【コラム】
大原雄の『流儀』

* コロナ禍の中で…、歌舞伎風景(2)

 ………アルベール・カミュ「異邦人」への想いを込めて
大原 雄

★ 梨園にも、コロナ感染が、飛び火

2020年11月2日の興行初日から国立劇場に出勤中の孝太郎は、「彦山権現誓助剣 毛谷村」で、一味斎娘お園を演じていた。この月は、10日と18日が国立劇場の休演日だから、この日、11月22日には、孝太郎は、今月の初日から数えて19回目のお園を演じる予定であった。

歌舞伎役者にも感染者が出た。松嶋屋の御曹司・片岡孝太郎である。「濃厚接触者」は、いるのか。いるとしたら誰なのか。舞台で、楽屋で、感染者集団(クラスター)は出ていないのか。
出勤の朝、孝太郎は、体調の異変を感じた。未明に発熱があった。微熱だったが、日本俳優協会の主治医の診察・指導のもと、東京の国立国際医療研究所センター病院外来へ出向き、PCR検査・インフルエンザ検査を受けた。その結果、コロナウイルスの陽性反応が出たため、彼は、独立行政法人日本芸術文化振興会・国立劇場・松竹などの関係者に報告・相談・検討したことだろう(この辺りの経緯は、のちに述べる)。その結果、急遽、孝太郎は、22日の第二部から出演を取りやめることになった。さらに、第二部全体が、25日の千秋楽までの4日間の公演そのものが中止されることになった。

「彦山権現誓助剣 毛谷村」には、孝太郎の実父・仁左衛門が、主役の毛谷村六助として出演していた。仁左衛門は、孝太郎の「濃厚接触者」として認定された。この結果、仁左衛門は、それ以降、出演者として規制を受けることになり、12月の京都南座の舞台(「熊谷陣屋」)の初日、5日、6日の2日間休演となった。こちらの代役は、錦之助。仁左衛門は、7日から出演した。2日に退院した孝太郎も、10日から、南座の舞台に復帰した。

<仁左衛門の覚悟>

コロナ禍は、歌舞伎に限らず、いわば水面下にあったいろいろな課題を水面上に浮かび上がらせている(顕在化)。伝統歌舞伎ゆえの、従来の演出の良さを改めて強調する歌舞伎役者の弁にも耳を傾けておかなければならないだろう。例えば、孝太郎の父親・十五代目片岡仁左衛門は、新聞のインタビューに次のように答えている。仁左衛門のインタビュー記事(9・24付け、朝日新聞の夕刊記事を参照、一部は引用した)の概要を提示しておこう。

歌舞伎上演はコロナ禍の下、新たな制約が多くなった。例えば、花道で科白を言えず、長い演目は上演出来ない。「石切梶原」も10分以上縮める、という(「石切梶原」は、歌舞伎座「十月歌舞伎」第三部の演目)。
「こういう芝居ってね、床の間のように、一見無駄なところが大事でね。あんまり合理主義にカットしていくとつまらなくなってしまう」。見せ場での科白の流れや強弱も工夫する。「いまの私を生で見ていただきたい。配信では空気が伝わらない」からだ、と仁左衛門は語る。
新しい動き。つまり、映像化やデジタル志向の中堅、若手の歌舞伎役者がいる一方で、仁左衛門のように「70歳半ば、1時間のウオーキングを日課にする」というフィジカル対応派の役者もいるのである。

コロナ禍は、突然、私たちを襲ってきた。想定外の状況。それに対する、いわば、「緊急避難」的な状況の中で、さまざまな課題があることをウイルスは私たちに気づかせてくれた。それに対する私たちの対応策も、当面は、いわば、弥縫策的な対応として、取り敢えず提案されている、という嫌いがある。私たちは、積極的に思いついた弥縫策を次々と提案・実施・検証して、対応策として鍛えながら、新たな活動方式を皆で成長させていかなければならないだろう。

<玉三郎も「濃厚接触者」>

また、前日の21日に孝太郎と会っていたという玉三郎も濃厚接触者として確認され、12月歌舞伎座の舞台(「日本振袖始」)を一部期間休演とされ、出演が叶わなかった。こちらの代役は、菊之助。玉三郎は、9日から出演した。

