【メイ・ギブスとガムナッツベイビーの仲間たち】(27)

サングルポットとカッドゥルパイの冒険㉒

吉川 佐知子

 ふと見るとジョンドーリィとアンが大きなドラゴンに乗って、可愛い小さな二匹のドラゴンを従えて彼等の方に近付いてきます。
 “まぁ! いたずらっ子のナッツじゃないの。何処かへ行ってしまったのかと思ったわ。ドーリィがあなた達に素敵なプレゼントを持って来たのよ。”
 ほぐれ花とサングルポットは怖かった事はすっかり忘れてしまって大喜びです。そして小さなドラゴンに飛び乗って一緒に帰りました。
 アザラシはアンの所へ既に帰っていて、彼女にナッツ達が遠くへ行ってウロウロするのがどんなに危ない事かと話しています。

 “さて”アンはドラゴンから降りながら“大急ぎで着替えなくちゃ、ダンスに行かないといけないわ”
 魚族は人間の社会とよく似ています。ダンスは大きな催し物なのです。全ての魚族がやって来ます。バンドーイルカ族夫妻と娘達―硬皮魚族氏―ひらめ族夫妻ピッグフィッシュ氏やはんてんのあるピッグフィッシュ氏その従兄―赤いぼら―大きな魚達―鯛―鮭―グロパーファミリー―大きな黒いハタ族―たら夫人―ボラ―スマートな魚トムは貴族的な親族達と一緒に―法律家ベーカー氏夫人―アンの従妹ミスオキシーへリング―そして色んな魚族。

 ほぐれ花とサングルポットは小さな椅子に座ってダンスを見ました。大きなホールは燐光計で照らされてダンサーの上にあてられ浮かび上がらせています。トランペットとドラムの奏者も素晴らしい演奏です。殆んどのドレスが美しく出来上がっています。というのは美しくヒレで縁取られているのです。小魚達がダンサーと一緒にその間を泳ぎ回ってゴージャスなデコレーションとなっています。

 “夕飯を見に来てね”とフリリーがダンサーの間からいいます。
 “あなたどこにいるの?”とほぐれ花が聞くと
 “アンが夕飯の部屋を見張っていてね、デコレーションが何処かに行ってしまわないように。それで忙しかったのよ”
 “まぁなんと。私達の森と同じように花畑を作っているの? でも動き回らないわよ”
 “そうするのよ”とフリリー。

 彼等が食事部屋へ行くとフリリーは真っ先に突き進み“おやまぁ!”と叫びました。“ちょっとまぁ、あのきゅうりを見て”
 一番可愛らしい三本のきゅうりがテーブルを乗り越えてドアを押さえ込んでいます。
 “あの真ん中の花瓶が動いたんだ”とフリリーは文句をいいながらテーブルを直し“静かに座ってなさい”といって、きれいな植物をヒレで叩きます。そしてテーブルのまわりを注意深く泳ぎながら自分の鼻で元通りにきちんと押していきました。

 “おいフリリー”とサングルポットが突然思い出した事をいいます。
 “今日午後、変な年寄りを見たよ。そして彼が、ジョンドーリィは食いしん坊で残忍な奴だっていっていたよ”
 サングルポットがそういった時、海百合の間で何かが揺れたようです。振り向くと大きなジョンドーリィの光った眼がこちらをジッとみつめているのです。彼の口は食べ物でいっぱいですが、うんと怒っているようで、ほぐれ花は逃げ出したい気分です。フリリーは“静かに、ここに居て”と小声でいいます。

 “もし良かったらどうぞ”とフリリーがジョンドーリィにいいます。“ミスアンはこの食卓であなたが満足していたと知ったら喜ぶと思いますよ”
 “アンにいってくれ”とジョンドーリィ“二人のナッツがテーブルのセンターに座っていたよといってやった方がよかろうよ”
 そして怖い笑顔で大きなあごを上下に動かしながら、その部屋から出ていきました。

 フリリーは真っ青になって“小さな友達よ、すぐ行った方がいい。―私と一緒においで―すぐに―大急ぎで”そういいながら家の裏から外へ出て海底へ行きます。もうそこには乗って来た馬もドラゴンもいません。
 “僕らはどうしたらいいのかな”とサングルポットがささやくと
 “わからないよ”“考えられないよ”とフリリー。

 “あ、もしオベーリアを探し出せたらねぇ。あの老人がオベーリアを探し出せといっていたわね”とほぐれ花
 “なんですって? 知っているよ。大急ぎでオベーリアの話を聞かせてくれ”それでサングルポットは大急ぎで話しました。
 “オベーリアの居所はよく知っているよ。早く探し出そう。早く早くついて来て”とフリリーがいいます。

 (詩人)

(2021.08.20)
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