【メイ・ギブスとガムナッツベイビーの仲間たち】(20)

サングルポットとカッドゥルパイの冒険⑯

吉川 佐知子

 あー しかしとかげさんの船がそばに近づいたとき 風が大きなスナッグの帆をいっぱいに張って海に出て行ってしまったのです。とかげさんははるか彼方に行く船をじっと睨みつけて目は死んでしまったようです。歯は怒りにもえてうなっています。
 “おー ガム ガム ガム!” とうなりながら悲しみと怒りで押しつぶされそうです。と云うのも あの船長を知っているからなのです。
 あの大きな船の船長こそ一番の悪者のバンクシャーなのです。
 “それに誰もそのことを知らないのだ”と とかげさんは叫びます。

 空気は新鮮で 波は静かに揺れ キラキラと日は輝き まるで青い海に大きな緑色の蝶のようにスナッグは航海し続けます。誰もが笑ったりおしゃべりしたりしながら デッキで揺られながら歩き回っています。サングルポットとカッドゥルパイとほぐれ花もとても興奮して気持ちよく すぐに可哀そうなとかげさんを忘れてしまいました。
 でも小さな波がだんだん大きくなって 風が強くなってきていることに気が付きませんでした

 “なんかゴムまりみたいね” とほぐれ花
 “木のてっぺんだー” とカドルパイ
 “滑るぞー” とサングルポット

 そうしてる間にも波はだんだん大きくなり 風が強くなっていることに気が付きません。

 “ごらんよ あの人達 船縁につかまって何を見ているのかな” とカッドゥルパイ
 “おー なんだか変な気分だよ” とサングルポット “わたしもよ” とほぐれ花
 “おなかの具合が悪いようだ” とカッドゥルパイ
 “変な気持ちだ 変な気持ちだ” とサングルポット
 “私寝台に行こうかしら” とほぐれ花

 しかしちょうどその時スナッグは巨大な波に乗り上げて みんなしりもちをついてデッキの縁まで滑り 今度は反対側に乗り上げたので みんなまたそちらの場所に滑っていきました。

 “こんなの嫌だわ” とほぐれ花 ”僕だっていやだよ“ とサングルポット “僕もだよ” カッドゥルパイ
 しかし今度は違いました。彼らは飛び跳ねて 暗い深い穴の羽毛の上に落ちて行ったのです。

 (詩人)

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