贅言;「濃厚接触者」とは、行政の定義によると、新型コロナウイルスに感染していることが確認された人(以下、感染者)と近距離で接触、或いは長時間接触し、感染の可能性が相対的に高くなっている人。必要な感染予防策をせずに手で相手(感染者)に触れること、または対面で互いに手を伸ばしたら届く距離(1m程度以内)で15分以上接触があった場合は、濃厚接触者と確認される、という。濃厚接触者は、検査対象者として、「PCR検査」(以下、検査)を受ける。陰性だった場合にも、濃厚接触者は「患者(感染者)」の感染可能期間の最終曝露日から14日間(健康観察期間)は健康状態に注意を払い、自宅で待機する。この健康観察期間中に何らかの症状が認められた場合には、改めて検査を直ちに実施する。

中でも、歌舞伎座は、既に述べたように、「厳戒態勢」の中で継続して上演を続けており、出演者に感染者が出ても、「観客や他部の出演者・スタッフには波及しない態勢をとっている」という(12・3付け、朝日新聞参照)。

このように、梨園にもコロナ禍をもたらしたコロナウイルスは、日本列島をますます分厚く覆い尽くそうとしているように見える。勢いが、なかなか衰えないどころか、その後も増え続けている。

★ 歌舞伎座の上演形態が元に戻るのは、いつ頃か

歌舞伎座の八月歌舞伎では、観客総入れ替え4部制という厳戒公演態勢のコロナ禍対策を打ち出した。コロナに対する、いわば「小手調べ」に成功した歌舞伎座は、九月歌舞伎からは、若手、花形の役者に加えて、ベテラン、中堅の役者も登場し始めた。

歌舞伎座九月歌舞伎
 第一部(午前11時開演)の演目は、「寿曽我対面」。主な配役は、工藤祐経(梅玉)、曽我五郎(松緑)、曽我十郎(錦之助)鬼王新左衛門(歌六)、大磯の虎(魁春)、化粧坂少将(米吉)ほか。
 第二部(午後1時40分開演)の演目は、「かさね」。主な配役は、与右衛門(幸四郎)、かさね(猿之助)ほか。
 第三部(午後4時15分開演)の演目は、「引窓」。主な配役は、濡髪長五郎(吉右衛門)、南与兵衛(菊之助)、お早(雀右衛門)、お幸(東蔵)ほか。
 第四部(午後7時15分開演)の演目は、「口上 鷺娘」。配役は、鷺の精(玉三郎)。「映像×舞踊」特別公演。

十月歌舞伎では、九月歌舞伎に続いて、若手、花形、ベテラン、中堅、長老の役者が登場。

十月歌舞伎
 第一部(午前11時開演)の演目は、「京人形」。主な配役は、左甚五郎(芝翫)女房おとく(門之助)、娘おみつ・実は義照妹井筒姫(新悟)、奴照平(中村福之助)、栗山大蔵(松江)、京人形の精(七之助)ほか。
 第二部(午後1時30分開演)の演目は、「角力場」。主な配役は、濡髪長五郎(白鸚)、藤屋吾妻(高麗蔵)、茶亭金平(錦吾)、山崎屋与五郎、放駒長吉の二役(勘九郎)。九月歌舞伎では、濡髪長五郎は、弟の吉右衛門が演じたが、十月歌舞伎では、兄の白鸚が演じる。今回は、この舞台を観た。吉右衛門の長五郎と白鸚の長五郎は、どこが違うか。顔の化粧から違う。角力場の長五郎は、プロの力士の貫禄がある。長吉は、素人上がりの力士。その差が、歌舞伎役者のそれぞれの存在感と重なるか、どうか。
 第三部(午後4時20分開演)の演目は、「石切梶原」。主な配役は、梶原平三景時(仁左衛門)、青貝師六郎太夫(歌六)、六郎太夫娘梢(孝太郎)、新聞記事
 第四部(午後7時30分開演)の演目は、「口上 楊貴妃」。主な配役は、楊貴妃(玉三郎)。「映像×舞踊」特別公演。 

