地球寒冷化説と公共政策を誤らせた地球温暖化人為説                                                         濱田 幸生


■地球気候を大きく左右するもの

仕事がら、まったく平常どおりの仕事のまま正月が終わってしまいました。
死ぬまでに一度くらいは、元旦にお屠蘇など飲みながら箱根駅伝でも見たいもの。おっとと、新年早々愚痴になってしまいました。
さて、今年もやはり気象変動についてからの年開けです。
人為的二酸化炭素説は案外新しくて、30年ほと前の80年代から唱えられたものです。
それまでの科学者たちの意見は、地球の気候変動はいくつもある複数の自然の要因や周期が複雑にからまりあって、影響を与え合って変動しているのだと思っていました。
それを一気にひっくり返して「人為説革命政権」を作ったのがIPCCだったわけですが、とりあえずこの二酸化炭素人為説はあまりにも「常識」なので、ちょっと脇に置いて、考えてみましょう。
おおざっぱに言って、地球の気象変動は3種類に分けられます。
大きな自然の周期から並べると
①長期的な周期・・・数万年サイクルの地球の自転軸の傾斜角、地球と太陽の相対位置のズレ(太陽からの離心率)・ミランコビッチ・サイクル
②中期的周期・・・数百年から1000年規模の太陽活動(太陽放出エネルギー)の減少による極小期、宇宙線の照射量、火山活動など
③短期的周期・・・100年以内の数十年規模の大西洋数十年規模振動など
①、②に関してはそのうち余裕があれば触れたいと思いますが、直近の③の短期的周期を探っています。
二酸化炭素温暖化説でも、重要視されたのは海水温の上昇でした。なぜなら、海水温は、その上に拡がる大気の温度にまで大きな影響を与えるからです。
二酸化炭素温暖化説では、対流大気圏の組成の変化による海面温度上昇や大気湿度の上昇があると主張しています。
そしてその結果、海水面上昇や、北極圏の氷が溶ける現象が出たと説いています。つまり、大気温が上昇して、それによって海水温が上がったという仕組みです。
ここから、アル・ゴア氏などが主張した地球温暖化による大規模災害の発生が言われるようになったわけです。
しかし、この説には疑問符がつきます。仮に大気温による気温が上昇していたとしても、海水が外気温で温まるまではかなりの時間を要します。
実際その海を流れる風の強さや温度、海流の寒暖は、大気温より早く水温に現れるのです。
考えてみればそうでしょう、普通お湯を沸かそうとすれば、鍋に水を張って下からコンロに火をかけます。
外からドライヤーでブンブンやる人はまずいません。ドライヤーでお湯を沸かそうというのが、二酸化炭酸による海水温上昇説です。そうとうにムリを感じませんか。
多くの海洋研究者は実測の結果、大気の温度変化と海水温度は比例せずに、ズレて発生すると言っています。あくまで海水温上昇が先行するのです。
このようなことから、海洋気象学者たちは、海流の温度変化に着目しています。それが去年の前回のグリーンランド周辺海域の海水温調査なのです。
グリーンランドに着目するのは、ここが全地球規模の海流の「心臓」だからで、世界の海流はここを通って北極海に入り、冷やされて南下していきます。
画像の説明
この海域の温度は30年から40年サイクルで周期し、温暖化と寒冷化を繰り返すことが分かっています。前回の変化は80年代初めの温暖化でした。
そして今また、それから40年たって寒冷化の周期に入ろうとしていると専門家は見ています。
海洋研究開発機構 (JAMSTEC)中村元隆氏は、「間違いなく寒冷化に転換している」徴候と判断しています。
一方、最近の太陽表面は、驚くほど「穏やかな状態」が続いており、黒点の数が20世紀のどの時期よりも少なくなっているからです。
2008年から始まった観測単位であるサイクル24(第24太陽活動周期)は、過去250年間で観測された最弱なものだからです。
NOAA(米国海洋気象庁)の観測データでも、11年から再度活発化トレンドに向かうかと思われた黒点数が、また13年を境にして下降に戻ったことが分かります。
前回のダルトン極小期は1800年から20年間続いて小氷河期を招きました。
この極小期は200年サイクルといわれていますから、ちょうど現代がその時期に当たります。
つまり太陽活動からみても寒冷化のサイクルに入っており、「いつ極小期が来てもおかしくない」状況です」。(東京大学宇宙線研究所・宮原ひろ子特任助教)
このように短期的な気象変動を司る海流や、中期的周期を決定する太陽エネルギーの放射量は、ひとつの予想に辿り着きます。
それは、現代の常識ともなった地球温暖化ではなく、真逆の地球は不機嫌に冷え始めているのではないでしょうか。
思えば、地球温暖化人為説をハンセンが発表した80年代は、自然的要因も寒冷期から温暖期に転換する変わり目でした。だから、大きな説得力をもって支持されたのです。
まだ寒冷期が続いていたそのわずか10年前の70年代には、人々は氷河期が来るのではないかと脅えていたものでした。
今後、寒冷化、温暖化、いずれの気候に転換するのか、予断を捨てて注視する必要があると私は思います。

