【海峡両岸論】

対中同盟の再編強化は成功するか

~米外交は「対話」と「包囲」の両にらみ
岡田 充

 バイデン米政権は、中国への圧力一辺倒路線を修正し、対話と同盟再編による包囲強化という「両にらみ」外交に転換した。米国、英国、オーストラリア3国が9月に創設した新軍事同盟「オーカス」(AUKUS)(写真)は、経済安保中心の日米豪印4か国の「クアッド」(QUAD)と並び、広域的かつ重層的な対中同盟の再編構築が狙い。中国軍は10月1日の建国記念日から4日連続で、台湾海峡南西部で過去最多の軍用機を飛行させた。これはバイデンの「両にらみ」外交への回答であり、同時に台湾問題では一切妥協しないシグナルである。「20世紀の遺物」ともいえる同盟の再編は成功するだろうか。

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  「オーカス」創設を発表するバイデン米大統領

 ◆ 米単独では太刀打ちできず

 9月は米中関係をめぐって、目まぐるしく多様な外交が展開された。
 ▽米中首脳が7か月ぶり電話会談(10日)▽米英豪が「オーカス」創設(15日)、フランスが駐米英大使を召還(16日)▽中国が環太平洋経済連携協定(TPP)加盟を申請(16日)台湾も加盟申請発表(23日)▽「クアッド」が初の対面首脳会議を開催(24日)―

 これらのうち中国のTPP加盟申請を除けば、すべて米国の対中イニシアチブである。それらに通底しているのは「同盟再編」である。バイデンは中国を「唯一の競争相手」と位置付け、「民主vs専制」の競争に打ち勝つため、①同盟再構築 ②多国間協力―を外交の二本柱に据えてきた。同盟再構築とは裏返せば、「グローバルリーダー」から退場した米国が、もはや単独では中国に太刀打ちできなくなった「力の変化」が背景にある。

 ◆ 緊張緩和模索する電話会談

 まず米中首脳電話会談(写真)を振り返る。会談はバイデンの求めで7か月ぶりに行われ約90分に及んだ。ホワイトハウスの報道発表によると、「両リーダーは競争が衝突に発展させないための方策を話し合った」。

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  副大統領時代、習近平副主席と握手するバイデン氏

 一方、中国国営新華社通信によると、習は米中関係が「米国の対中政策によってひどい困難に遭った」と不満を表明、「安定的に発展する正しい軌道にできるだけ早く戻すべきだ」と訴えた。新華社電によれば、バイデンは「両国には競争のゆえに衝突に陥る理由はない。米国には一つの中国政策を変える考えはそもそもない」と述べたという。「衝突回避」はその後、米当局者が対中政策で頻繁に使うキーワードになった。

 7か月前の2月の電話会談では、バイデンは香港、新疆、台湾問題を取り上げ、中国側の「強圧的姿勢や不公正な経済政策、人権弾圧」を批判した。だが今回は、これらに一切触れなかったことは、改善の糸口を模索しようとする意図の表れと言っていい。
 電話会談では、カナダで9月末3年ぶりに解放された華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟・副会長の身柄問題も取り上げられており、関係改善へ向けたバイデン政権の本気度がうかがわれる。バイデンはさらに10月初め、対中貿易交渉の再開方針を表明。米通商代表部(USTR)のタイ代表と中国の劉鶴副首相が9日、貿易協議を再開した。これも対話路線の延長線上にある。

 ◆ 「新冷戦せず」を評価?

 対話の流れはサリバン・米大統領補佐官が10月6日、中国外交トップの楊潔篪・共産党政治局員と、スイス・チューリッヒで会談。米中首脳会談を年内にオンラインで開催する合意を生み出した。
 中国新華社電はサリバン・楊会談の意義について、双方が「衝突・対抗を避け、互恵ウィンウィンを求め、中米関係を健全かつ安定して発展する正しい軌道に戻すため共に努力することで合意」と解説。特に、楊がバイデンの9月の国連演説で「米国は中国の発展を抑え込む意図はなく、『新冷戦』はやらないと表明した」ことに留意した、と伝えているのが目を引く。

