【オルタの視点】

<対談> 原発も沖縄海兵隊基地も要らない!

亀井 静香阿部 知子


【阿部知子】(以下、阿部) 絶対このことから伺いたいと思うことがあります。亀井先生と言えば、知る人ぞ知る、自民党に長くおられて、おそらくアメリカとの関係とか、日本の戦後の安全保障を、もっともご自身も中心になって、担ってこられた方だと思います。
 今度の安倍政権の中で、オバマ大統領が初めてアメリカの現職の大統領として、広島に来られたということで、それで安倍政権の支持率も上がったようなところもあって、国民も大半がこれをよかったと思い、核廃絶ということが、どこまで本当に、どうやるのかということは定まらないとしても、歓迎をしていると言えると思うんです。

 私と亀井先生とはもともと、どうしてご縁をいただいたかというと、日本未来の党とか、みどりの風とか、原発について、あれだけの事故を起こして、ふるさとにも帰れない人を生んで、あまりに過酷であって、やめたほうがいいという話を、先生もしてくれたし私も持っていた。そういう文脈の中で、亀井先生が、原爆投下ということにおいて、日本とアメリカ、特にアメリカに対して、日本がどうそのことを受けとめ、ともに核廃絶に向かっていくか。これは日本とアメリカ、特に広島で、実際には亀井先生は広島がふるさとですから、その亀井先生が、今のこのオバマ訪問をどう思って、どう見ておられるのかということを伺いたいと思っていました。

【亀井静香】(以下、亀井) 原爆を落とされたとき、私は小学校の校庭で、当時は校庭が全部芋畑になってましたから、夏休みだけど農作業で学校に行ってました。ピカッと光って、地響きがして、そのうち山の遠く、山の上から、あのきのこ雲がずーっと上がってくるのを見まして、「どうしたんだろうなぁ」と言っておりました。
 けども、もう何日かしたら、被災地から被爆した人たちが、どんどん逃げてくるというような状況が起きて、私の姉が三次市の女学校に行っていましたが、いわゆる救援活動で、翌日から広島市内に入って、それが原因で、白血球が上下を始めました。兄はちょっとした俳人で、俳句雑誌も主宰していましたが、この兄が残したのが、「白血球 測る挽歌の 乾きかな」という俳句です。これがなぜ覚えているかというと、私の地元はダムの予定地で、小さな農家でしたが、広島市長に庭先に句碑を作っていただいてので覚えているんです。そういう思い出があります。

 私も広島市内の中学に昭和24年から行っていましたが、当時はまだ、太田川の中で泳いでいると人骨がありましたし、コンクリートの建物に、人間の影が放射能を打っているような状況が残っていました。今ではきれいな道になっている100m道路ですが、あそこは泥の野っ原でした。
 そこから復興したのですが、ああいう、まさに国際法違反の残虐非道なことをやって、謝罪をするのが当たり前だけれども、大統領が来るんであれば、少なくとも反省ぐらいは、するのが当たり前なんですよ。それもしないで来る人間はどうですか。広島市の人たちも、国民も、みんなが80%以上は来てよかったって評価していますね。私は卵までぶつける気はないですけれど、冗談じゃないって言うね。そういうところに来るんである以上は、少なくとも反省はしてもらわないとそれは困ると。記者クラブで私は言いました。

 また、アメリカは核開発の予算をどんどん増やしている。現にオバマ大統領自身が、せめて他の保有国との協議もあるけれど、自分の国が、抑止力が落ちるわけじゃないんだから、思い切って、核戦力を縮小するというぐらいのことはやらないと。それはやらないけど、のこのこやってこられちゃったら、私はほんとにばかにされていると思いますね。そういうことです。

【阿部】 さっきちょっと原発の話を出したんですけれども、原発の使用済み燃料を再処理すると、そこにプルトニウムが出てきて、これを日本はやり続けていて、もう今48トン、うち核分裂性プルトニウム32トンということで、日本はこれを何のためにやり続けているのか。
 アメリカが核の不使用と言うことを言明しない中、日本もどんどんプルトニウムを作り続けて、お互い、人類にとっては惨劇を作り出すことでしかない。核エスカレーションになっていくわけですよね。でも私は、「これ、なぜだろう」と考えると、プルトニウムを取り出して、もんじゅで燃やすって言っているけど、(もんじゅは)全然動いていないし、実際には、現実にできないことをやるやると言って、プルトニウムを貯めていくっていうことを考えると、実は自民党の、ずうっと戦後の政治の中で、いつかは核武装をしたい、その能力だけでも、残しておきたい、と、言うことが根っこにあるんじゃないか、と。

