【沖縄の地鳴り】
宜野湾の敗北(下)
〜環境問題の軽視〜
''<沖縄の誇りと自立を愛する皆さまへ:第32号 2016年3月号>
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辺野古・大浦湾から 国際法市民研究会
翁長知事が会長を務め、米軍基地のある26市町村の首長で組織する「沖縄県軍用地転用促進・基地問題協議会(略称「軍転協」)」は2015年2月、政府に対し「基地から派生する諸問題の解決促進に関する要請」をした。水源や土壌の汚染防止に力を入れているのは、それが健康被害や海洋汚染の原因になるためだ。しかしこの選挙では、両陣営とも環境問題を本格的に取上げなかった。
●生かされなかった「軍転協」の要請
「要請」は次の事例を挙げている。復帰後、167件もの油類・汚水・ジェット燃料等の流出事故。2013年沖縄市サッカー場でダイオキシン類入りドラム缶の大量発掘(新聞報道によるとその後を含めドラム缶合計108本)。退役米軍人による枯葉剤使用の証言。ベトナムから沖縄に枯葉剤を運び貯蔵したとする米陸軍化学物質庁の報告—など(「要請」p13〜15および20)。これと関係する政府への要請は、主に次の諸点である。
・環境関連の事件・事故の際、基地内への立入りを認めよ。
・地位協定に環境条項を新設するとともに、環境保全の国内法を適用せよ。
・基地内廃棄物の種類・数量・場所・保管方法・処理および輸送計画等に関し、
情報を公開せよ。
・政府は退役軍人等の証言について調査し、地元自治体に説明せよ。
・普天間飛行場には、米軍の東日本大震災支援に伴う放射性廃棄物が保管されている。政府責任で迅速に処理せよ。
・低空旋回・住宅地飛行の回避や訓練の移転など、嘉手納・普天間両飛行場の航空機騒音を軽減せよ。
●アメリカの「協力義務」を活用しよう!
これらには、宜野湾市長が先駆的に実行すべきことが多く含まれている。たとえば志村候補が「担当者を引連れて普天間基地に立入調査する」「基地内の有害廃棄物の種類・数量・保管方法などを教えるまで市民とともに座り込む」というなら“攻めの選挙”になっただろう。
日米が2013年に締結した環境補足協定は、日本の立入調査権を認めてはいない。「漏出事故」と「返還時」にかぎって「日本国の当局」の立入調査にアメリカが「協力する」ものだ。つまりかぎられた場合にだけ、米軍には立入調査への「協力義務」がある。したがって、どの自治体が真っ先にそれを活用するかが問題なのだ。「島ぐるみ」や「オール沖縄」が“横並び主義”の温床になっているなら、沖縄に未来はない。
(文責:河野道夫/読谷村 international_law_2013@yahoo.co.jp 080-4343-4335)