【世論分析】

堺市長選擧維新が二連敗 ―日本維新の退潮止まらず―

仲井 富


 任期満了に伴う堺市長選は9月24日投開票され、無所属現職の竹山修身氏(67)=自民、民進、こころ、社民大阪府連推薦=が16万2,318票で、地域政党大阪維新の会公認の新人で元大阪府議の永藤英機氏(41)13万9,301票を破り、3選を果たした。相乗り批判をかわした竹山氏が前回2013年に続き維新公認候補に勝利したことで、維新が再挑戦を目指している「大阪都構想」の実現には打撃となった。投票率は44.31%(前回50.69%)だった。毎日新聞は要旨以下のように報じている。

 ――竹山氏は前回は支持だった自民から推薦を得たほか、共産からも自主的な支援を得た。国政の与野党が「反維新」で相乗りする構図で「野合だ」との批判を受けたが、前回は堺市も対象に含まれていた都構想への反対を再び争点に掲げて維新政治の批判を展開し、2期8年の実績も訴えて有権者の支持をまとめた。竹山氏は「堺の自由と自治を守り、都構想に入らないと皆さんとともに再度、確認した戦いだった」と述べた。

 永藤氏は「停滞か成長か」を掲げて市政刷新を期待する層や、与野党が竹山氏に相乗りする構図に批判的な層から一定の支持を集めた。維新候補と竹山氏との得票率の差は前回の17ポイントから8ポイントに縮まった。ただ、前回の敗戦が都構想を否決した15年の大阪市住民投票に影響した経緯を踏まえ、看板政策である都構想を公約から外した戦術は「都構想隠しだ」と批判を浴びた。大阪市で来秋に住民投票の再実施を目指している中での敗北に、松井一郎代表(大阪府知事)は「選挙に関心を持ってもらうところまで至らなかった。(都構想について)大阪市民は冷静に判断されると思う」と強調した。(毎日新聞 017・9・25)――

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 共同通信の実施した開票当日の出口調査では、「大阪都構想に堺市が参加すべきだと思うか」を尋ねたところ、「そうは思わない」が57.8%で、「そう思う」の39.2%を上回った。堺市を大阪市都構想に組み込むことは、今回の市長選敗退で不可能になったうえに、018年秋を目指している大阪市の都構想住民投票にも、大きな影響を与えるだろう。

◆橋下ツイッターで堺敗北に言及せず 維新と希望の談合政治

 最近の橋下徹氏は政治評論家に徹して、連日、ツイッターで快刀乱麻の活躍だが、実質的には維新のオーナーとみられている。その橋下氏が、9月24日の堺市長選挙の維新連敗には全く触れていない。ということは、この敗北で大阪都構想はほぼ終わったと思っているのではないか。そして、しきりに小池・前原両氏の希望の党結成を、英断として評価し続けている。先日9月28日、大村愛知県知事の仲介で、大阪での三大都市代表の会が開かれ、維新の大阪と希望の東京を棲み分けすることで合意した。新党希望との東京・大阪の棲み分けを決めさせたのは、東京都議選の敗北で、わずか1議席となった東京維新と、大阪に足がかりのない希望の両者が、ともに利害が一致しての談合となったものだ。

 しかし大阪で希望での出馬予定と、東京で維新出馬予定の候補者らには、一言の相談もなく決定したのは、まさに専制的な体質を明らかにしたものだ。民進党の前原代表の独断専行の希望への参加も、党大会なども経ないで議員総会のみで決められた。昔は良くも悪くも、党大会を開いて決められたことが、最高幹部の談合で決められる。安倍専制政治打倒などと言いながら、やっていることは似たり寄ったりだということに気づいていないのだ。

 とはいえ左の陣営でも、社会党の消滅を決定的にした1994年の自社さ連立政権も、自社国対レベルの連立協議が先行し、あっという間に村山自社さ連立政権が発足した。村山首相は国会で「安保自衛隊容認 君が代日の丸容認」の施政演説を行った。大阪維新や小池希望の党がやっていることは、それに輪をかけた、党内民主主義など無視した談合政治である。余りの体たらくに世論の小池新党ブームも陰りを見せ始めた。いずれも意図が見え見えで、肝心の有権者から批判を浴びる結果となっている。

◆橋下徹氏の小池・前原絶賛と松井代表の安倍政権擦り寄り

 希望の党に先に離党して行った細野代議士が、元首相などは受け入れを認めないなどと発言、これに小池の側近で、元自民党出身の若狭代議士が同調して、こんどはリベラルは認めないと言い出した。止めは小池知事だ。その若狭発言通りに「民主リベラルは選別する」と公言した。いったい前原代表は、小池知事と何を約束したのか。これでは、小池新党を増やすために、民進党を分解させただけではないか。もともと前原代表には前科がある。かつて民主党代表を一時期つとめたが、この時は有名な「偽メール事件」の責任を負って中途で代表を辞めた。

 民主党政権になって、国土交通相となり「コンクリートから人へ」のスローガンに沿って現地に行き、辻元副大臣と共に、当時最大の問題だった八ッ場ダムの中止を高らかに宣言した。しかしその後のダム審議会には反対派の学者は登用せず、ついにダム継続となった。その後、在日韓国人からの政治献金の事実を自民党から追及されて、外務大臣の役職を追われた。前原代表は、米国の共和党シンクタンクの資金でアメリカに行き、国内でも共和党シンクタンクの会合に参加している。民主党どころか共和党の手先となっている有力な政治家として知られている。三多摩を地盤とする長島代議士も同じ系列の政治家である。かつて前原氏は「言うだけ番長」と揶揄されたが、その性質は一向に変っていない。

 ところが橋下徹氏はお得意のツイッターで、この希望・民進の合同劇を歴史的な快挙と絶賛した。以下にそれを紹介する。

 ――10・3 小池さんは歴史に名を残すね。これで選挙の結果がどっちにころんでも憲法改正議論が進む。憲法改正絶対反対の民進党をたった一人の政治家が一気に改憲集団に切り替えた。こんなことは僕も含めて普通の政治家ではできないね。あとは民進組が裏切らないことを願う。もちろん前原さんも歴史に名を残す。こんなことは、僕も含めて普通の政治家や学者やメディア、コメンテーターの自称インテリには絶対にできない。二大政党制に向かうには避けては通れないプロセス。批判覚悟で誰かがやらなければならないこと。批判している連中は口だけの雑魚。――

 ――10・2 二大政党制の対立軸は、政策や理念ではない。支持層の違いが対立軸でそれで十分だ。自民党は団体が中心。希望と維新は団体に属していない有権者が中心。希望と維新は企業団体献金の禁止を掲げている。支持層が政党の政策・態度振る舞いを左右する。民主主義である以上当然のことだが。――

 総選挙中盤の情勢では、東京・大阪と小池・松井の談合による効果はなく、両者ともに伸び悩んでいる。当然だろう。自公過半数体制に対して根本的な批判もできず、「場合によっては自公と連立政権も」(毎日新聞 017・10・2 松井維新代表)という。安倍・菅体制にすり寄って、ついに大阪万博とカジノ誘致を自公に容認させた。その利権構造を維持するために、自公との連立政権をも選択肢という。このような安倍政権への擦り寄りの政治姿勢が近年の衆院、参院選挙で近畿を除く全国的な退潮につながっているのだ。今回の総選挙もそれを裏付ける結果が待ち受けているだろう。

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  日本維新の会の政権への接近ぶり~毎日新聞 016・11・17

 (世論構造研究会代表)

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