 あまりに再処理ということばが不合理で非合理だから、金食い虫だしやめて、本当に日本は唯一の被爆国であれば、再処理をこそやめて、世界に範たれと。私は、アメリカも当然謝罪があるべきだし、日本もやっぱり絶対使っちゃいけない、そのトップランナーにならないといけないと思っているんですけれども、私が見るところ、どうしても今の自民党の中に、戦後、核唯一の被爆国だといいながら、やはり核の使用と言うことを、排除しない。
 例えばこの前、横畠法制局長が、「今の憲法では核兵器の使用は排除されない」と言ったことも含めて、どこかに政治の意思の中に、「核兵器を使うんだ・使えるんだ」という力を残したいと思っているのではないか。長いこと保守の中にいて、率いてこられた先生は、どのように見ておられるのですか。

【亀井】 私は先生のように、理論的に論理的に考えて話をすることはできませんが、簡単に言うと、トイレがないのに、大飯を食らっているという状況でしょう。福島原発事故の後、自民党ももう「さらば原発」とやったんだから、それがのど元を過ぎて、こんな状況になっているのは、簡単に言うと、資本主義という魔物です。いい面もあるんですよ。しかし、この貪欲さというのは、もう金のためなら、すべてを飲み込んでいくというところがある。電力会社は原発が安上がりだと言う。せっかくある既存の施設を再稼働させれば、安く電力が作れるということがあって、再稼働再稼働と言っている。福島第一原発が爆発したときも、なかなか海水を使わなかったでしょ。

【阿部】 そうですね。(原子炉が)使えなくなってしまうから、ということでした。

【亀井】 使えなくなるという、そんなばかな考えが働いたくらい、結局は電力会社の金儲けですよ。各電力会社が膨大な原発マネーを持っていますから、自民党に対する膨大な政治献金、自民党の政治家に対するものもそうですが、ほとんど電力会社のマネーをもらっているんです。私は一文ももらったことはありません。受け取る努力もしない。
 それと研究者、原子力関係の研究者も膨大な研究費をもらっている。マスコミは大変な広告費をもらっている。金漬けになっているんです。電力会社の金漬けです。野党にはいっていないけれど、そういうお金でがんじがらめにされている。電力会社のエゴです。

 今の原子力発電所を再稼働していくためには、原子力規制委員会をクリアしていかなくてはいけないでしょう。また地元の納得を得るためには、それなりの待遇をしなくてはならない。相当な設備投資がかかるんです。原発は安くなくなってしまう。むしろ太陽光だとか、バイオマスだとか、そのほうが安くなったんです。電力会社から見ても、世間から批判される原発よりも、太陽光だとかバイオマスだとかに傾斜した方がいいと言うことになってきている。これはいいことです。放射能が人間の健康にどういう影響を与えるかなんて、誰もわからない。今は福島に避難地域と帰っていいところとあるけれど、これは当てずっぽうです。別に確たる科学的な根拠に基づいて、やっていることではない。だから本当にひどいことをやっている。そういう状況の中で、もう少なくとも、原発とはおさらばするべきです。

 核装備なんて、やると言ったら気違いだと思う。あの石原慎太郎もね、そんなこと必要ないと、言っているでしょ。今の日本で核装備をしないといけないと考えている人はいないでしょう。やったって使えないんだから。使えない兵器を、膨大なお金をかけて作る必要はないというのは、いまの日本人の完璧なコンセンサスだと思いますから、そういうことになっていく心配はない。
 ただ、「核開発能力はあるんだよ」と言って、他の国に対して、保有国に対して、あなた方も削減しろと。「日本だってやろうと思えば、いくらでもやれるんだぞ」と言って、交渉の材料には使えるでしょう。しかし、だからといって、核装備に向けて準備をするなんて、絶対やるべきではないと思います。