■地球温度の今後を占うグリーンランド海域

エジプトで百年ぶりに雪が降ったそうです。
北極周辺の猛烈な寒気が流れ込んだものと思われています。この寒気が寒冷化と関係あるのかどうかわかりませんが、夏と冬の気温差が激しくなり、冬がいっそう寒冷化しているように思えます。
さて何度か書いていますが、地球の気候は、自然環境の変動と、それを打ち消そうとする人為的攪乱要因との綱引きです。
1940年代から70年代にかけて気候は、寒冷化していました。団塊の世代前後までなら覚えているでしょうが、当時は「氷河期がやってくる」ということをさんざん聞かされたものです。
ドラマ「おしん」などで描かれている飢饉の原因は寒冷化でした。終戦の年もひどく寒い夏だったことが記録されおり、当時の農業関係者はいかに冷夏と戦うのかが大きなテーマだったのです。
海洋研究開発機構・中村元隆氏は、NOAA(米国海洋大気庁)や英国気象庁などの過去の観測データを分析しました。
その結果、1980年ころに温暖化の転機があったことが分かりました。
中村氏が着目したのは79年2月から3月にかけて、北極に近いグリーンランド海の表面水温です。
グリーンランド近海の海流の温度は前回述べたように、世界の海流の「起点」です。比喩的にいえば「世界の海流の心臓」にあたります。
この「心臓」の温度が上昇するか、低下するかで世界の海流の気温や、それに連動する大気温度までが変化していきます。

独立行政法人海洋研究開発機構 プレスリリースhttp://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20130629/
画像の説明
図には74年からの海水温が記録されていますが、79年から一気に上昇に転じているのが分かります。
このグリーンランド海域の海水温が一気に2度も上昇した結果、周辺の大気の流れに影響が及んで、温暖化へと変化していきます。
「この1979年の変化が、1940年代から1970年代にかけての北半球寒冷化から1980年代以降の温暖化に変わる大きな転換点となった」(海洋研究開発機構プレスリリース)
北大西洋では、海面水温が約70(±10)年周期で、ほぼ35年ごとの上昇、下降を繰り返し、北半球全体の気候に影響を及ぼす「大西洋数十年規模振動」という現象が知られています。
この「大西洋数十年規模振動」というのは、グリーンランド近海のフラム海峡経由で北極に還流し、「過去1000年以上にわたって約70年周期で北半球に長周期気候変動をもたらしてきた」(同)と見られています。
ですから、フラム海峡付近のグリーンランド海域の海水温の変化・変動を調べることで、今世界が寒冷化に向っているのか、温暖化に向っているのかの判定ができるというわけです。
北極の寒気で冷やされた低温・高塩分の海水は、重くなって沈み込み、深層流となって北極海から大西洋に南下します。
この流れに連動して、暖かい熱帯域の海水が北大西洋の表層を北上するので膨大な熱量が運ばれて、大気温度に強く影響を与えます。
中村氏は、気候変動シミュレーションの高精度化のための数理モデルに、グリーンランド海を舞台とする変化のプロセスを加えて正確に表現することに勤めました。
70年当時は、既に二酸化炭素の排出が増えていましたが、「大西洋数十年規模振動」が下降期だったので、温室効果の影響は相殺された形になりました。
しかし、80年代からは、「振動」が上昇期に転じ、二酸化炭素の温暖化効果も加わっていっそう気温上昇という結果にてりました。
IPCCは、このうち二酸化炭素ガスだけを原因として捉えて単純化してしまいました。
この強引な政治的とすら言える二酸化炭素悪玉説により、排出量取引が金融商品化されたり、南北が激しく排出権で争う国際問題にまで発展しました。
この10年ほど、世界の平均気温上昇は停止し、中村氏によればこの気温の上昇停止は、大西洋数十年規模振動が上昇期から下降期に転じるカーブの頂点にあり、以降は寒冷化に向うためだとしています。
「グリーンランド海と大西洋数十年規模振動の関係に基づいて推測すると、2015年前後にグリーンランド海において1979年に起こったのとは逆の現象が起こると考えられます。」(同)
「79年に起きたことと逆な現象」、すなわち寒冷化が始まる可能性が出てきているのです。