4部制では、各部の芝居も、舞踊も、正味1時間前後という構成。このうち、私が初めて実際に舞台を観たのは、十月歌舞伎の第二部からであった。

歌舞伎座の場内に入ると、中は人影が少ない。ロビーは、「ガラガラ」という印象が強いほど、空いている。きょうの上演演目は、「双蝶々曲輪日記」の「角力場」。濡髪と放駒という二人の力士の対決物語。芝居の筋は、いつもと変わらないが、濡髪長五郎(白鸚)と放駒長吉(勘九郎)の対決や与五郎(勘九郎二役)と茶屋亭主(錦吾)の「二人羽織」擬(もど)きの「二人ドテラ」など、いつもなら上演する場面を、今回は、はしょって、上演時間を1時間前後に縮めている。濡髪長五郎(白鸚)と放駒長吉(勘九郎)の対決では、芝居の中の素人相撲上がりの関取とプロフェッショナルの大関の貫禄の違いが、そのまま、歌舞伎役者としての若手と長老格の違いとダブルイメージになるのが、おもしろい。

歌舞伎座では、花道七三ですれ違う人々が立ち止まって演技する場面もなし。花道では科白もなし。役者は早足で通り抜けて往くだけ。後で述べるが、国立劇場の花道七三では、従来通り、演技あり、科白ありであった。座頭役者の意向もあるのかもしれない。

「角力場」の芝居の方は、互いに遺恨を残した二人が、後日の勝負を約束して対立したまま引っ張りの見得になったところで、朴の頭(かしら)にて幕。

一日の興行を4部制に分けて、4演目上演。各部1演目が終われば、観客は、総入れ替え。その間、歌舞伎座側は、客席の掃除と消毒。4部制で何より寂しいのは、「大向こう」禁止。「大向こう」とは、常連客が馴染みの役者に激励の声をかける「高麗屋」「播磨屋」という屋号などのかけ声のことである。普段なら声がかかる場面でも観客からは、いわば、「コロナマナー」で拍手のみが、場内に響き渡る。

観客席の座席は、1等席も2等席も3等席も、かなり空いているようだ。私のように、伝統芸能の歌舞伎を守り継承する歌舞伎座支援の観劇、という人もいるだろう。「命がけ」の観劇というのは、オーバーかもしれないが、伝統芸能歌舞伎にも、見境なく襲いかかるコロナ。コロナ禍からコスト面でも歌舞伎を守らなければならないことは確かだ。

★ 国立劇場の舞台

歌舞伎座が、8月から再開したのを横目で見ながら、国立劇場大劇場の歌舞伎公演は、9月も公演中止が続く。国立歌舞伎の再開の舞台は、10月公演からだった。国立劇場小劇場では、人形浄瑠璃が9月から公演再開されていた。本来の国立劇場の歌舞伎上演形式は、復活上演だろう。長い間、上演されていない演目に光を当てる。現代風に手入れをしながら埋もれていた作品の埃を払い、復活上演する形式は、まだ取れていない。とりあえず、国立劇場は、2部制での上演を再開した。まず、10月公演の演目だが、第一部は「源太勘当」、第二部は「魚屋宗五郎」。私は、第二部を観た。

国立劇場の十月歌舞伎
演目と主な配役は、次の通り。
 第一部(午前11時開演)の演目は、「ひらがな盛衰記 ~源太勘当」。主な配役は、梶原源太景季(梅玉)、腰元千鳥(扇雀)、梶原平次景高(幸四郎)、母延寿(魁春)ほか。もう一つ、「幸希芝居遊」。「吹寄(ふきよせ)」手法の新作舞踊劇。「吹寄」とは、名場面・名科白集のこと。出演は、幸四郎ほか。
 第二部(午後3時30分開演)の演目は、「新皿屋舗月雨暈 ~魚屋宗五郎」。主な配役は、魚屋宗五郎(菊五郎)、女房おはま(時蔵)、磯辺主計之介(彦三郎)、磯辺召使おなぎ(梅枝)、酒屋丁稚与吉(丑之助)、宗五郎父太兵衛(團蔵)、家老浦戸十左衛門(左團次)ほか。もう一つ、「太刀盗人」。主な出演は、すっぱの九郎兵衛(松緑)ほか。「魚屋宗五郎」は菊五郎劇団の舞台だ。菊五郎が、まるっきり宗五郎になり切っている。花道七三の役者同士のやりとりも、いつものまま。科白も長めのままだ。歌舞伎座の演目1時間主義とは、違うようだ。30分の幕間もあり、だった。
コロナ禍がらみの「事件」は、国立劇場の11月歌舞伎で起こった。