【阿部】 能力を見せておくということについては、韓国も能力を見せたくなる、日本も能力を見せるとなると、北朝鮮は能力だけじゃなくて、実際にやるぞって言っていて、大変に、現実には厳しくなっていくことを、私は懸念していますし、何と言っても、もう誰かが「このゲームはやめようよ」「やめだ」と言うべきだと、私は思うんです。

 先生がおっしゃったように、福島の原発事故でもそうですし、これは人体実験に等しいです。また「帰れ、帰れ」って、子どもも甲状腺がんが多発しているし、しかし、因果関係を説明してみろ、と言われても、誰もわからないですよ。自然にできたがんなのか、放射線浴びてできたのか、どういう環境に帰ったからできたのかも。

 少なくとも政治の第一歩は、国民を守るということで、国を守ることの中身は、国民を守ることです。国とは抽象的にあるわけでなく、そこにいる国民を守ることだと思うのですが、いまはなかなか、国民が本当に守られているのか疑問です。熊本で地震があっても、川内原発は止めないし、「まだ大丈夫、まだ大丈夫」って止めないので、私は最近の政治は、本気で国民を守る、と思っているんだろうかと。それはポーズだけで、国民は正直言って二の次、守らなくてもいいと、思ってるんじゃないかと。これは今、特に原発問題では強く思います。

 2つめは、先生にぜひお考えを伺いたいんですけれども、沖縄で20歳の会社員が、殴られ暴行され、殺害され、捨てられた。米軍基地は実はどんな犯罪を起こそうとも、治外法権だから、そこに逃げてしまえば、場合によってはそのまま基地の中から、アメリカに飛んで帰ることもできる。いかにたくさんの事件がうやむやにされたか、先生は警察だからすごくよくおわかりと思います。特に性犯罪の場合は、なかなか立件にならないことをいいことに、繰り返し、女性たちが被害にあってきた。1995年の少女暴行事件もそうでした。

 オバマ大統領が広島に行く前に、深夜に安倍総理とオバマさんが会って、厳重に安倍総理は抗議したと言うけれども、でも強く、不平等条約、治外法権を変えてくれ、変えろ、と言うわけでもなかった。オバマさんは「アメリカの兵隊はアメリカの国民だから、日本には引き渡さない」という非常にストレートに、絶対にアメリカの国民を守るんだという態度だった。彼はそういう大統領でないと、アメリカの大統領として、だめと言われてしまうからです。安倍総理はもっと本当に怒りを持って、女性たちが蹂躙されたんだ、殺されたんだってことを、本当にこの基地のあり方として、71年たった中で、主張すべきだと思ったんです。

【亀井】 私はもっと根源的に、沖縄や本土に基地が必要なのか、必要でないのかということを、こうした技術が進んでいる時代に、世界の政治情勢がどんどん変化している中で、独立国である日本に、本当にアメリカの基地を置かなければならないのかと言うことを、私は日米間で真剣に協議すべきだと思います。何も基地を置く必要はないではないか。グアム島は自分の領土だし、近くにあるんだから、そこでやるのがいいじゃないか、という決着の仕方もある。

 占領時代の延長線上で、日本列島に、特に沖縄に集中して基地を置いているような状況を解消しようと、協議をすべきだと私は思う。基地を置くのが当たり前だと、こういう空気があるのが当たり前だと同じ感覚で捉えているのではないか。なくたっていいんですよ。沖縄で基地がなくなったからといって、日本に何の不都合があるんですか。何にもない。
 それは沖縄県民が、基地経済に頼っている面も一部あるけれど、頼らなくても繁栄していくように、沖縄県民の方も頑張ればいいし、国も支援していけばいい。私は。まず基地が必要なのかどうか。アメリカだって、当時から時代が変わっているんだから、そのことによって、日米関係、友好関係がおかしくなることがないようにするためには、基地は日本から引き揚げる。それでいいと思うんです。

【阿部】 実は2009年に誕生した民主党政権で、民主党と、私は社民党の政審会長で、国民新党の代表が亀井先生で、この3党で、沖縄の辺野古の基地問題や日米地位協定、この治外法権の地位協定を改定するとか、辺野古の基地については、これには先生もずいぶん最後までご尽力いただいたんですね。社民党離脱の原因になったけれども、亀井先生はもっとねばり強く、「いま離脱するんじゃなくて、民主党がアメリカと交渉するように、ねばり強くもっていくべきだ」と、おっしゃっていたのをすごくよく覚えています。あのときの社民党の離脱が、民主党政権がつまづく大きなきっかけになった・・・。