■大気、海流、海氷の変化・変動は周期的に起きている 

地球の気象は複雑な要因で変動しています。
私は人為的二酸化炭素説もまったくの間違いだとは思いませんが、それ以上に大きく地球気候に影響するのは、太陽黒点活動、宇宙線、ミランコビッチ・サイクル、そして海流と大気との関係などだと思っています。
海流や太陽黒点、宇宙線といった自然環境的の要素と人為的だとされる炭酸ガスの温室効果との綱引きで、地球気温は決定されているのではないでしょうか。
ところがIPCCがなにかにつけ二酸化炭酸ガスのことしか言わなかったり、自然的要因を「二酸化炭素のわずか7%ていどの影響しかない」というような過少評価するのが問題だと思っています。
ところが、地球学の本をひもとけば分かるように、大気、海流、海氷の変化・変動は周期的に起きています。
特に世界の海の温度を決定しているのは、北大西洋北部・グリーンランド近辺の水温なのです。
独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)の中村元隆氏「北半球の気候変動要因の解明 グリーンランド海の急激な変化がもたらした北半球の気候変化」のプレスリリースに添えられた図版をみると、大西洋からの温かいメキシコ湾流が北上して、グリーンランド東側のフラム海峡から北極海に流れ込んでいるのが分かります。
画像の説明
このグリーンランド海は、世界の海の温度の大元締めです。ここから流れ出た海流がぐるりと地球全体を循環して、地球全体の海水温を決定するのです。
専門用語で「全地球規模熱塩(ねつえん)循環流」という長い名前がついています。
この全地球規模熱塩循環流は、熱帯、亜熱帯の温かいメキシコ湾流が、グリーンランド海から北極海に行く間に急激に冷やされて深層に沈みこみます。
そしてそのまま、海底付近を這うようにして大西洋を南下し、今度は南極付近の海の深層流と合流して、インド洋と太平洋に流れ込むそうです。
画像の説明
この地球規模の海流の循環で、地球気象で重要なのは「大西洋熱塩循環還流」といって、グリーンランド海とラブラドル海で沈みこんだ後に低緯度に向かって進み熱帯・亜熱帯域でわきあがる大西洋だけの流れです。
これが30年から40年ごとに寒冷化と温暖化を繰り返す「振動」と呼ばれる自然現象を引き起こしています。
この場合の振動とは、私達が使う地震などの震動ではなく、周期的な海流の方向、風の流れ、温度などの繰り返しのことだそうで、「大西洋数十年規模振動」というこれまた長い名前がついています。
この周期に従って、北半球では1940~70年代が寒冷期、1980年代から2010年代までが温暖期となっています。
ということは1980年代を起点とする温暖期は既に30年以上経過しており、寒冷期に向かわねばならないことになります。
この周期的な「大西洋数十年規模振動」の動向が分かれば、今後の気温変動を予測することが可能なわけです。
この大西洋振動以外にも、気象、気候には多くの「振動」的現象があります。
太平洋のエル・ニーニョ現象、ラ・ニーニャ現象、北極振動、そして「北大西洋振動」などがあります。
ゴア氏の「不都合な真実」が評判だった時によく言われた北極海の氷が解けだす現象も、赤祖父俊一氏などの手練の北極圏観測者にいわせれば、このよう振動、あるいは準振動による変化の範囲内だそうです。

