【コラム】
政権交代による新たな日本外交は、「国民統一政府(NUG)」承認からはじまる
2021年2月1日の「クーデター」以後、ビルマ(ミャンマー)は大きな激動の波に襲われている。それは、2020年11月実施の総選挙結果の否定が発端となり、民主主義の根本原則の軍による否定であることを忘れてはならない。
筆者は前回拙稿(2021年8月号)にて、「日本外交が進むべきは、NUGの承認である」ことを強く主張した。
しかしながら外務省はいまだに、「複数の独自チャンネルを活用して、国軍に市民への暴力停止、アウンサンスーチー氏ら国政・政党指導者の解放などを求め、当事者の対話による解決を希望する」との夢物語的説明を続ける。また、東南アジア諸国連合(ASEAN)による事態鎮静の努力を支援とされた。
一方では、軍政寄り日本有力者(元閣僚)が堂々と現地を訪問し、軍系メディアでは「日本との友好関係強化」が語られる。
だが現地の状況は悪化を続け、ついに9月7日にはNUG大統領代行(大統領は拘束中)が、軍は残酷な殺害や拷問、拘束を続けていると指摘したうえで「軍に対して自衛のための戦闘を開始する」と宣言した。2月以降は「非暴力による不服従運動」を主体としてきた、NUGおよび各地少数民族集団による反軍政の対抗は「激化」した。それは一般人をも標的とする、軍テロリスト集団による非人道的残忍な殺傷、誘拐、強奪などへの反撃となった。
ASEAN特使派遣が先延ばしされ、軍はアウンサンスーチー氏ら被拘束者との面会を拒否し、特使派遣すら拒否した。そこでASEANは、10月末予定の首脳会議へのクーデター実行責任者(軍最高司令官、現在は首相を名乗る)の招待取り消しとした。
日本国内では、ビルマの人びとが毎週末各地の駅頭での街宣、募金活動を続け、ビルマへの関心継続を訴え続ける。だがかれらに広がるのは、「軟弱外交」を続ける日本の外交と社会への失望である。
今こそ求められるのは「NUGを正当政府として承認」である。しかし、既に明らかな通り、利権にまみれた自公政権では、民主主義を基本とする外交は不可能だ。
外交は政府や外交官が独占するものではなく、国民の意思により方針が決定されるべきものである。ならば、来る総選挙においては、人の命と民主主義を擁護する「外交政策への転換」も争点とされるべきであろう。
ビルマ(ミャンマー)の人びとを遠く日本から同情し応援するだけでなく、私たちが積極的に「平和国家としての外交」を作れるかが問われている。
(大学教員)
(2021.10.20)
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