【亀井】 そうですね。

【阿部】 ある意味で政権交代を裏切ったことになったので、有権者にも申し訳ないし、亀井先生が非常に、最後まで福島党首を引き止めてくださって、「何とか、本当に基地の存在をどうするかって言う問題なんだから、この場面ですぐどうこうじゃなくても」と強くおっしゃっていたんですよね。だからもちろん、当然その頃から、今あるような問題と言うのは、本当に基地が必要なのか、特に在日米軍基地の7割が沖縄で、ああいう事件がくり返して起きて、今回はたまたま、あの人は基地の外に住んでいたから、日本の警察が逮捕して身柄を拘束したけれど、それってたまたまなのです。たかがジョギングに行った女性が、殺されて、捨てられたのでは沖縄の人は、おちおち眠れない

【亀井】 そういう問題はあるけれど、私は別に、米軍の兵隊をかばうわけでもないけど、あそこに、5万人くらいいるでしょ、米軍が。そうするとね、その連中をいつも檻の中に入れておく訳にはいかない。外に出ないといけない。その人たちは、アメリカ本土にいても、犯罪を起こしているんですよ。沖縄に来たら急に行儀がよくなるわけではない。水掛け論のような話だが、海兵隊になったら、急に素行がよくなるようなものじゃない。

【阿部】 余計悪くなりますよ。

【亀井】 そういうことを一生懸命議論すること自体が、ある意味では空疎だと思います。日本だって、元海兵隊員がやったようなことを、日本人同士が日本人にやってるじゃないですか。残虐で無残なことを、次から次へとやっている。人間の存在そのものが、残念ながら犯罪を伴うんです。それが異人種から、しかも優先的地位を与えられている異人種がやった場合には、そうでない場合に比べて、激しいハレーションを起こすんです。そう思いませんか。だから根源的に言うと、私は何度も言っていますが、けしからん米兵はアメリカにいたって同じことをやるでしょう。だから簡単に言えば優先的地位に基づいたハレーションを起こすようなことをさせないためには基地を置かせなければいいんです。

【阿部】 シンプルにね。

【亀井】 私は非常に現実的なことを言いますけれど基地を置いて、米兵が来ているのに、こちらに来ているうちだけ、聖職者になりなさいと言えますか。なれっこないのです。

【阿部】 まさに警察官僚でいらっしゃいますね。そうですよ。最近、沖縄の人たちはもうストレートに海兵隊もいらない。基地もいらないと、何が問題なのかを出していますよ。

【亀井】 そういうことです。だから、ないものねだりしちゃだめだってことです。しかも海兵隊なんて、イスラエルに行って命を捨てなければいけないかもしれない基地なのです。イラク戦争もそうだし、荒れてしまうのです。ああいう世界にいると荒れた人間というのは、そういう凶悪犯罪をやりやすくなってしまう。そういうものをいさせること自体が間違っている。すべてグアムに行きなさいといいたい。

【阿部】 駐留なき安保っていうものかもしれませんが・・・実際の戦略的な位置づけから見てもハワイとグアムで十分なんですからね。

【亀井】 私が人に言って誤解されているのは、駐留米軍の立場を擁護していると思うかもしれませんが、擁護しているのではないのです。そんなもんだから、いないようにしたほうが一番いいと言っているのです。

【阿部】 原発も構造が似ているのだけど、原発がないと心配だとか、不安だとか言うのと同じように、主に本土の側が、やっぱり沖縄に基地がないと、安全保障が保てないとか言う。

【亀井】 原発がなければ心細いと思っている国民はいないですよ。そう思っている人は原発マネーに恩恵を受けている原発の周りの人だけです。だって電気は足りているんだから。

【阿部】 素直に考えればそうなりますが、基地も原発もなかなか素直な構造ではない。私が思うに、そうすぱっと言える野党だけではないんです。

【亀井】 民進党もよう言わんでしょう。

【阿部】 よう言わんどころか、地域協定の改定もよう言わない。原発問題もそうです。

【亀井】 だから今の民進党は野党じゃない。

【阿部】 何ですかねえ。

【亀井】 何でしょう。政党じゃないよ。

【阿部】 「まだ生まれたてですから」って言うことにしているんですけど。

【亀井】 生まれたての赤ちゃんだって、本能ぐらいあるけどね、今の民進党は本能もない。

【阿部】 そうなんです。先生の方がより根源的におっしゃっていますね。

【亀井】 もっと言うと、私が言っているのは極端に思われるかもしれないけれど、選挙にしても、基本を言わないからだめなんですよ。基本をきちっと言えば、心に響くところはあるんだけれど、それを言わない。

