【コラム】酔生夢死

沖縄対話で深まる日中理解

岡田 充

 「台湾有事は日本有事」「(中国と)戦う覚悟を」 首相経験者が中国の脅威と台湾有事を公然と煽る中、沖縄の那覇で9月9日、中国学者2人を招いて沖縄識者4人と対話と議論を交わすシンポジウムが開かれ、筆者はその司会を務めた。
 主催は岡本厚・元岩波書店社長らが呼びかけた「『台湾有事』を起こさせない・沖縄対話プロジェクト」と沖縄タイムス社。土曜の午後にもかかわらず170名の聴衆とオンライン参加約300名が4時間にわたって議論に参加した。
 初めに宮本雄二元駐中国大使が基調講演。日本で軍事力による抑止力強化ばかりが重視されている現状について「外交の視点が欠落」と批判、日本は米中の意思疎通の「潤滑油」になれと提言し、「一つの中国」の枠組みの堅持を呼びかけた。
 続いて呉寄南・上海市日本学会名誉会長が、中国は武力統一を最終目標にしたことはなく、追求しているのは平和統一であり、「台湾有事を誇張するのは歪曲」と有事論を批判。上海国際問題研究院の厳安林・学術委員会主任も、「台湾有事は日本有事」とする安倍晋三発言を「米国覇権の利益に合致する」発言であり、米国は日本を中国攻撃の「駒」にし、沖縄を米覇権の「スケープゴート」(いけにえ)にしようとしていると批判した。
 両氏とも「中国と台湾は一つの中国に属し、台湾問題は中国の内政問題」と強調、日米両国が中国との間で「内政干渉はしない」と誓約していると強調した。
 二人の講演に対し、会場とオンライン視聴者から「台湾人は統一を望んでいないのだから中国の内政問題ではない」「台湾を統一すれば香港同様、民主主義を抑圧するのでは」「台湾の将来は台湾の人々が決めること」など、率直な疑問が寄せられことを紹介し、中国側学者もこれに誠実に答えたと思う。
 ところが日本の経済誌に勤めるある台湾出身記者は、わざわざシンポに参加した後SNSに、「1分おきに嘘が一つ混じっている」と、誹謗中傷する書き込みをした。「ウソ」とは聞き捨てならない。「何が嘘なのか」、計4時間で「240回分のウソ」を具体的に挙げるよう要求する。
 この記者はある月刊誌の対談で、「本音を言えば独立したいわけ」と公言するギトギトの独立派。そして彼は、筆者が議論の前後に「台湾問題は中国の内政問題と思うか」と、会場参加者に質問したことを「中国の言い分を同意するかまで確認していた」と書いた。
 会場の反応を知りたいのは筆者だけではあるまい。この質問になんと7~8割が挙手したのだった。4時間に及ぶ対話で、「一つの中国」と「台湾問題は中国の内政」に対する認識がいかに深まったか、彼にとっては「不都合な真実」でしかなかったようだ。これこそが対話の成果と醍醐味と自負している。(了)

画像の説明
 シンポを1面で報じる沖縄タイムス(9月10日付朝刊)

(2023.9.20)
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