国立劇場の十一月歌舞伎
演目と主な配役は、次の通り。
 第一部(午後0時開演)の演目は、「平家女護島 ~俊寛」。滅多に上演されない序幕「六波羅清盛館の場」を二幕目「鬼界ヶ島の場」の前に付けた貴重な舞台だった。権力を握った男の傲慢ながら、きらびやかな生活と地獄のような絶海の孤島での厳しい生活が対比されて描かれ、この狂言の本質を一段とくっきり浮き彫りにする後世になっていた。主な配役は、平相国入道清盛、俊寛僧都の二役(吉右衛門)、海女千鳥(雀右衛門)、俊寛妻東屋、丹左衛門尉基康の二役(菊之助)瀬尾太郎兼康(又五郎)、能登守教経(歌六)ほか。菊之助は、七代目菊五郎の嫡男であり、二代目吉右衛門の娘婿である、という立場を活用して、これまでの真女形の芸域を女形も立役も兼ねる芸域の役者に成長・成熟の途上にある。コロナ禍と対抗しながら国立劇場が、こういう演出に踏み切ったことに賛意を送りたい。
 第二部(午後4時30分開演)の演目は、「彦山権現誓助剣 ~毛谷村」。主な配役は、毛谷村六助(仁左衛門)、一味斎娘お園(孝太郎)、微塵弾正・実は京極内匠(彌十郎)、一味斎後室お幸(東蔵)ほか。「文売り」では、文売り(梅枝)。「三社祭」では、悪玉(鷹之資)、善玉(千之助)。

★ 孝太郎「陽性」判明で国立劇場公演中止

まず、国立劇場の告知メール(11.22付け。表記も含めて、引用者は手を入れず、原文ママ)。

「11月歌舞伎公演」第2部の出演者1名に発熱の症状があったため、医療機関を受診し、PCR検査を受けたところ、新型コロナウイルスの陽性反応が確認されました。現在、保健所からの指示を確認中です。
 本日11月22日の「11月歌舞伎公演」第2部につきましては、お客様ならびに出演者・スタッフの安全・安心を最優先し、上演を中止いたします。明日11月23日以降の公演につきましては、改めて、日本芸術文化振興会ホームページにてお知らせいたします。

同じく、国立劇場の続報。

 国立劇場「11月歌舞伎公演」第二部に出演の片岡孝太郎に新型コロナウイルスの陽性反応が確認されたことから、保健所の実地検査の結果を踏まえ、第二部につきましては、25日の千穐楽まで公演を中止いたします。
 なお、楽屋・舞台等の消毒を実施し、また、客席への影響はないことを保健所の実地検査により確認いたしましたので、第一部につきましては、予定どおり上演いたします。

 当該中止公演のチケット代金は払戻しいたします。なお、チケット代金以外の費用(交通費、宿泊費及び手数料等)の補償はございませんので、ご了承ください。
(引用、終わり)

国立劇場の対応を踏まえて、掲載されたマスメディアの続報(朝日新聞など)は以下の通り。国立劇場の「出演者1名」は、「片岡孝太郎」と明記した上で、次の通り伝える。

*片岡さんは22日、発熱の症状があり、PCR検査を受けたという。第2部の「毛谷村」は片岡仁左衛門さん(76)が主演で、長男の孝太郎さんと共演していた。濃厚接触者については確認中だという。
(引用、終わり)

<コロナ感染 ~孝太郎篇>

(1)孝太郎の日記(ブログ)から引用。発熱を訴えた日の前夜の記述。

「几帳面な友達が、」(タイトル)
2020-11-21 07:41:54

昨晩遅くに

名古屋の旧友親友からライン

『コロナ肺炎になって入院した…』と

几帳面な男で、顔に似合わず綺麗好き
感染対策も彼なりに完璧だったと…

彼に言われて、じゃないですが
改めてもう一度初心に帰り自分なりの対策を
徹底せねばと思いました。

皆様も初めの頃に帰って、除菌・手洗い等
一緒に気を付けましょう

ただただ悔しいです。
(ブログの日記、引用終わり)

