■刊行物紹介  

『愚かな国の、しなやかな市民』

  著者 横田克巳 ほんの木刊(300頁) 定価1600円+税  
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著者は、みどり生協(現生活クラブ生協・神奈川)初代理事長で、現在は生活クラ ブ生協・神奈川の名誉顧問をつとめている。  この本は、著者のおいたち・神奈川ネットワーク運動の理念と実践、ワーカーズコ レクティブなど生活クラブ運動が掲げる新しい理念についてわかりやすく説明した書 物である。  私鉄労働者として、労働組合運動に従事していた著者が、沿線住民からストライキ が支持されなかったショックから地域活動に目覚め、岩根邦雄氏が世田谷ではじめた 生活クラブ運動にいかに身を挺していくようになったかという著者のおいたちの部分 は、一つの戦後社会運動史の証言として非常に面白い。また、なじみの薄いネット ワーク運動や生活クラブ運動の資料としても価値が高い本である。ただ、気になった のは、カタカナ用語や難しい熟語が、生活クラブ運動の理念の中に多いことである。 著者は、「常識(用語も含む)に対して、非常識を実践している力が新しい社会関係 を拓き、『良識』に転化できるようにしたいと考え、あえて横文字や造語でチャレン ジするのです」(129頁)と述べているが、評者個人の感想としては、もう少し誰に でもわかりやすい言葉を使っていかないと、運動に幅を持たせることが出来ないので はないかという印象をうけた。(I.O)