 米側は当初、イタリアでの20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に合わせた10月末の対面首脳会談を希望していた。対面会談は実現しなかったが、バイデンの対話路線は、台湾問題をめぐり「挑発と報復」の応酬に終始してきた「消耗戦の転機」という期待を抱かせるものだった。
 だが、対話路線は決して「単線」ではない。バイデンの対中政策を「対話」か「封じ込め」かの二択思考でみると、情勢判断を誤る。バイデンは対話と並んで、同盟再構築を急いだのである。米英豪の「オーカス」創設と、米日豪印の「クワッド」は、インド太平洋における広域的で重層的な対中同盟の新枠組みである。バイデンが、退任寸前の菅前首相をワシントンまで呼びつけたのも、「クアッド」初の対面首脳会議をこの時期に実現するためであり、ポスト菅政権にも路線継承を迫る狙いからだった。

 ◆ 「オーカス」、対仏関係悪化に勝る利益

 ここで「オーカス」の経過を振り返る。バイデンは9月15日、ワシントンで「オーカス」創設を発表、豪州に原子力潜水艦技術を供与すると発表した。豪州は2016年にフランスと、ディーゼル潜水艦建造の契約をしていた。このため豪州は「オーカス」発表の数時間前になって、フランスに契約破棄を通告するのである。
 「裏切られた」フランス政府は17日、駐米、駐豪大使を召還するという前例のない報復に出た。新たな同盟関係構築のために、古くからの同盟関係を犠牲にした理由は、豪州への原潜供与にある。それは対仏関係の悪化に勝る利益を、米国にもたらすと判断したからに他ならない。

 豪海軍は21年3月、原潜建造の技術供与について英海軍に打診。ジョンソン英首相は6月、主要7か国(G7)首脳会議に招待していたモリソン豪首相とバイデンを交えた3国秘密首脳会談で、計画の詳細を詰めた。フランスから情報が漏れるのを警戒して、マクロン大統領は排除した。
 フランスが怒らないわけはない。ルドリアン外相は「乱暴で予測もつかない決定はトランプと同じ」とバイデン政権を痛罵した。「オーカス」創設を急いだ理由についてバイデンは「21世紀の脅威に対処する能力を最新に向上させる」と、中国封じ込めの意図を隠さない。さらに「米国の欧州同盟国をインド・太平洋協力に転換する第一歩」と、英国参加による同盟の広域化という意義も強調した。

 ◆ 台湾支援の同盟「広域化」「重層化」

 この説明からも分かるように、第1の狙いは、英国と豪州を対中封じ込めの「戦列」に加え中国に睨みを利かせること。対中封じ込めを「広域化」「重層化」する発想は、トランプ政権時代の19年6月1日、シャナハン元国防相代行がシンガポールのアジア安全保障会議で発表した「インド太平洋戦略報告」(写真)まで遡る。

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  戦略報告の表紙

 詳細は拙稿[注1]をお読みいただくとして、「シャナハン報告」は、中国と対抗する上で、台湾の軍事力強化とその役割を重視し、インド太平洋で「合同軍」の創設を展望している。インド太平洋諸国と西欧諸国を、米国を中心とする「七つの同心円」からなる「同盟・友好国ネットワーク」構築を提起する。台湾を「国」と表記し、シンガポール、ニュージーランドと並んで「第2の円」に入れた。「一つの中国」政策への配慮などは一切ない。

 米国と最も近い「第1の円」には、同盟関係にある日本、韓国をはじめ、オーストラリア、フィリピン、タイの同盟国が入る。まず最も従順な同盟国、日本との同盟強化を推進。同時に、コロナ対策や経済安保、サイバー対策を中心とする日米豪印の「クアッド」を立ち上げ、将来的には東南アジア諸国連合(ASEN)加盟国にも広げようと展望する。

 中心から最も遠い「第7の円」には英国、フランス、カナダが入っており、「オーカス」が同盟「重層化」を目指す戦略であることが分かる。「クアッド」には対中軍事同盟化を嫌うインドが入っており、「準同盟」と見たほうがいいだろう。

 ◆ 日豪が南北から挟撃へ

 「オーカス」の第2の目的は軍事である。原潜は通常動力の潜水艦と比べ、ステルス能力、スピード、機動性に優れ、長期間潜航できるため、探知されるリスクは極めて低い。米国防総省の報告書などによると、中国が保有する潜水艦は原潜10隻を含め計56隻。一方米海軍の就役中の潜水艦はすべて原潜で計68隻。このうち太平洋に展開している原潜は計10隻と数では中国と互角。オーストラリアが原潜を計画通り8隻保有すれば、数で米豪が勝ることになる。
 豪原潜は、米原潜と役割分担しながら ①台湾への海上封鎖の打破 ②水陸両用上陸を破壊 ③巡航ミサイルで重要な陸上目標を破壊 ④中国の演習に関する詳細な情報収集―など「台湾有事」に向けて重要な軍事任務を担うことが想定されている。