名古屋の友人のことのように書いているが、本当は、どうなんだろうか?
孝太郎から仁左衛門に感染していなければ良いが……。既に触れたように、その後、仁左衛門は、「濃厚接触者」と確認され、11月の国立劇場と12月の京都南座の舞台で、一部期間、休演を余儀なくされた。その後の情報では、陰性ということだった。

マスメディアによると、「国立劇場は、取材に対し、現時点でほかの演者に異変はないとした。歌舞伎界で感染者が出たのは今回が初めて」、ということだった。

国立劇場(第二部)「毛谷村」出演の孝太郎が、コロナウイルスの陽性反応が出たということで、国立劇場では、11月22日当日の第二部から25日の千秋楽まで、第二部公演は中止となった。第一部は、分離、上演する。孝太郎は、一味斎娘お園役で出演していた。国立劇場の説明によれば、保健所の実地検査を踏まえて、楽屋や舞台の消毒をし、客席への影響はないと判断した、という。その結果、第二部は公演中止。ただし、第一部の「平家女護島 ~俊寛」(吉右衛門主演ほか)は、23日以降も、千秋楽まで予定通り公演する、という。当然のことながら、第一部、第二部とも、歌舞伎役者ばかりでなく、製作スタッフなど、今月の興行に関わった関係者全員のPCR検査などを実施していると思うが、マスコミの報道では、その点が明確ではないので、ちょっと懸念が残る。

(2)孝太郎の日記(ブログ)から引用。退院報告の記述。

「お詫び・御礼」(タイトル)
2020-12-02 14:58:15

この度

私事、片岡孝太郎は
11月22日未明に微熱を計測し
日本俳優協会主治医指導のもと
国立国際医療研究所センター病院へ
緊急外来しPCR検査・インフルエンザ検査を実施

コロナウィルス陽性反応と判定されました。

公演中ということで感染予防対策を徹底し、ご贔屓のお客様、勿論友人とも外食を控え
基本的に劇場と自宅の往復の日々でしたので
まさか自分が、と現実を飲み込むのに少し時間がかかりました。
当時軽度との診断でしたが後期高齢者の両親と同居していることもあり..
本来ならば自宅療養となる事は重々承知でしたが、そのまま減圧隔離病棟へ入らせて頂きました。
約一週間発熱を繰り返した後
平熱状態を72時間経過しましたので
本日12月2日午前無事に退院させて頂きました事をここにご報告させて頂きます。

この度の事で

ご来場予定でした11月国立劇場二部のお客様、
12月の歌舞伎座四部のお客様、京都南座二部のお客様には本当にご迷惑をおかけ致しまして心よりお詫び申しあげます。
又、国立劇場さん松竹株式会社さん役者仲間の先輩、後輩に
沢山のご迷惑をかけてしまいました。

今は一日でも早く体調を万全にし
南座への復帰にむけて努力したいと思っています。

又ブログへの皆様からのコメント
まだ半分くらいしか読めていませんが
心温まるお言葉に
お一人お一人様に返信をしたい気持ちで
拝読する度に申し訳なさと有り難さで目頭が熱くなりました。

先ずは皆様へ
お詫びと御礼と報告を致したく書かせて頂きました。

皆様におかれましては、
感染症対策を万全にして頂き
御身大切にして頂けましたら幸いです。
(ブログの日記、引用終わり)

<孝太郎の憂鬱>

(3)孝太郎の日記(ブログ)から引用。
舞台では、出演者の演技が噛み合うが、楽屋では、キープ・ディスタンスで歌舞伎役者も、一人で待機、出演、出番が終わるまで控えている。コロナ禍の中での、孤独な歌舞伎役者の楽屋風景が見える。