■公共政策を誤らせた地球温暖化人為説

米国農業はバイオエタノール(バイエタ)政策という病に冒されています。 もはや狂気と呼んでもいいかもしれません。
ブュシュ政権は、自分がアンチ環境派だったにもかかわらず、2007年に始めたバイエタ政策により、バイエタ生産を当時の50億ガロンから一挙に7倍の350億ガロンに生産拡大する政策をとりました。
この目標に掲げた350億ガロンのバイエタを製造するためには実に122億ブッシェル(※)ものトウモロコシが必要となり、今の米国で生産されるトウモロコシ全量をバイエタに回してもまだ足りない馬鹿げた数字でした。
にもかかわらず、このバイエタ政策が単なる努力目標値や期待値ではなく、法的に再生可能燃料基準(RFS)として義務づけられたためにバイエタには多額の投資資金が流入し、今やトウモロコシを作ることは食糧生産ではなくバイエタ生産であるかのような倒錯した構図が生れてしまいました。
バイエタ政策を始めたのが、バリバリの環境派の対立候補であるアル・ゴアではなく、「環境派なんて、ファックだ」と言いかねない(実際似たことを言ってましたが)ブッシュ・ジュニアだったのは皮肉でした。
代々石油利権を後ろ楯にしてのし上がったブッシュ・ジュニアですら、地球温暖化の既定路線からはずれられなかったのですから、その呪縛がいかに大きいかわかります。
そして現在、バラク・オバマは就任演説で、大統領選で現実にある2ツの危機とひとつの妄想訴えました。
2つの現実とは、米国の財政危機と、破綻寸前のぼろ船に例えられている医療保険制度です。
そして私が「ひとつの妄想」と呼ぶのは、他ならぬ地球温暖化対策でした。
80年代以降、IPCCの科学者とそのロビイストたちは、地球温暖化によるハルマゲドンのシナリオを持って議会を飛び回りました。
「14mの水面上昇が来て南太平洋の島々は沈んでしまいますよ」「北極の氷が溶けてシロクマは絶滅寸前です」「カトリーナみたいなハリケーンが毎年来て海岸沿いには住めなくなります」「毎年気候変動による飢饉が来て飢餓が来ますよ」、エトセトラ、エトセトラ・・・。
はっきり言って妄想の類です。
この妄想がIPCCから「9割の確率」で、「世界中の一流の科学者2000名の叡知を集めた」と言われ、米国元副大統領のイケメンに「科学の出番は終わった。これからは政治の出番だ」とまで言われたらこりゃ説得力あったわけです。
この法螺でゴアはIPCCとノーベル平和賞を共同受賞し、オバマもなにもしないでノーベル平和賞をもらってました。
閑話休題。
その上、第1期の目玉政策をオバマは、本来先行してやるべき政治課題を医療保険制度ではなく、グリーンニューディールこと包括的エネルギー・温暖化法(2008年11月)に置いてしまいました。
保険業界や医薬品業界の頑強な反対に合うのが予想される(実際2期目にオバマは政府機関の一時停止事態を引き起こしていますが)医療保険制度改革ではなく、パッと華やかで新鮮味のあるエコ政策で実績を上げたかったのでしょう。
オバマは09年1月、政府施設から先行して省エネを実施し、原発を増設する一方で、風力や太陽光、バイエタなどの再生可能エネルギー(再エネ)を倍増させて、約50万人の雇用を増大すると表明しました。
また7870億ドル(約72兆円)にのぼる米国史上最大の景気対策のうちから、年間150億ドル(約1兆4000億)円を投資すると宣言しました。
オバマの目論見では、経済と環境の同時解決という画期的な政策になったはずでした。
こんな税金の使い方をしなかったら、第2期オバマ政権の致命傷になった医療保険制度などずっと前に出来上がっていただろうと言われています。
結局、再エネは景気の回復にも雇用の増大にもつながらず、グリーンニューディールは2期目以前にシェールカス革命に救われるようにして秘かにフェードアウトしていきます。
しかし、フェードしないものがありました。それがバイエタです。
バイエタは、作れば作っただけ再生可能燃料基準法で使用されるのが確実なために消滅するどころか、かえって増大していきました。
ゴアが種を蒔き、ブシュが地ならしし、オバマが育てたバイエタだったのです。バイエタは狂ったように穀物を食い散らしたのです。
放っておいたら全米で生産されるトウモロコシは、皆燃やされて車のガスに消えていったことでしょう。
しかも、これで二酸化炭素が現実になくなるわけではなく、単に穀物の生育期の二酸化炭素消費とゼロサムになるだけ、つまりは単なる数字合わせだというのですらから呆れたものです。
バイエタが盛んなブラジルでは熱帯雨林を伐採して、「地球に優しい」バイエタ農産物を作っています。
この歴代の米国大統領の愚行により、バイエタは米国農業にしっかりと食い込み、全世界の穀物市場が高値に貼りついた結果、多くの人々が飢え、数千万人が貧困に逆戻りしました。
一握りの科学者が世界を巻き込んだ地球温暖化人為的二酸化炭素説は、このように人類に大きな傷跡を残して、そして今もなお人類を支配しています。
※ブッシェル(bu)
ヤード・ポンド法の体積単位。かつて穀物を桶に入れて運送したためが由来。日本の米が俵(60㎏)で計算するのと一緒。慣習的単位なので、英米のブッシェルは異なる上に、穀物の種類によっても異なる。
トウモロコシの場合は 1ブッシェルは約14.52kg。
               (筆者は茨城県・行方市在住・農業者)


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