【コラム】あなたの近くの外国人(裏話)(52)

「近く」と「遠く」のコロナの話し⑩往来再開4ホテル隔離

坪野 和子

 残念なことにまたまたこの話題に戻ることになってしまった。とはいえ、往来ができているし、往来できるくらい自分の身近な人たちは罹患していないということでもある。

 ◆1.隔離中イライラしていたパキスタン人弟分

 まだ隔離期間が長かった頃だ。1月の終わりくらい。日本に戻ってきたら、隔離されて、ずっと何もすることがない、テレビも面白くない、弁当が冷たい、パキスタンの家に電話すると奥さまはお金の話しをする、友達や親族に電話しても隔離されているから自分の話題がない、日本語能力試験を受験した甥っ子は不合格だった、などなど、だんだん欲求不満になっていたようだ。
 私に数回テレビ電話をかけてきては、セクハラ寸前の自分の上半身裸を見せる、イライラが伝わるけれど、私が怒って「電話を切るからね」と言うとしょんぼりして謝る。そんな数日が続いて…電話がこなくなった。多分、大人向けのテレビ番組を見つけたのでは? 隔離経験者から情報をえたのかもしれないが、そういうことに目ざといことを私は知っているから。

 ◆2.またまた来日したフィリピン在住パキスタン人

 まだ隔離期間がやや長かった頃だ。2月の後半。都内のホテルに隔離されていた。隔離の意味が解っていなかったようだ。
 「都内にいるうちに会いに来てください」「え? 面会不可なんだけど」「え?」(英語)前回は成田だったからそういうことはなかったのだろう。しかし今回は都内だから面会できるんだと勘違いしていたのだろうか? 隔離の意味がないと思うんだが。単に街中を出歩かないようにすればいいと思っていたのだろうか?

 まあパキスタン現地はマスクなしでゆるゆるで1月末に感染者のピークを迎えていたし、日本在住のパキスタン人もマスクなしで会合し、大勢で会食している。この人達は日本人とは感性が違うんだろうと思った。またフィリピンでは2月に入って感染者が減少しているのでこれもまた勘違いの要因だったのかもしれない。

 ◆3.パキスタンから帰った友人④

 新潟在住のパキスタン出身友人は帰省して実家に強盗に入られた。犯人は捕まったが、どこの国でもありがちなことだが、金品は戻って来ない。現地で携帯電話を買ったら、水没させてしまい、2機目を買った。日本に帰国してからしばらくはだましだまし wi-fi のあるところで電話するつもりだと言っていた。
 さて、帰国前日「これからカラチ空港」と電話。そして丸一日連絡がなかった。ドバイでのトランジットはそんなに長い時間ではなかったらしく、連絡を貰って即座に返事をした。「もう着いたんだ! でも、これからが長いわよね。帰国する日本人の審査とか…並んでいる?」「バリバリに混んでいるよ」

 そして翌日。いきなり写真を送ってきました。観てすぐにわかった。私も目を丸くした。隔離弁当の写真だ。

画像の説明
  「ヒレカツ弁当」

 「ありえな~い!あなたにこれ? ホテルに文句言ったの?」
 「言ったよ、個人的なリクエストは受け付けないって」
 「でも、ハラルとヴェジタリアンは別にしてくれるはずだけど」
 「言わなかったよ、まさかトンカツが出るなんて思わなかったから」

 …ははぁん、パキスタンから「カレー飽きた、チキン竜田が食べたい」って言っていたから、唐揚げ弁当とか出てくると思って言わなかったのね。しかも、彼は発達障害を持っていて、梅干しの酸っぱい臭いが苦手なのだ。漬物も梅酢漬けみたいだし。そしてさらにゴマの食感もダメ(かつお節も苦手)。一晩お腹を空かせていたのかしら、糖尿病だからイライラしただろうなと思っていた。

 翌朝、宿泊しているホテルに苦情の電話を入れようと調べてから彼に電話をした。そうしたら、「コールセンターに電話したよ。ハラルにしてもらった。自分で文句言ったよ」なんだか偉そうに、自分で話しを通したことを凄いですねと言ってもらいたいんだろうと感じた。しかも、「ああ夕べはパキスタンから持って帰ったサモサとか食べたからね。話しが通らなかったら、ずっとそういうのを食べているつもりだった」「そう、自分で対処したから良かったわね」出てきたハラル弁当は…↓