【阿部】 ちょうど会期末になって、いま先生のご指摘にあったとおりで、民進党の支持率もなかなか上がってこない。このままだと、参議院選挙で与党が勝つ可能性も高い。そこで、野党統一して名簿を作ろうかというような動きもちらっとあったけれど・・・

【亀井】 政治家は信用がなく、政党も信用がないんだから、そういう連中だけが集まってもだめだ。

【阿部】 私も全く同感です。

【亀井】 だから、恥ずかしいことだけれど、民間が先頭に立って、それに政治側がくっついてやるぐらいでないと無党派層はついていかない。ただ民間とやると言っても、学者・文化人を含めて、ある程度リーダーがいて、それに農協や生協、医師会に、この際決起しようという人がいるんだから、そういう人を束ねて、そこに維新や社民や生活がいっしょになって大きなかたまりでやれば、無党派層も支持しようとなる。

【阿部】 先だって、山崎拓先生と中国に行きました。いろんな話を聞いて、私自身、山崎先生とは一緒にいた時代もあったけど、あんまり近くなかった。遠くから見ていたので、どういう方かわからなかったけれども、やっぱり場面場面で、非常にことばが的確でした。自民党の政治で、YKKと言われた山崎さん、小泉さん、加藤さんとみんな違うのですが、それがひとつのYKKだったし、いろいろその中で、あるときは腹を割り、あるときは対立し、でも、動いて動かして来た。
 私は政権交代も、民主党と一緒にやったけれども、そういう知恵がないというか、経験なのか、どうやって回していくかとい言うことが、すごくトレーニングされていないから、みんなそれぞれぽんぽん言って、結果的には、鳩山さんもクビ、菅さんもクビ、小沢さんも排除となって、何も知恵は残らずに、学芸会的になってしまっている。

【亀井】 今の民進党も仕方ない。岡田さんもいいところがないわけではない。ふらふらするやつが多い中で、一度座ったら動かない。そこはいいけれども、悪いのは、座った方向が間違ってても、ちゃんと座り直すことができないのがよくないところだと、本人に言っている。だけど人材がいなくなったね。玉木雄一郎とか大塚耕平なんか、何人かいるが、理屈を言わせるとうまいけれど、予算委員会でも理屈を言い合うだけで相手を追い詰めることを言わない。

【阿部】 だから学芸会って私は言ってるんです。

【亀井】 あれじゃあしょうがない。テレビが映ってかっこいいことを言っていれば、それでいいと思ってるんだろうが追い詰めていかないとね。

【阿部】 多くの国民が同じことを感じていると思います。だから、逆に言うと、どれだけ問題があっても、自民党の支持率の方が高い。それじゃあ民進党に任せられるかって聞いたときに、ちょっとこの迫力不足っていうか、言っていることは正しいかもしれないけれど、やっぱりそこにある気迫とか、本当に自分たちだったらこうやるんだ、というような、どんな小さいことでもいいけれど、それが見えてこないから、その時々、週刊誌が騒ぐことが何か重要なテーマになって、そういう政治になってしまっている。

【亀井】 結局、人間は、強い者に惹かれるんですよ。支配されたいという欲望も持っているんですよ。アメリカの現象もそうでしょう。トランプ現象がそうです。今度はバカとアホウの絡み合いと言われるような、気違いがからんでいるから、しょうがない。トランプがはやっているのも結局そうですよ。強いものに巻かれる。西部劇と一緒です。だから、サンダース陣営というのが民主党で敗れたら、共和党のトランプにいってしまう。トランプが大統領になるのは間違いないでしょう。人間の、これは本能みたいなものではないか。そういうところにつけ込んで、うまく操作されると、いわゆる民主主義的手続きを踏んで、きっとヒットラーとかが出てきてしまう。

