要請に応えたい気持ちは分かる。しかし、例えばゴールデンウイークの時など、沖縄の深刻なコロナ禍の実情を訴え、観光来県はできるだけ控えてほしいというメッセージは出せたのではないか。東京都の小池知事が「東京には来ないでほしい」と強く言い切る姿が印象に残ってしまった。
 ある調査ではゴールデンウイーク中の航空客は全国で沖縄線が一番多かったという。那覇の国際通りは確かに観光客が目立った。各地でレンタカーも少なくなかった。外国には行けないので沖縄へ、となったようだ。特別の拒否サインが沖縄からなかったのである。

その影響はこれから現れる。4月のような1日に100人を超える感染爆発が心配される。感染力が強いといわれる変異株が主流になりつつあり、決して杞憂ではない。沖縄はまだまだ“戦闘状態”にある。ワクチン接種を急ぐ体制を構築するなど、根本的な対策を考える必要があろう(ワクチン接種済みの人数は九州8県のうちで最も少ない)。

 (元沖縄タイムス編集局長)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最新号トップ掲載号トップ直前のページへ戻るページのトップバックナンバー執筆者一覧