【旅と人と】

母と息子のインド・ブータン「コア」な旅(25・最終回)

坪野 和子


◆帰国ではなく、まるで旅行のような帰路の飛行機旅

 この連載は今回で最後です。連載のまとめとして、音楽(世界の愛のかけあい歌)と、この連載の内容を息子の視点で撮影したミニドキュメンタリー上映でおしゃべりするイベントを企画しております。美味しいチベット&ブータン料理も楽しんでいただきたいのです。このイベントのための特別裏メニューも考えております。
 —————————————————————————————————————
 日 時:2016年11月13日(日)18時開場 18時半開演
 場 所:チベットレストラン「タシデレ」03-6457-7255 都営新宿線曙橋A4下車
 参加費:¥3000(お食事+お茶)アルコール別途 ※受付でお申し付けください
  ※ハラル・ヴェジタリアンの方は参加表明の時お伝えください
 お問い合わせ・参加表明:坪野まで amalags@aol.com (自主企画用)
 —————————————————————————————————————

=================================
1. パロ ---世界一危険で世界一美しいといわれる空港…そして---
=================================
 ブータン滞在中のホームステイやガイドさんの奥様の美味しい手料理については割愛し、帰国当日の話から入る。いよいよブータンを去る。今回の旅行地であるダージリンもブータンも初めての地だった。初めてのはずだったが、私にとってはまるで帰省のような気分だった。しかし、最後の最後でやっぱりチベットと違うなと思ったことがあった。空港に到着してカターというスカーフのようなお別れやお祝いで首にかける布をもらえなかったことだ。周囲のブータン人の様子を見てもカターを首にかけている人はいなかった。…なんだか寂しいけれど、やっぱりブータン人は合理的だなとチベット人との違いを確認した。

 スタンプをついて、とても美しい建物内部を楽しんだ。トイレ?? あれ?? 一度国境を出たことになっているのに、トイレはブータン国内になる。私はどうやらまたまた知らずに入国している。空港の感覚も陸続きだ。お土産店もみたけれど、米ドル要求でしかも通貨単位がブータンの発音による「ングルタム」ではなく、英語っぽい「ニュルタム」と発音した。私には関係ない場所だなと思った。息子はブータンのお酒ミニチュアを買っていた。「インド・ルピー」で。
 それから wifi のパスワード。チベット文字で、「Ka kha ga nga」とあった。で打っても出てこないので空港職員にきいたら…あ、アイウエオみたいなもんなのね。日本の旅行代理店の男がパスワードがわからないと怒っていたので教えてあげた。でもへんな顔をされてしまった。妙にテンパっている添乗員さんだ。
 さらに飛行機の席を選ぶとき、私はガイドさんに教わったとおり「ヒマラヤン・サイド」と指定。ヒマラヤの山々が窓から見える側。それもさきほどの添乗員さんが私をまねて団体のお客様に伝えていた。
 息子が言う「みんながヒマラヤ・サイドにしたら、飛行機、偏っちゃわないのか?? それにしても確かに景観も建物の美しい空港。世界一美しいかもしれない。滑走路狭いし、短いし、谷の間だし…みんながヒマラヤン・サイドに乗るから、世界一危険かもしれない。そして…もうひとつ。出国スタンプを押してもトイレに戻れる世界一ユルい空港だね」

=================================
2. パロからバンコクへ ---経由地変更は夢のよう---
=================================
 それにしても、経由地がダッカではなくミャンマーになっていたのはなぜなんだろうと…まあいいか…着けばいいもんね。と、飛行機が離陸して、しばらくして、ヒマラヤの山々が見える。…思ったよりショボい。ネパール経由でインド行きの飛行機からみた30年前の感動が強いからなのだろうか。そして、チベット四川の飛行機からもっと高い山々がすぐ近くに見えた迫力を忘れていないからなのだろうか。そうしているうちに…な…なんと…なんと…ファーストクラスからトイレに来た?ブータン人男性。ええ!! 首相!! ブータン首相じゃない!! Prime Minister!! 驚きの声をあげてしまった。その場で記念撮影をお願いした。ただし、非公開のお約束で。で、さきほどの添乗員さん、「なんかエライ人が乗っているみたいですよ」とお客様に説明。経由地変更の理由はわかった。
 ミャンマーで首脳会議があり、首相を降ろすためだったのだ。ということはトップのパイロットなので王妃のお父様がここまで操縦していた可能性がある。すごい!!

