【視点】

似ている!! コロナ禍でも五輪、大地震でも万博

山口 道宏

能登が大変だ。
 1ケ月が経っても被災地では「水が」「水が」の断水がつづく。住み慣れた家は壊れ、仮設住宅にも入れず、酷寒のなか納屋、車中泊、ビニールハウス、体育館、避難所でのくらしは終わらない。死者241人、不明者11人(2.7現在)。さらに不自由な日々は、心配された震災関連死も。被害の大きかった珠洲市は原発誘致を反対してよかったが、同じく震度7の被災地の志賀原発(志賀町)は「危なかった」「大事にいたっていない」?? といい、地元の誰もが「ふくしま」の、あの光景が頭をよぎったという。 

遠い話ではない。
 コロナ禍の無観客開催、それでもやるってかの「東京2020五輪」だった(2021.7.23-8.8)。大会経費は分かっているだけでも3.7兆円超(会計検査院調べ)だ。当初見積もりの7.340億円などアッという間にすっ飛んだ。どこが「コンパクトな五輪」なのか。コロナを隠れ蓑に税金の使い放題となった格好だが、その後に効果の検証はあったのか !? 

似ている!! 五輪と万博だ。
 状況はコロナと震災で、いずれも優先度は、国民の生命(いのち)より一部政治家と群がる者の汚職構造か。
 2025年に開催を予定する「大阪・関西万博」の費用の「全体像」は政府発表によれば直接関係するインフラ整備に国庫負担をふくめ8.390億円、その他に会場建設費など万博に「直接資する」国家負担は1.647億円という(2023.12現在)。すなわち合計1兆円超になる計算だ。膨大な公費投入はすべてが税金だ。
 しかし「見える化」しない別枠の予算があった。 地震・浸水対策など「関連インフラ整備」として前記の8.390億円をふくむ国・自治体・民間負担はなんと約9.7兆円と伝えられ、本当の狙いは「(万博あとの) カジノだから」と噂される。
 ここにきて気になるニュースが飛び込んできた。「維新&吉本 蜜月41億円 万博強行の裏に」(週刊文春2024.2.8)。この種の国策イベントに「蜜月」「利権」「特需」「裏金」はつきものだが、東京五輪では電通が、万博は吉本なのか ??  おひざ元の「日本維新の会」(維新)の名が挙がっているのはなぜか。
 維新の馬場代表は、こう公言していた。万博で赤字が生じた場合、誘致してきた維新はどうする? の質問に「政治的な責任はある」「責任の取り方は維新のメンバーで協議して決めたい」「国と大阪府・市、経済界の3者で話し合ってもらわなければならない」(2024.1.16 日本外国特派員協会)。

はぁ?? とんでもない勘違いだ。
 万博開催の主催者はいつから維新になったのか。学園祭ではない。いうまでもなく開催には大阪府・市民の税金だけではない。既に多額の国民の血税が投入されている。世界最大級の無駄使いが囁かれる「政治的な責任の取り方」は、開催決定に遡って、維新への「政党助成金」(例 33億円 2023年)の全て及び蓄財分に加え、同じく「年間歳費など」(国会議員一人当たり約4.000万円×議員数)の全額を「国庫返還する」は少なくとも公党のケジメとして考えられるが、これとて総てが税金だ。
 よもや大阪府・市民に追加の徴収を迫ることになるか。それにしても、なぜいま維新は海外メディアに「責任」が問われるのか!!

 さて、被災地の石川県馳知事が、件(くだん)の「大阪・関西万博」を「ぜひ、やって」とか。異様ともいえる「万博押し」は復興の足掛かりという。
 維新の馬場代表もまた、万博廃止論に反論すると「(万博は)震災復興につながるから」と語っている。
 震災対応では「後手後手」と指摘され、馳知事が公に姿を現したのも震災後10日が経ってのこと。現地対応の困難さを、被災地の地形や高齢化にあると平然と答えた様子が報じられると、被災者の痛みを増幅させていた。
 その馳知事だが、今回の地震発生の2ケ月前、こんな発言でも話題の人に。
 「官房機密費」でアルバム作成、それをIOC委員全員への東京招致の贈答品に充てたと。安部総理(当時)からは「金ならいくらでも」「官房機密費もあるから」と背中を押されたという。同知事は五輪招致推進本部長(当時)だった。
 新聞協会賞の『五輪汚職』(読売新聞取材班・中央公論新社)を引くまでもなく、五輪組織委員会、電通、政治家の関係性は、およそ本来、五輪が持つすがすがしさとは縁遠いものだった。

 「始めたらやめられない? 青島幸男氏の「中止」決断から万博を考える」(毎日新聞2024.2.5)。30年前、世界都市博覧会(「都市博」)を中止決定したのは開幕1年前の1995年で、新しく都知事に就任した故・青島幸男だった。
 イケイケどんどんの「臨海副都心開発」の抜本見直しから「都市博は意味を失っている」と決断。政治の世界では中止の決定は進めることの数倍のストレスというが、青島は実行した。

やっぱり似ている!! 
 東京五輪は「東北復興」で始まり、大阪万博は「のと復興」を掲げる。
 「それでも万博」は「それでも五輪」と律義なほどにそっくりだ。

2024.2.25記   山口道宏 ジャーナリスト 元星槎大学教授

(2024.3.20)
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