【コラム】
酔生夢死

再選に失敗したら「お笑い芸人」だな

岡田 充

 「あいつなんか首にしてよかったぜ。アダ名はケイオス(混沌)だったけど、やつが嫌いだったから“Mad Dog(狂犬)”に変えてやったさ」。こうツイートするのはトランプ米大統領。けなしまくった「あいつ」とは、2019年1月まで国防長官を務めていたジェームズ・マティス氏。
 反人種差別デモが全米に拡大した6月初め、マティスが米誌に「トランプは米国人を団結させようとしないばかりか、そのふりさえしない。こんな大統領は初めてだよ」と痛烈批判したことへの「お返し」。それにしても、自分が指名した「世界最強の軍隊」の責任者を、まるで子供のようにけなしまくるとは。
 ツイッター大統領の本領はこれではすまない。ボルトン前大統領補佐官(国家安全保障担当)が6月末トランプ暴露本を出すと、「あいつが唯一良かったのは、狂っていると思われていたことだね」と、立て続けにツイートした。

 そのトランプ政権は、コロナ・ウイルスから香港、南シナ海問題とあらゆるテーマで中国攻撃を仕掛けている。4か月後に迫る大統領選で、民主党のバイデン候補に差をつけられ、劣勢挽回のためと考えていいだろう。日本を含め西側メディアはそんな中国攻撃の大合唱に唱和するが、ボルトン本のさわりを見れば、米中対立をマジに論じるのはばからしくなる。
 例えば、2019年6月末大阪で行われた米中首脳会談。トランプは習近平国家主席を「中国史で最も偉大な指導者」と持ち上げた。その大統領は6月17日、新疆ウイグル族弾圧に関与した中国当局者への制裁に道を開くウイグル人権法に署名する。だが大阪での首脳会談では習に「(ウイグル人収容)施設の建設を進めた方がいい」と述べ、米中貿易協議を優先し香港デモを擁護しないとまで言った、とボルトンは暴露する。本音はどちらなのか。

 「トランプが秋の新学期に学校に戻って勉強し直すのを、大多数が支持する世論調査結果が出た」と書くのは、米人気コラムニスト、アンディ・ウォロウィッツ。彼は「トランプを学校に戻すコストは高いけど、彼の無教育のコストのほうがデカい」と書き、再教育科目に「科学」「数学」はもちろん、「歴史」「地理」それに「国語」(米語)と全科目を挙げるのだった。

 大統領のツイートの内容は、「好き」「嫌い」の感情だけから、自分の言動を正当化するものが多い。「小学校5年生」並みだが、それを「受けてるゼ」とばかりドヤ顔で口に出されると、思わず吹き出してしまう。彼にはお笑い芸人の素養が備わっていると思う。再選に失敗したら、是非とも「お笑い芸人」としてデビューして欲しい。
 日本語の吹き替えは誰がいい? そうねえ由利徹、うん、伴淳の手もある。「それって誰?」と首をひねったそこの人! U-TUBEで当たってみて。

画像の説明
  通販で売っている「ものまねマスク Mr.トランプ」

 (共同通信客員論説委員)
 
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