 実はこの飛行機に乗っていたのは首相だけでなく、ブータンのトップモデルの男性と人気映画監督。首相はともかくブータンに関心がない人にはわからないだろう。
 息子と後ろの席のアメリカ人のご夫婦が会話。「おかあさまにとって夢みたいなことだったのね」と奥様が言う。
 息子が言う「いや、母は今晩夢をみられない。あまりの嬉しさで眠れないでしょうから」

=================================
3. バンコク ---いろいろな人が移住している観光地---
=================================
 帰りのチケットを買うためにはとりあえず観光客が集まるカオサン通りに泊まらなくてはならない。しかし、全然昔と違う。インド・ブータンでは初めての地なのに懐かしい場所のようだったが、何度も立ち寄っているはずのバンコクのほうが初めての地のようになっていた。それと現地の人と観光客と外国のビジネスマンしか見られなかったのに、住んでいると思われる東南アジアのイスラム圏の人たちや中国語を話す人たちが増えている。そして、宿泊したゲストハウスではフロントのおにいさんがパキスタン人だった。ウチの近所にもパキスタン系タイ人が料理屋さんをやっているのだが、不思議な感じだった。
 航空券販売の店員さんもヨーロッパ系民族(オーストラリアかな??)。インド・ビハール州の料理屋さんもある。…そして、なんと!! 屋台でモモを売るネパール人のおにいちゃん。息子と仲良しになった。いつの間にか多民族タウンになっていた。まぁ日本も同じようなものといえばそうなのだが。
 肝心の航空券だが、当時デモがあったため、タイ行きのチケットは安く、タイを出るチケットが高騰していた。その後政権が変わるまで続いたようだ。台湾トランジットチケットをあきらめ、中国経由羽田行きのチケットを購入。そこは30年前にチケットを買った店。当然代替わりしていたのだが。裏通りの本屋さんで付録つきの仏教マガジンも相変わらず売っていた。セブンイレブンがあちこちにできていて、日本の食べ物が売られていた中にもそれらのマガジンが売られていた。変わったバンコクと変わらないバンコクがあった。
 息子が言う「おかんといるとこんな観光地でも全然日本人と出逢わないね。それどころか南アジアの人たちとばっかり出逢う」…そういえば…。

=================================
4. 中国へ ---隣の席の機内食がおいしそう---
=================================
 まずは北京にむかう。中国東方国際航空の飛行機に乗る。隣の席。またしても、出逢ったのは「南アジアの人」だった。ご兄弟・従兄弟さんで縦並びに通路側に座っていた。機内食が配られた。彼らに「スペシャルミール」として別に配られた。あ!! ハラル・ミールだ!! しかも…おいしそう…。この白身魚の甘酢あんかけよりずっと。私たちと会話。「日本はいいところだ。決してどこの国ですか?とはきかない。きかれたくない国出身の人間だっているんだから」…う〜んっ。パキスタン人だということはわかった。だけどそう言われたら逆にパキスタン人ですね、といえなくなった。飛行機から降りて寒い北京空港。
 息子が言う。「てか、日本人の英語レベルだよなぁ、異文化理解レベルだよなぁ。突っ込んでどこから来たの??を言うと藪蛇だからな」

=================================
4. 北京空港から羽田 ---中国4000年の歴史…変わらない---
=================================
 行きの飛行機も中国経由だった。上海・合肥・昆明・コルカタ。なんか軍事基地巡りって。そして中国は寒かった。詳しくは過去のブログで。
  http://ameblo.jp/amalags/entry-11826780756.html

 北京空港でのお土産はものすごく進化していた。そして、反日と言われていた時代なのに日中合弁会社の広告がいっぱいあった。でもひとつ中国のいいところをみつけた。無料で水・湯を汲める。中国国内を旅するとどこでも無料でお湯を提供してくれる。華僑5世くらいの子が「中国ってネスカフェ大瓶に茶葉を入れて旅先でお湯を貰うんです」と言った。私は中国の旅の常識で大好きな文化だと思っていたけれど、日本人でも中国人でもないといっていいような若い子には一種のカルチャーショックかもしれない。さらに態度の悪いCAに対しては、英語をまくし立てることで泣かせることができるという、30年前の法則がそのままだったという変わりない事実。息子は彼自身キレていたけれど、私の態度で対応の仕方が解ったらしい。
 「オレ、絶対次はこの航空会社、乗らない」…いや乗ってくださいね。だってここまで態度が悪いCAに英語でクレームつけないと改善されないでしょ。中国はいいところも悪いところも4000年かわらない。

=================================
4. 日本に帰って ---ローカルもグローバルもかかえる問題は同じ----
=================================
 旅の目的とは関係なく、知り合った人たちの心の声。
 「国籍って何??」
 ご高覧ありがとうございました。
 長きにわたる連載のご高覧ありがとうございました、言い足りないこともたくさんありますが、続編・日本国内問題としての新連載オファーもあり、私自身もそろそろ…。
 次回からは「日本に住む外国人(裏話)」(仮題)

 (高校日本語コミュニケーションアドバイザー&専門学校時間講師)


最新号トップ掲載号トップ直前のページへ戻るページのトップバックナンバー執筆者一覧