【コラム】あなたの近くの外国人(裏話)(50)

「近く」と「遠く」のコロナの話し⑨往来再開3

坪野 和子

 新年のご挨拶を申し上げます。本年もよろしくお願いいたします。
 まずは外国人でなく、日本人および日本国籍のみなさまで「帰国」されたかたたちが、オミクロン株対策以降、東京都下の施設で隔離されていらっしゃる、いらっしゃったとのことだ。今後、どうなることやら、この話題を続けたくない、収束終息してほしいものだ。残念ながら前回の続きである。

 ◆ 1.バングラデシュから高校の生徒が日本に戻ってきた③ 自分の大学時代を思い出す

 2学期中間試験期間中に高校に戻ってきた生徒。その後、彼女は元のバイト先のコンビニの仕事に戻った。バイト先は、それなりにいい人間関係があったらしい。2年前、お客様の勘違いで何か問題があって、店長が彼女のせいだと決めつけて泣きべそをかいていたことを覚えているが、その当時、誤解がとけたからこそ同じ店でバイトしているのだろう。バイト仲間も今時のコンビニである。主婦・ベトナム人留学生・コロナで就職先が見つからない外国籍定住者の家族・まだ半分オンライン授業が続いている大学生などである。

 彼女が内緒で私に言った。「ベトナム人の留学生は字が読めるけど、私より話せないねえ。私、字を覚えたらその友達より日本語できるって自信がつくの。私、7月、絶対に日本語能力試験N2合格するから」良くも悪くも比較する相手がいるってことだ。
 日本語学校に行っていたほうが良かったのではないかと思ったが、お父様の教育方針のようだ。日本の高校で日本の教育がわかり、その上で日本の大学に入れたい。日本語能力試験のテキストはお父様が自分で選んで彼女に与えた。お父様は調理師の在留資格で何年も更新している。彼女の結婚に関しても、お父様が見合いの相手を決め、婿を日本に連れて帰るつもりだったが、コロナで日本入国の面倒さがあり、お相手となる両親が難色を示したので実現できなかった。

 彼女の日本語能力は一昨年に比べて上がっていた。いや、日本語そのものだけではない。日本語でわからないと英語にコードスイッチングがスムーズになっていることだ。一昨年ネパーリー生徒の親友と一緒につるんでいたころは、親友にコントロールされていた(暗に日本語がわからないふりをしていたら楽よ…と話せないことが問題と感じさせなかった)。
 それと、今のクラスは同級生がとても良い。とても優しい。色々な問題があって傷ついて定時制に来た子たちだからだろう。以前のクラスも条件的には同じはずだが、中学までいじめられていた反動で差別するということが感じられた。また彼女とネパーリー生徒のフレグランスがキツイ…私も少し強いなとは感じていたが、感覚過敏が生徒構成として少なくなかった。今のクラスの子はそういうタイプがいないので助かる。定時制課程の日本の教育システムは素晴らしいけれど、クラスの構成で環境が変わるんだろうと思った。

 コンビニバイトで気に入っているのは人間関係の居心地が悪くないだけではない。コンビニの仕事は流れが全部わかれば機械任せで読み取るだけでいいし、お客様が複雑なことを訊いてきても「せんせい(が)思うほど大変じゃない、コンビニでやることやお客様が欲しいことは決まっているから」…ああ、そうか!
 私が大学生の頃、やはりコンビニでバイトしていたけれど、デジタル化が進んでいなかった。それと、鍵開けは私の仕事だった。6時開店。はっきり言って店長が責任もって開けてほしかった。夜明けまで呑んでいた酔っ払いが朝イチ入店しエロ本を立ち読みして、若い女の子店員にセクハラ。危ないだろう…と、当時の自分。30年前の24時間営業前の時代を思い出す。
 そしてもうひとつ。彼女が勤めているコンビニは他のチェーン店と違って、ひとつだけストレスを感じない要因があるそうだ。それは…揚げ物。他のチェーン店では「豚ひき肉の春巻き」がある。これはさすがに触りたくない。彼女が勤めるコンビニはチキンだけ。「肉まん」は小麦粉の皮に包まれているから大丈夫とのこと。春巻きも同じだが揚げ物としての臭いがダメ。

 学校の話しに戻るが、今まで学校行事が出席日数と認識していなかった彼女と彼女の保護者が、日本の教育システムがやっとわかったようだ。遠足も芸術鑑賞会も終業式も出席していた。さきほどメッセージがきた。「マダム、始業は11日からですよね(英語)」「そうです」

 ◆ 2.インドに帰省兼社員旅行②

 新丸子で南インドレストランを営むオーナーシェフは、お得意様をたくさん持つだけあってマメな性格だ。彼からクリスマスの夜と元旦にLINEで連絡がきた。元旦は日本語+タミル語+英語の年賀状だった。本当はウルドゥー語もできるのだが、年賀状にはない。

 クリスマスの夜、メッセージがきた。数分私とビデオコールしたいとのことだった。私に息子さんと甥っ子さんを紹介したいとのこと。二人は年齢も近い。いずれインドの大学の日本語科に入れて、そして日本で生活させたいとのことだ。この二人の大学入試をより有利にするために、ひらがな・カタカナその他を勉強させたいのだとのことだった。
 男の子たちの顔を見せてもらった後、お兄さん家族のくつろいだ様子を見せてくれて「先生ありがとう。メリークリスマス」と言ってビデオ電話を切った。私は驚いた。彼はイスラム教徒なのだ。近隣のイスラム圏より、インドでそういうゆるゆるは珍しくない。それと日本の生活が長いので日本人のなんでもありありが身に付いているのだろうか? オンライン授業が再開したら訊いてみようと思う。日本を出国してあっという間に1ヵ月経ったと感じた。