【阿部】 非常に危機感を覚えます。

【亀井】 今の日本だってそうでしょ。今のジャーナリズムもそうですよ。物言えば唇寒し。強烈な圧力が加わらなくても、自主規制で。

【阿部】 そうですね、ほとんどが自主規制。民進党も自主規制ですから、原発もやめるって言わない、地位協定も変えるって言わない。みんな自主規制なの。別に誰がダメって言っているわけでもないんです。

【亀井】 そういうことを言ってしまったら、極端なことを言ったら、嫌われる、損するみたいな、感じがある。

【阿部】 政治が萎縮してね。政治が萎縮する理由は根っこがないからだと思うんですね。今日本がどこへ行くか、どうなっていくか、世界もそうですけれども、今ここで考えないと、これはもうがらがらと崩れていく世界と、浮き草になる日本と、もう目に見えるようで、地方の疲弊があって、TPPなんかとんでもない売国ですよ。本当に関税自主権がない。

【亀井】 河野洋平ぐらいの人が完璧にアメリカにやられてしまうんです。私は歴史の証人ですから。私は日米交渉、航空交渉と自動車交渉を担当しまして、特に航空交渉は私が先頭に立って、自動車交渉は橋本通産大臣と一緒にやったんですが、その間、河野洋平は「中身は関係ない、アメリカのおっしゃるとおりにしてくれ」と、そればっかり。どれだけ私の交渉を妨害したか。許せないですよ、河野洋平は。「日米関係が大変なことになる」と言って、アメリカの言う通りだけにしか、それ以上、聞くつもりがないんだから。
 日米自動車協議の時も、最後の交渉はジュネーブでやるというので、橋本龍太郎さんが出発する前の晩に、官邸で村山総理のもとで、総理と官房長官と、橋本さんと河野大臣と私と、5人で最後の協議をやりました。当時、車検の問題があった。アメリカが車検を廃止してくれれば、全部飲むと言った。だから、「運輸大臣、車検を廃止してくれ。決裂したら大変なことになる」と。自動車の分野というのはなかなか難しく、これを決めてくれれば全部決着すると。2時間くらい同じことをくり返していたんだけど、それで譲るわけに行かないと。そのとき言ったのは、河野大臣、自動車の部品調達の問題と、交通安全は別の話だと。交通安全を犠牲にするわけにいかない。日米航空交渉のときもフェデラルエクスプレスにアジアの空を全部やるような話をしていて、こんな売国奴ですよ。

【阿部】 でも今のTPP交渉とはずいぶん違いますね。こんなに主体性のない、守るべきは守ると言いながらも、何も守られていない。

【亀井】 TPPは期限日が近くなったところに、国民を行列させておいて、早くこのバスに乗らないと言っておきながら、乗ってみると、案内人がいなくなってしまって。
【阿部】 バスも出ないし。

【亀井】 それで乗せられてしまって、運転士と車掌が、どこに行ったらいいかわからない。運転士と車掌まで、そのバスを動かすのを反対、と言い出した。こんな日本ですよ。

【阿部】 大変なことです。

【亀井】 それを民進党は、反対と言わないでぐしゃぐしゃしている。

【阿部】 何か経済がよくなると幻想しているのではないでしょうか。国が壊れたら経済なんかないのに。

【亀井】 今の日本は残念ながら、幕末と一緒で、黒船が来たんです。独立国家であれば、尊皇攘夷でやったんだけど、やっぱり、押し寄せてきたら、どう対応するか考えないといけない。今の日本は、黒船と対峙するんじゃなくて、黒船に乗っかって、日本を攻めてきているんだ。

【阿部】 そうですね。国内経済は破壊されるし。

【亀井】 こんな国は滅びる。

【阿部】 でも滅びては困るので、どこから反撃していくか。

【亀井】 国が崩れていって、日本人の心が萎えてきているが、そうあっちゃいけないんです。大変だけど。あなたもジャンヌ・ダルクのような気持ちでやりなさい。

【阿部】 いつもそう言われていますが。がんばります。

・亀井 静香  衆議院議員(13期)・無所属・元国民新党代表・元運輸大臣・元自民党政調会長
・阿部 知子  衆議院議員(6期)・民進党・元日本未来の党代表・元社民党政調会長


最新号トップ掲載号トップ直前のページへ戻るページのトップバックナンバー執筆者一覧