【緊急募金のお願い】パキスタン大洪水(2)
◆募金のお願い
前回、拙文の最後に募金先として画像を掲載した「Pakistan Japan Friends」
現在、銀行振込、関東有名パキスタン料理店の募金箱、さらにネット上のクラウドファンディングで義捐金を募っている。
下記の動画によれば、何種類か限定して物資のご寄付もお願いしているようだ。
https://www.zenes.jp/projects/pakistan-floods
https://www.youtube.com/watch?v=UJ4aW5zilfc
この動画をぜひご覧になっていただきたい。数値等はラシッドさんやシャキールさんの感覚的なものではあるが、その不正確さがむしろ日本とパキスタンの比較が伝わる。動画の中で一部の物資も寄付できるとのことだ。この支援は広く薄くではなく、パンジャブ州マンゴー農業地域の被災地へ。金銭を現地で物資に。どこの誰に何が渡るかがほぼ明確だ。
※パキスタンは農業国。被災地のシンド州は綿花、パンジャブ州はマンゴーが主要な産物
募金箱設置パキスタン料理店
カラチの空 八潮市
アルカラム 八潮市
ニューホットマサラ 草加市(越谷レイクタウン近隣)
メヘムーン・サラエ 野田市
ハンディ・レストラン 野田市
アリ(インディアン)レストラン 野田市
ラナ・ホットマサラ 坂東市
パミールレストラン 坂東市・小山市
ナワブ チェーン店 都内・関東
シディーク チェーン店 都内・関東
1)8月末の世界的報道の前後・現地の友人たちは…
この洪水が酷くなって久しぶりに現地の日本在住経験者の友人たちから電話がきた。SNSで連絡が取れる…ということは、災害とは無関係の地域だからだ。首都イスラマバード1人、カラチ2人。1人は上(北)の村に洪水が起きたら安全ではない場所に住んでいる。
みなさん、被災地の友人からの状況をも嘆いていた。政治の悪さを嘆いていた。洪水が始まった6月以降の物価上昇のひどさを嘆いていた。
・「ガソリン価格が洪水以前から30ルピーずつ値上がりしている。イムラン・カーン(前首相)の失敗だ。首相が変わってまず、これ(ガソリン等の物価上昇抑制)でしょ。洪水で交通渋滞がひどくなったからガソリンも減るでしょ。なんにもしない、なんにもしない。洪水で困っている人たちに1人5000円(日本円)あげれば、家族は半年暮らせるでしょ。なんだかんだとどこかお店はあいているし、流されたところ(被災地)から離れたところから物を売りにくる人だっているし、歩いてお店まで半日でいける。外国からのお金でビリヤニ(炊き込みご飯)を配って、それだけ貰っていればいいってことではないでしょ」
・「洪水で農地がパァになったし(「ダメになった」1980年代後半からの在住経験者たちが頻繁に使う日本語)動物(家畜)も流されたり死んだりして肉がなくなっているし、交通はストップされているから野菜や果物や肉とかの食べ物が少ししか入ってこないし、入ってきても高い。トマトなんか4倍だよ。玉ねぎ(保存食・貧しい人たちの行商)だけが変わらない。ここ(パキスタン)では値段は自分でつけるから。金を持っているヤツが、物がないことにつけこんで貧しい人のことも考えずに値段をつけてもっと儲けようとするからこんなことになっているんだ」
・「洪水で水が溢れているのに洪水の村の人たちや赤ちゃんは飲み水が足りないんだよ、そのくらいはできないのかね」
・「この間、洪水にあった(被災者)の友達から久しぶりにwi-fiが繋がるところまできたって連絡があったんだ。すごいねー。なんにもない。なんにもない。みーんな流されているよ。写真を送るにもなんにもないんだよ。日本の川の横にある、あれ、あれ、元々なかったんだよ、流されたんじゃない。あれって流されたら意味ないね(あれ=堤防)それに悪いヤツがいて、みんなが流されている場所に外国のメディアを連れていって、これは流されているあの人は絶対死ぬなってわかるところまで待たせて写真やビデオを撮らせて案内でお金を貰っているんだって。悪いだろ!どうしようもないヤツが当たり前にいる!」
・「政治家、みんなおかしいよ、川の田舎の人、みんなテントで暮らしているし、家に帰っても、もうないんだ。どうする?政権で喧嘩している場合じゃないでしょ。お金は自分のポケットに入れるし、一族でお金を外国の銀行に預けて逃げる用意はしているし(どこの政党を差しているのでもない)外国から支援のお金を貰っているのにどこに行った?」
・「70年代にお金を貰ってもらいっぱなしで道も橋も作らなかったのに誰も注意しない命令もしない。あなたあげたお金で工事しなさいって、誰も言わなかった」などなど。
パキスタン人、喋ると止まらないのでもっといろいろ話されてしまったが書き切れない。そして自分の国と日本を比較しだした。
・「大きな地震の時(東日本大震災)も住むところを作ったでしょ。最初から逃げる場所もあったでしょ(避難所)国の人が見に来たでしょ。すぐに道が通れるようになったでしょ」
・「ここは日本とはすごく違う。ダメなんだ。人のこと考えていない」
そして「また日本に戻りたい。日本に戻って仕事がしたい」
…いやいや…昭和の親方に鍛えられた腕は知っているが、今の日本は仕事をするには別の国だと思う。