「出劇」(タイトル)
2020-12-18 13:30:25

私の休演も含め、
皆様にはご心配、ご迷惑をお掛け致しました。

本日やっと
当初発表の配役通りでの初日を迎えさせて
頂きます、

お客様、関係各位に
ただただ感謝の気持ちでいっぱいです。

張り切って
出劇してまいります‼️

伯父とは二月の歌舞伎座以来の対面なので
凄く楽しみにしています、
二月の歌舞伎座の時は
同じ楽屋に、秀太郎の伯父 孝太郎 千之助
と三人で入らせて頂きそれはそれは楽しい楽屋でした、今は感染症対策で楽屋は一人ひとり別で
舞台以外の接触も基本的に禁止されているので
ちょっと寂しいですが、
同じ舞台の上に一緒に立てる喜びはひとしおでもあり大先輩に囲まれて僕は脂汗を流しながら
父や伯父の背中を見て勉強させて頂きます、
いま京都は寒いですが強い日差しがさし
晴れ晴れとした気持ちです。

では、

(ブログの日記、引用終わり)

以上、孝太郎の日記「松嶋屋若旦那の歌舞伎日記」(ブログ)からの長文の引用は、原則的に表記も含めて原文ママとした。発症の経緯、玉三郎を含め関係者との関わり、その後の隔離入院の状況など、当人が説明をしていない部分も多々あり、また、インターネットの「こたつ記事」の引用では、いろいろ読んでも良く判らないことが多いが、個人情報優遇の社会であり、当事者の表現尊重として、このままということにしておこう。とはいうものの、引用した文責は、引用者である私にある。

贅言1);以下、別件だが、国立劇場の歌舞伎公演だけでなく、人形浄瑠璃公演についても触れておこう。
国立劇場のコロナ感染拡大予防対策として参考までに引用したい。12・7付け、国立劇場(小劇場)文楽公演絡みの告知メール。

【12月文楽公演】本日(12月7日)第二部の公演中止のお知らせ

この度、国立劇場にて上演中の12月文楽公演 第二部に出演の鶴澤清馗に発熱の症状があったため、医療機関を受診し、PCR検査を受けたところ、新型コロナウイルスの陽性反応が確認されました。現在、保健所からの指示を確認中です。
本日12月7日の12月文楽公演 第二部につきましては、お客様ならびに出演者・スタッフの安全・安心を最優先し、上演を中止いたします。明日12月8日以降の公演につきましては、改めて、日本芸術文化振興会ホームページにてお知らせいたします。
(引用、終わり)

贅言2);名前が明示された鶴澤清馗は、浄瑠璃の三味線方である。人形浄瑠璃(文楽)公演では、舞台上手の床で、浄瑠璃語りの太夫の右側に座って、三味線を弾いている。太夫と息を合わせると同時に、本舞台上の人形遣い(主遣い、左遣い、足遣い)に劇的進行のために見えないタクトを振っている、クラシック音楽演奏なら、いわば、コンサートマスターのポストにいると言われる役割を果たしている。

贅言3);「こたつ記事」。著名人のソーシャルメディアなどでの発言を引用し、ネットで報じたスポーツ新聞社が謝罪や訂正をする事態が相次いでいる。発言内容の検証なしに量産されるこうした記事は「こたつ記事」とも呼ばれ、配信するメディアの姿勢が問われている(「朝日新聞デジタル」より、引用)。

秋口、歌舞伎界のコロナ感染拡大予防対策で見たこうした風景は、その後、初冬から冬へと季節が移るにつれて、世間一般どこでも見かける風景になってしまった。どこでも、ディスタンス空間ばかりになった。それに同調するように、社会のコロナウイルスに対する対応には、空間(あるいは、隙間)、あるいは、「脇の甘さ」が日常化してきたように思う。経済優先の「Go To ○○」運動は、その最たるものである。

菅政権の判断は、おかしくはないか。日本は、どうなって行くのだろうか。コロナ禍の現況は、ますます、私たちの不安感を募るような展開になっている。1月8日、東京を含め、首都圏では、緊急事態宣言が出された。前日の1月7日、1日あたりの東京の感染者数は、約2,500人。コロナ禍の先の光景は、不透明なまま。感染者も増え続けている。先行きが見通せない。首都圏のコロナ禍は、既に、「オーバーシュート」しているのではないか。今回の紙数が尽きたので、以下、次号で書き継ぎたい。

 (ジャーナリスト(元NHK社会部記者)、日本ペンクラブ理事、『オルタ広場』編集委員)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最新号トップ掲載号トップ直前のページへ戻るページのトップバックナンバー執筆者一覧