画像の説明
  「ハラル弁当」

 好物の唐揚げが入っていたようだ。割合豪華な弁当に変わっている。しかし、なぜか和食。安心したのか、残りの1日は弁当の話題がなかった。しかし、「コールセンターに話しを通した」は、電話すると毎回言う。
 日本国籍であってもカタカナの名前でしかもパキスタンからの帰国なのだから、そこは日本側の配慮・確認が必要ではなかったのだろうか? ハラルを自己申告しなかった自業自得なのか? いや、豚肉はやはり確認事項だと思う。宗教上の理由だけでなく、食物アレルギーの確認はどうなっているのだろうか? 彼は新潟に帰宅後、ほぼ毎日チキン竜田を食べているようだ。

 帰りの高速バスのチケットは私が予約した。最初、新幹線に乗ると言っていたが、宿泊ホテルからバス乗り場が近いことを友達から確認したようで、私が取ることになった。私は¥500クーポンを持っていたから。あ。まだ集金していない!

 ◆4.外国人差別を感じているインド人

 日本帰還後の隔離がなくなれば、すぐにインドに行って(帰ってとは言わない)ビジネスの再構築をしたいと考えている友人。神奈川県で食材取り扱いの仕事をしている。コロナ禍と雇用問題でのダブルパンチで大変な思いをしている。コロナ禍で小麦の在庫がだぶつき、消費期限が3ヵ月前に迫っている。売れる見込みがない。小麦の種類でナン、チャパティ、餃子、小籠包、ピザ生地、全部違うのだという。私は兼業主婦なのでそれは知っていた。カメリアの質が違うからだ。確定申告で赤字を示す書類を出すため、会計士さんと何度も面談しているという。

 そして、彼もまた最近泥棒に遭った。犯人は日本人女性だ。彼はその日本人女性を雇っていたが、ただ会社に来ているだけで仕事をしない、しかもインド式ボトムアップの仕事方法を勘違いしていた。インド式ボトムアップというのは、指令だけ出して下の社員が思うように動いてもらい、最終的に報告を受ける、修正を求める方式だ。アメリカ・ヨーロッパでインド系のCEOが多いのは、この方式だからではないかと思う。
 日本は上意下達で上から下に役割を与えてその通りに動いてもらう。いわゆるトップダウン型だ。それに慣れて外国人に雇用されると、自分が上に立っていると錯覚し強くでるようになる。自分がいないと何もできないと思い込み、給料を上げてほしいと言う。給料に見合わないので解雇したそうだ。

 女性はその後、会社に忍び込み、50万円持ち出し(キャッシュカードを盗んでATMから引き出した?)また高額商品も持っていったそうだ。警察に言ったら、その女性がコンビニのATMにいたことが監視カメラに写っていたが、「マスクしているのでわからない」と言われてしまったのだ。日本の警察も正義で動いているのではないことは私も知っていた。
 15年前、中国系日本人の友人が「当たり屋」に遭って脅かされ、しつこいのでストレスを感じ自称被害者に240万円払ってしまったそうだ。私も彼女が運転していた車に同乗していたが、その自転車のオバサンはこっちに突っ込んできたように見えた。悪い日本の人がいても、被害者が外国出身だと犯罪者のほうに心が向くようだと私は感じた。
 さて、そのインド人の友人もまた「日本の警察は日本人だと守るんですよねえ」とため息をついた。また彼は今、日本の経済も憂えている。

 「希望をもって日本に来た当時は(約30年前)日本は活気があって新しい挑戦を続けていた。新しいものがどんどん日本で開発されたり実用化されたりしていました。この国に来て嬉しくて嬉しくて堪らなかったんですよ。でもね、今、成長する要素は見られないし、ビジネスを大きくしていく希望がないんですよ。だから商売で日本にいる人達は撤退したり、それを検討したり、成長しているインドに戻ってビジネスしたりすることを考え出しているんですね。
 ただでさえこんな経済状況なのに、税金は高いし、政府はへんな使い方をしているし(補助金の不公平・アベノマスクなど)日本で頑張ろうという気にならなくなっている人がいるんですよ。税金を払っているけど、私たち外国人はなにも文句言えないし(選挙権・住民投票なしなど)差別が色々とあるんですよね」と。

 さらに「このコロナで人を入れない(コロナ鎖国)のは、日本にとって単なるマイナスイメージなんてものではないですよ。この水際対策によってわかった事実上の外国人差別が、これから来るつもりだった人たちの気持ちを萎えさせたんですよね」
 そしてひとこと。
 「私たち、日本人みたいに我慢強くないですからね」

 (東京ベイインターナショナルスクール顧問)

(2022.3.20)
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