だが、彼らの指摘が正しいのは、防災意識が官民ともしっかりしていること、非常時のシステムが明確であること、インフラすべてが防災を念頭に置かれて造られていることなどだと感じている。悪いが出鱈目な国とでは比較にならないとも思った。ところで送ってくれた動画はみんなでSNSに流しているものらしく、建造物の崩壊ばかりだった。痛々しくて人の様子が撮れないのとそれどころではない当事者が撮ることさえ大変だからだとのことだ。後で気づいたが三人ともなぜほぼ同日に電話してきたのか、言論統制を引かれているわけではないが、あまり人に聞かれたくない話しを私相手に日本語で話したかったのだろう。そして、現状がイヤなので日本に戻りたくなったからなのだろう。
2.途中下車させたくない募金・寄付
以下はジョークである。パキスタン出身の友人と私。
「あなたが集めた寄付はオレに預けてよ。知り合いの医者に渡してちゃんとしたことに使ってもらうから」
「そのお医者さんは誰?あなたはどうやってお金を渡す?今日本よ」
「彼は名前を出したくない。善意だから」
「それはダメでしょ。お金を誰がどう使うかわからないところに寄付なんかしないわ。それと個人より団体を日本人は信じるから、日本の団体から現地の団体というのが一番いい」
「団体がお金盗っちゃったら?」
「個人も同じよ。あなたが一番怪しい。そのまま生活費にしてオレは困っているパキスタン人だって言うんじゃない」
「…ないよ」
「ある、あるある」
実際知り合いのお医者さんは篤志家であるようだ。
さて、8月末、パキスタン大使館がSNSを通じて日本語・英語・ウルドゥー語で義捐金のお願いを呼びかけた。その夜、日本語学校の学生だった頃から面倒をみている若者からLINEで電話があった。元気ですか?の次の開口一番。
「やだ!パキスタン大使館にお金をあげたくない。△△さん、悪い人でしょ?」
「うん…悪い人だときいているね」
「それと前の大使も今の大使も良くないね。今の大使は女の人だけど、パキスタンを代表するのに何で髪の毛を見せる、ヘアスタイルが嫌いだ。洪水の寄付は大使館にしたくない。国連とかにもしたくない。偉い人にお金をあげるだけだから」
「現地の慈善団体は?」
「ああ、あれはビジネスだからね。お金はいくだろうけどこれも金儲けだよ」
この後、いつも2人で関心を持っている環境問題とか教育の話しをした。彼だけではない。日本にいる若者たちは母国の政治に嫌気がさしている。「私、もう自分の国の政治、どうでもいいです」と今まで強く政治に関心があったとは思えない投げやりな口調だった。
ところで、インド・ムスリムの友人は別の形をつかって会社の名前ではなく個人で寄付をした。インド人であるため直に寄付しにくい、匿名でお金を送れば当然途中下車されてしまう。そこでとった方法はアラブ首長国連邦の支援物資募金の口座振込だった。アラブ首長国連邦はお金があるので中間搾取は考えにくい。物資に換えてから陸路で輸送されるのでお金はどこへも行かない。とてもよく考えられた方法だと思う。
話しは変わるが、日本からの物資支援は可能かというと支援物資の税金がかかるようだ。また物資を送ってもそのまま横取りして売り物になる可能性がある。これは今まで何度か周辺国で行われてしまっていた事実を見聞している。動画などで支援国のラベルがついているペットボトルが店先で売られているシーンも確認している。前述のPJFのおじさまたちの場合は貿易の輸入商品のコンテナを利用するようだ(不正確「なんとか送れる」という表現だがこれしか方法がなさそうだから)
海外からの公的支援物資であるが、現地テレビを観る限りアラブ首長国連邦、中国、アメリカなどの国旗が入ったトラックが映し出され、国連やその他の国際機関のマークが入った物資供給のシーンも観た。
3. ビラ―ワル・ブット―の記者会見
10月6日現地時間午前。ビラーワル・ブットー外務大臣が大臣としてではなくPPP党首として記者会見を行った。多岐にわたる内容で質疑応答を含め約2時間だった。今の外務大臣としての地位を活かして対アメリカとの関係を強める、アラブ諸国との経済協定など主に外交の話しだった。その中で内政として洪水の問題にふれた。言葉が全部わからなかったので後で英語の記事などを参照したが、「私が個人として寄付したお金を使っていない。シンド州地方自治体はまったく無策のままで、被災者にビタ一文行き渡っていない」そしてイムラン・カーン前首相の政党であるPTIを批判した。
私はこれを見ておかしいと思った。1970年代に彼の祖父であるズルフィカール・アリー・ブットーが大統領・首相だった頃バラまいたお金がインフラに行かず消えてしまった失策のつけが回ってきたのだから。どうもこの一族は失策を後続の政党に押し付け、それがうまくいかないと復活する。母ベナズィールが首相になった時も同じだ。パキスタンの政権はこれを繰り返すことで一族政権を保ってきたがタレント議員のイムラン・カーンが首相になったところで今度は素人政治家経済政策無能と落とし、また今までの連鎖を繰り返すつもりなのだろう。
周囲の噂だ。「スリランカの次はパキスタン」国家財政破綻は間近だという意味だ。洪水で追い打ちをかけられたはずだから尚更そう考えるだろう。現地メディアによる「〇〇国から支援◇◇ドル」といったタイトルをどう読めばいいのだろうか?
(2022.10.20)
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