 ◆ 3.パキスタンに帰った友人③

 新潟在住のパキスタン出身友人は帰省して数日後、実家に強盗に入られた。12月12日に、12月8日未明当日の監視カメラに撮影されていた強盗たちの様子のビデオが送られてきた。
 暗闇で一人の男が周囲の木片を積み上げ、塀を乗り越えていった。塀を越えるためにすでに準備していたのは明らかにわかる。そしてもう一人、その積み上げた木片をスイスイと登っていった。明らかにプロだ。二人が家の敷地に入り切るまで、わずか1分半足らずだった。プロ以外の何者でもない。

 それから何分後か何時間後かわからないが、まず塀の扉から出てきたのは、紛らわしくも猫と思える小さな動物で、走って去って行った。そして勝手口から、まず一人の男が片方の肩に頭陀袋のような袋をかけて、この家の扉の開閉の仕方を知っているかのようにスムーズに開き戸を開けて出てきた。軍隊のマーチングにも似た大股で歩いて来た方向へ歩いて行った。まったく慌てていない様子はプロならであろう。そして、この家の自家用車の影を通って数メートル先に停めていたバイクに乗って勝手口の扉の真正面にバイクをつけた。
 到着した瞬間、勝手口の扉の向こうから、もう一人の男がバイクの男より大きめの袋を抱えて出てきた。明らかに待機していたとわかる。バンとバイクの後の荷台に袋を置き、そのまま後ろに乗って二人乗りで消え去って行った。

 バイクを運転しているほうはマスクと帽子を着用しているがバイク運転のため目の周辺の顔立ちはわからないはずがない。プロだからある程度の人相も割れているはずだ。もう一人は完全に覆面状態だから何とも言えないが、どうして捕まっていないんだ!

 だが、パキスタン・カラチは全く違う。この二人組強盗たちが入った状況として、日本から家族が帰って来たという情報が入った。友人は「メイドがグルだと思う」たぶんそうだろう。この家にメイドは常に三人いる。一人だけ怪しい。
 昨年、そう一年前だ。ちょっとした事件があって、そのうち一つは私も関連している。主の息子(友人)の電話を勝手に使って私にかけた。文盲なので女性と思わなかったのだろう。これは推測だが、子どものくせに(ローティーン)彼の在日で同じく帰省中の親友を誘惑しようと思ったのかもしれない。電話に出た相手が女だったし、英語で話してきたので、電話の向こうで固まっていたのはすごくわかった。
 その後、この子は彼の電話を勝手に使ったことの咎で一旦クビになったが、家族の慈悲で再雇用してもらった。彼のお母さまの慈悲だ。その後、この子は何度も問題を起こしているが、かなり貧しい家庭の子なので簡単にクビにできなくなってきたとのことだ。この子は話しを聞いているだけでもかなり怪しい。

 ある日、日本在住経験がある同年代の男性と久しぶりに電話で話した。私が「演歌おじさん」とこっそり呼んでいる男性だ。面白い人なので、いつかこの連載にも登場させようと思っている。
 「ああ、日本から帰って来たのがそういう悪い人たちに知られると、いろいろ持っていかれるね。日本から帰ったってことは、まず金、金になるお土産、ついでに家財。警察は泥棒と友達だから捕まえないね。この人たちからお金をもらっているかも。パキスタン警察、日本とは違うからね。逆に被害者から賄賂を貰うために何度も呼び出すね」

 ああ! そうか! なにしろまだ警察の事情聴取が終わっていないらしい。呼び出しがほぼ毎日になったものの、署長の気が向くと呼び出されているそうだ。まるで容疑者のようだ。「弁護士から警察にお金を1円もあげちゃダメだって言われた。それと壁(塀)高くしたからね」ふーむ、最近、パキスタンで吹雪によって閉じ込められた人の車を高速警察が1台1台回って、お茶(チャイ)の差し入れをしているという動画を見た。ものすごくギャップを感じる。

 ◆ 4.コロナに罹患していたオンライン学生

 西ベンガル出身、デリー大学大学院博士課程日本文学専攻の院生くん。一昨年、コロナ感染拡大の前まで「実用会話」「日本語スピーチ」と話すことを中心に教えていた。これはボランティア。現地価格でお金を送金してもらっても…なんだし、「日本に留学したらアルバイトして払ってくれればいいわよ」とは言ったものの、優秀なんで国費留学生とかで来る可能性がある。
 一昨年のある日、彼からメッセージがきた。「風邪のようなので今日のクラスは休みます」「熱が下がらないので医者に診察してもらいましたが、コロナではなさそうです」「コロナの検査をしましたが陰性でした。来週にはクラスができると思います」

 それから約一年、再び連絡がきて「読解をおしえてほしい」そして…。「私は半年コロナと闘っていました。3ヵ月入院し、半年療養していました。今は大丈夫です。日曜日、週1回教えてください」…再スタートを切った。もう少し落ち着いてきたら、以前より少し引き締まった顔つきになってパラーグ・アグレワルさん(Twitter CEO)に似てきたねという冗談を用意していた。…と思ったら、この日曜日「センセイ、高熱で動けません。これからコロナの検査をしに行かなくてはなりません」…え? 2度目の罹患?? オミクロン株なのか? 来週の連絡があることを祈る!

画像の説明
  インド系CEOはメガネ男子が目を引く

画像の説明
  2020年ロックダウン中のインドのコロナ警察。
  2022年の今、またロックダウンがはじまるのではないかと言われている。

 (東京ベイインターナショナルスクール顧問)

(2022.1.20)
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