【メイ・ギブスとガムナッツベイビーの仲間たち】

(14)サングルポットとカッドゥルパイの冒険⑨
ほぐれ花

吉川 佐知子

 それでほぐれ花はサングルポットの方へ“大急ぎで隠れるのよ”と叫びながら近くの木の穴へ連れていきました。丁度そこについたとき、巨大な犬が草木をかきわけてやってきて罠に向かって吠えたてます。すぐ後ろには大きな人間が来ました。

 “なんと、ジャイアントナットみたいだ”とサングルポット。
 “僕らの目と同じような目を持ってるよ”
 “みてよ、なにやっているんだろう”カッドゥルパイはつぶやきながら“ああ! 可哀そうなポッサムを殺そうとしてる”

 でも違いました。大きな人間は強い力で罠を開け、哀れなポッサムを優しく取り出し折れた足を縛ってから“こんな腐った罠”といって小川に投げ込みました。それから“おいで”と犬をよんで木立を抜けていきました。

 サングルポットとカッドゥルパイとほぐれ花はびっくりしました。巨大な人間と犬が行ってしまうと大急ぎでポッサムに駆け寄りました。ポッサムは目を開けて喜んで水を飲みました。すぐに彼はよくなるでしょう。ほぐれ花がポッサムに付き添います。

 “さて”サングルポットはまた最初の道に出ると“これで人間も見たんだね”
 “そうだよ”とカッドゥルパイ。
 “親切なんだね”とサングルポット。
 “人間はみんな森の者たちに親切だといいんだけどね”とカッドゥルパイ。

 そうして歩いているうちにカッドゥルパイはサングルポットの新しい洋服とステッキに気が付きます。
 “おお!サングルポット、どうしたんだよ”“洋服を着たのさ。この辺では皆着てるだろう”“そうだね”カッドゥルパイは戸惑いながら“僕もひらひらしたのを買わなくちゃ”“もちろんだよ。これから一緒に行こうよ”とサングルポット。

 そこで二人はおじさんの店に戻ってカッドゥルパイの洋服を買い、そして反り返って とても偉そうに歩いていきました。
 辺りは暗くなってきて、虫たちは店に明かりをつけています。二人が蜘蛛会社の綺麗なウインドウを見ているとき、可愛い女の子が通り過ぎます。サングルポットは新しい洋服とステッキを持っているのでよかったとホッとします。

 それはリリーピリー、女優です。大好きなブルドッグ蟻を連れています。彼女がサングルポットとカッドゥルパイのほうをみたので、カッドゥルパイは“なんと立派なブルドッグ!”と言って皆でにこにこブルドッグをなでたりしましたが、知らない人からいじられるのが嫌いな蟻はサングルポットの新しい洋服のしっぽをぐっとつかみます。カッドゥルパイはブルドッグのしっぽをつかみ引っ張ります。そしてリリーピリーはまるいカッドゥルパイの腰をつかみ引っ張ります。
 サングルポットは落っこちないように構えていましたが、みんなが引っ張るので、サングルポットの新しい洋服が裂けて、みんなで落っこちていきます。丁度とかげさんが、そのコーナーに駆けつけてきた時です。それでみんなで、とかげさんを巻き込んで転がり、忙しい花夫人の洗濯日に、食事の上へ落ちていきました。

 こんなことが起こっているとき、リリーピリーのお父さんが車で通りかかっていました。彼はお金持ちで、いつもたくさん食べて肥っています。そして みんなが転がり落ちるのを見て大笑いしながら言いました。“今のこと、みんな新しい映画にしたよ、皆さんは俳優だよ”
 彼はサングルポットとカッドゥルパイの手を握り、映画館のチケットを渡しました。それからリリーピリーとブルドッグを連れて行ってしまいました。彼はリリーピリーのお父さんとしては姿がまるで似ていませんが、そんなことはよくあることです。

 (詩人)

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