 台湾をはさんで、北からは日本が南西諸島のミサイル基地化を急ぎ、南からはオーストラリア原潜が米英艦隊と共に中国に睨みを利かす。それが「オーカス」の目的だ。中国からみれば ①原潜は核攻撃のツール。豪州は原潜の核搭載を否定しているが、核拡散につながる恐れ ②中国海軍は、米海軍と海上自衛隊への対応に加え豪原潜への対応の必要から海軍力分散を強いられる ③政治的には「クアッド」と併せ、米国の「対中統一戦線」強化の一環―と受け止めているはずだ。

 そして第3は、米英原子力産業の利益という「国益」。今後1年半で米英いずれかが原潜技術を供与する決定をする。原潜で使う小型原子炉は、原発用の加圧水型原子炉とほぼ同じで技術的な差はない。米国はパーツを現地に運んで組み立てる「モジュール型小型原子炉」を開発中で、オーストラリアのアデレードで組み立てるとみられる。
 米国は、新規原発は国内はもちろん、輸出もできないデッドロックに直面している。だが原発用の小型原子炉をオーストラリアに輸出できる展望が開けたことで、窮状から脱する可能性がでてきた。米英にとっては「国益」上もプラスであり、原子力産業と軍産複合体にとってはまさに「光明」であろう。

 ◆ 軍用機の大量飛行が回答

 「広域的で重層的」な同盟再編に対する中国の回答は、建国記念日の10月1日に出た。中国戦闘機、爆撃機が4日間連続して台湾防空識別圏(ADIZ)(写真)を飛行、その数は過去最大の約150機にも上った。中国戦闘機の台湾海峡での行動は昨年夏以来、米高官訪台や台湾への武器売却、軍事演習など、中国側が「挑発」と見なす動きへの「報復」の形をとってきた。

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  台湾国防部発表のADIZと中国軍機の位置

 しかし今回は前触れや説明抜きの大量飛行だっただけに、その目的をいぶかる声が台湾側から出た。台湾の呉釗燮外交部長は10月2日、ツイッターに「中国軍はもはや(台湾に対し)何の言い訳もしなくなっている」と投稿。日本メディアは「台湾のTTP加盟申請を受けた圧力強化」「沖縄南西海域で2、3日に米英空母と海上自衛隊艦船が参加する演習へのけん制」などと解説した。
 これらの見方は、過去の中国「報復」パターンを踏襲した類推に過ぎない。今回は国慶節休暇という慶事に合わせ、対中同盟の再編への「総合的な回答」であり、台湾問題では一歩も引かない決意を内外に示すのが目的だったとみるべきである。

 中国紙「環球時報」の胡錫進編集長は3日「これは建国記念の空の閲兵の別の形式。場所を天安門広場から台湾海峡に移して、中国が台湾に主権をもつことを明確に表明した」と、SNS微博(ウェイボー)に書き込んだ。
 一方、台湾国防部のシンクタンク国防安全研究院の蘇紫雲所長[注2]は、中国の軍事的狙いについて「(台湾統一を想定して)大量の中国軍機の動きを確認しながら、電子戦も含め昼夜を問わずより実践的な軍事演習を行うため」と指摘している。
 6日付の環球時報[注3]は、台湾海峡での「不測の事態」を避けるために「自制」の必要があるのは、大陸ではなく台湾の民進党当局だと批判。論評は「台湾当局と国際的な反中勢力との結託がいっそう進めば、大陸側の軍事闘争の準備もさらに進むというのが両岸のインタラクティブな論理」と、日米と蔡英文政権に警告した。

 ◆ 冷戦回帰の思考

 米国を中心とする同盟は、ソ連を「共通の敵」として出発・成立したが、ソ連崩壊で敵を失い、その基盤は大きく揺らいだ。米ソ冷戦期、米国とソ連の間には経済交流は皆無だった。一方、中国は1980年代初めから、グローバルな市場経済に参入することによって急成長し、米GDPの7割に迫る経済大国に発展する。

 日米をはじめ世界中の国が中国との経済・貿易・投資を深め、中国が共産主義国家だからとして「敵視」すれば、自国経済は成り立たなくなる。グローバル化はそれだけ、世界の経済相互依存関係を深めた。米国にはもはや単独で中国と競争する力はないため、同盟関係を再構築し、集団で中国に対抗するという論理だ。相互依存が進む経済でも「経済安保」の論理から、サプライチェーン(部品供給網)を自分たちで抱え込み、デカップリング(分断)を進め中国を排除しようというのである。まさしく世界が米ソ2大陣営にブロック化した冷戦に回帰する思考であり、「新冷戦」の論理と言っていい。

