■俳句  太田 澪々子  富田 昌弘

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◇太田 澪々子
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  遺影にも けふの表情 額の花

  惜春や このひとり身を よしとして

  どの鳥も 二羽でゆくなり 涅槃西風

  囀りや ろくろの粘土 盛り上がる

  香炉も「そいや」にゆれる 三社祭

  十薬や 覗けど 空らの 郵便受

  薫風や 若宮大路 海へ貫け

  虹二重 無人の島へ渡りたし

  ばん滑走 機銃掃射の 水しぶき

  尾をすてて するする生きる 蜥蜴かな

  蛸壺は蛸の 病床六尺か

  大枇杷の熟るる ふるさと 海明し

  真白なる滝のしぶきに禊がるる

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◇富田 昌弘
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  父の日や画面はみ出す父の顔

  母の日や親子で捏ねるパンの素地

  胃袋をカメラが覗く早梅雨

  更衣しても一病つきまとふ

  夏蝶や六法踏める石舞台

  交番で暴れをりぬ火取り虫

  ベルト穴一つ縮みし夏の果て

  静寂(しじま)とは園のあやめの揺れぬ刻(とき)