 ◆ 日本で進むパラダイムシフト

 では「オークス」「クアッド」という同盟再編成は成功するだろうか。まず東アジアでは、米国に最も忠実な日本との同盟強化は驚くほどスムーズに進んだ。バイデン政権は、3月の外務・防衛両相による日米安保協力協議会「2プラス2」の共同声明に続き、4月の日米首脳会談の共同声明に、「台湾海峡の平和と安定の重要性」の文言を半世紀ぶりに盛り込むことに成功、日米安保の性格を「地域の安定」装置から「対中同盟」に変質させた。さらに声明冒頭には「自らの防衛力を強化することを決意した」とうたい、南西諸島で中国向けの対空・対艦ミサイル網構築を後押ししている。

 日米安保の性格を変えるほどの政策変更なのに、日本では野党を含め全く議論なしに「同盟強化」路線は進んでいる。なぜか。それは安倍・菅政権の下で、「中国の脅威」が立憲民主、共産など野党を含め、日本の「翼賛世論」になったからである。日中戦争遂行のため国論を統一、挙国一致の戦争体制の「大政翼賛」体制と似ている。
 「台湾有事は日本有事」「日台は運命共同体」などのスローガンは、少し前なら右翼に特徴的な認識だったが、今や政府・自民党、さらには主流世論の認識になりつつある。日本政府の外交・安保政策の「与件」は、これまで「日米基軸」だった。だが今は「対中同盟」が新たな「与件」になりつつある。多くの人が意識しないまま、価値観の転換を意味する「パラダイムシフト」が進んでいることを自覚する必要がある。

 ◆ 障害多い同盟再編

 日米同盟強化はスムーズに進んだが、インド太平洋地域で「オーカス」「クアッド」が、狙い通りに進むか不確実要因は多い。
 まず豪原潜が就役するのは、早くても2035年とされる。その間、中国も急ピッチで原潜建造を加速するから、原潜隻数でも中国を圧倒するという目的を達成できない可能性がある。米英の軍産複合体や原子力産業にはプラスにはなっても、地域の軍事バランスを米国に有利に転換させる保証はない。

 第2は、軍拡競争を刺激し「安保のジレンマ」を加速する。豪原潜供与に対してインドネシアやマレーシアが軍拡に懸念を表明。米中対立に巻き込まれるのを敬遠する多くの東南アジア諸国の支持を得るのは難しい。

 第3は、同盟国の対米信頼の喪失。米国はアフガニスタン撤収を、多くの欧州諸国の反対を押し切って強行し、欧州同盟国は対米不信を強めた。「オーカス」創設によって「裏切られた」フランスとのしこりは簡単には解消できないだろう。北大西洋条約機構(NATO)内でも今後、さまざまな摩擦が予想され、対中封じ込めでフランスとの協力を得るのは困難になるかもしれない。

 ◆ 核拡散の恐れ

 そして第4は核拡散の懸念である。モリソン豪首相は、核兵器搭載だけでなく原発への利用も否定している。しかし原潜はそもそも潜水艦発射多弾頭ミサイル(SLBM)の搭載を前提に設計されている。豪州は原発を持たない非核兵器保有国であり、「オーカス」は議会承認されていない。今後、反核機運が高まり政権交代すれば、原潜配備計画そのものが撤回される可能性も否定できない。

 中国外務省の趙立堅報道官は9月16日の定例記者会見[注4]で、原潜供与について「地域の平和と安定を深刻に損ない、軍拡競争を激化させ、国際的な核不拡散努力を損なう」と非難した。特に豪州が、南太平洋非核地帯条約の当事者であることから、楽玉成外務次官[注5]も原潜技術の受け入れは「ダブルスタンダード」と批判した。

 米国はこれまで、英国を除き艦船用原子炉技術の輸出を阻止してきた、1980年代には、仏英両国がカナダに原潜を売ろうとしたのを止めたこともある。核燃料サイクル技術の移転は核兵器製造につながるというのがその理由である。原潜を動かすには大量の濃縮ウランが必要。8隻の原潜には4~5トンの濃縮ウランが要るとされる。豪州はウラン濃縮をするか、米英から輸入することになる。
 豪州が原潜を保有すれば、原潜保有に関心を持つイランや韓国、さらに「核保有国」のインド、パキスタンを刺激するのは間違いない。「オーカス」は、アジア太平洋地域の核拡散を一気に誘発する危険がある。

 ◆ 「非同盟」の論理も再生

 同盟再編(写真)はバイデン政権にとって対中競争に勝つ「カギ」だが、同時に世界を「民主」と「専制」の2陣営に分断する「新冷戦」に逆戻りさせかねない。フランス、ドイツなどの同盟国を含め、米中の二択選択を迫られるのを拒否する韓国、ASEAN諸国やインドなど、多くの国の反発に遭い順調な展開は望めないだろう。

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  1961年旧ユーゴスラビアのベオグラードで開かれた
  第一回非同盟首脳会議に集まった各国首脳

 同盟再編は、地球規模で核拡散の危険と軍事的緊張を高めるだけで、台湾統一を「歴史的任務」とする中国の姿勢転換には全く役に立たない。「オーカス」創設は、地域の緊張激化につながるとして反対する、反核・平和国際団体の声明を紹介したい。
 反核運動を進める国際平和ビューローをはじめ、「日本アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会」[注6](日本AALA)、米、豪、英、比、韓国、独の反核平和団体が9月22日、緊急オンライン会合を開き、「アジア太平洋での軍事同盟強化の動きに反対する」と題する共同声明を発表した。

 会合に参加した日本AALAの田中靖宏国際部長によると、声明は「クアッド」、「オーカス」の枠組みを「中国に対して地球規模で戦略的な軍事緊張を高める軍事同盟」と位置付け、事故や誤判断がエスカレーションの引き金となり「破滅的な戦争につながる危険が増している」と警鐘を鳴らした。
 同時に、軍事緊張と競争を増大させることによって、「米中両国と幅広い国際社会が協力して核兵器(廃絶)や気候変動や感染症対策に取り組み、現状を逆転させることを困難にしている」と憂慮を表明している。

 ◆ 中国は非同盟運動と連携も

 具体的には(1)豪州の平和団体は、原潜技術供与は「核拡散を助長して環境破壊の大惨事をもたらす危険が内在する」として豪州政府に反対を表明(2)原潜技術の供与は核不拡散条約に違反し、冷戦のような危険な軍拡競争を煽りたてている(3)インド、韓国、日本の政治家や軍人たちから、能力保持を否定されていることへの疑問が投げかけられる(4)オーカス同盟は、東南アジア諸国連合(ASEAN)や他の国々にどちらにつくかの選択を迫る圧力がかかり、これらの国の独立を危くしかねない―を挙げている。

 「非同盟」を、平和主義と理想主義に基づく古い理念と決めつけるべきではなかろう。バイデン政権は、「20世紀の遺物」である同盟を再編成することによって、対中包囲を強化する新ステージを設定した。それと共に「非同盟」の理念も再生される。王毅外相は10月12日非同盟運動の60周年を記念するハイレベル会合(ベオグラード)で演説[注7]し「冷戦思考を拒絶し、イデオロギーと地政学的な競争の輪を断ち切り、国際法と国際秩序の権威を維持する」と述べ、非同盟運動との協力強化の方針を強調した。中国と非同盟運動との連携を注視したい。

[注1]岡田充 海峡両岸論第105号「対中同盟」の再構築狙う新戦略 日米一体の「インド太平洋戦略」
 (http://www.21ccs.jp/ryougan_okada/ryougan_107.html
[注2]「中国軍機、台湾への威嚇一段と 最多56機が防空圏に侵入」(「日経」10月5日)
[注3]环时锐评:大陆军机的语言最易听懂,蔡英文害怕“擦枪走火”隔空喊话
 (https://opinion.huanqiu.com/article/4540E8eN31Q
[注4]中国外交部趙立堅報道官の記者会見(外交部HP 21年9月16日)
 (http://new.fmprc.gov.cn/web/fyrbt_673021/jzhsl_673025/t1907464.shtml
[注5]外交部副部长乐玉成:AUKUS为新冷战鼓风,有百害无一利(外交部HP 21年10月12日)
 (http://new.fmprc.gov.cn/web/wjbxw_673019/t1913945.shtml
[注6]「日本AALAニューズ」
 (http://www.japan-aala.org/aala-news/
[注7]「王毅在纪念不结盟运动成立60周年高级别会议发表讲话」(外交部HP 21年10月12日)
 (https://www.fmprc.gov.cn/web/wjbzhd/t1913879.shtml

 (共同通信客員論説委員)

※この記事は著者の許諾を得て「海峡両岸論」131号(2021/10/14発行)から転載したものですが文責は『オルタ広場』編集部にあります。

(2021.10.20)
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