【コラム】あなたの近くの外国人(裏話)(49)

「近く」と「遠く」のコロナの話し⑧往来再開2

坪野 和子

 前回の続きである。先月はいよいよ日本に戻ったり帰国したりが始まったと思っていた。それにしても各種メディアは、正確さよりも速報性を重視してばかりいるのは何故だろう。先月の上陸待機期間が3日になったときもあまりに不明確な報道ばかりだった。

 [引用NHK]11月8日 新型コロナウイルスの水際対策をめぐり、政府は、ビジネス目的の入国者について、企業が行動を管理することなどを条件に、きょうから自宅などでの10日間の待機期間を原則3日間に短縮します。

 ビジネス目的とは商用短期ビザであって、経営管理ビザは対象外、そして会社員とその家族も対象外。ワクチン接種の回数云々やワクチン未接種の子ども連れなど、ホテル隔離はなくとも14日間の自宅隔離は変わらなかった。また技能実習生や留学生は3日以上であることが普通だった。

 11月29日「オミクロン株」感染拡大 “水際対策の強化を検討” 岸田首相が発表し、1カ月の入国禁止。これも半端な報道で、新規の入国者が対象で「再入国者」はその限りではないと後からわかった。さらに「再入国者も入国禁止」と出た報道があり、これも一部の国からで全部ではなかった。その後、今月の航空券予約停止が報じられたが帰国する日本在住者(日本人・特別永住者・日本人の配偶者・永住者・定住者の家族)への不便があり、それは取り消されたとの後に伝えられた。

 さて、今回は、この1カ月の私の周囲の動きである。メディアがきちんと伝えていなかったがために迷惑していることもわかっていただきたい。

 ◆ 1.バングラデシュから高校の生徒が日本に戻ってきた②

 前回に書いた中間試験期間中に高校に戻ってきた生徒。その週、彼女はまだ在留カードに、アルバイトが可能であるという入管の印鑑がもらえていなかった。家族在留は週28時間のアルバイトができることになっている。これは留学生と同じである。まあなんでもいいから試験勉強に集中してもらえるだろうから、私としてはありがたかった。そして無事印鑑を貰えた。
 アルバイトは出国前と同じコンビニ。週3回5時間。日本語能力試験の勉強も再開した。しかし、授業中うわの空になるクセがある。まだまだ言葉がわからないからだ。そんな彼女だが、今度のクラスは同級生がやさしいので出国前よりいい。

 さて、彼女は11月29日の報道を知った。「先生、おじさんが日本に来ることになっているんだけど入れる?」「再入国なら大丈夫よ」「再入国じゃないと思う、前のビザが切れて長いから。明後日のチケット買っているんだけど」「ダメでも1カ月後に入れるかもしれないし、チケットの出発日の延長はできると思うよ」ああ! 再入国の定義はどうなんだろう? と思いながらも、入れるかもしれないとは言えないのでそのままにした。

 ◆ 2.フィリピン在住のパキスタン人の知り合いが来日したが

 商用短期滞在ビザで10月に入国した中古車業者の知り合いが先月フィリピンに戻った。入国当初は12月いっぱいまでの滞在を予定していた。静岡県の富士山が見えるいい所に滞在していたので会う予定だった。本人、フィリピンにはあまりいたくないと言っていたが、先月戻ってしまった。
 理由は、コロナの影響で新車が出回らないため、中古車の取引も芳しくない。取引価格が高騰して買い付けやその商談もすすまない。新車は半導体や各国の部品やその原材料が調達しにくくなり、生産ができず品薄となっている。中古車として手放すには新車がないと手放せないのだから。さらに日本では運転しないので公共交通機関を使うため、交通費もかかる。日本語が全然できないので在日パキスタン人の情報を得るしかない。早々と戻ることにして、事態が良くなったら再び日本に来て商談を行うという。

 ◆ 3.日本→インド→日本→インド→日本

 日本在住のオンラインのインド人生徒。5月に妻子をインドに置いて日本に戻ってきた。その後、日本で単身赴任生活をしていた。日本語能力試験を12月に日本で受験する予定だった。ところが出張が決まった。当初シンガポール出張を予定していたが、出張先がインドに変更になった。シンガポールは11月はじめくらいまで感染拡大傾向にあったので、会社から出張先がインドになったと言われたそうだ。お客様の都合もあったからだとか。

 そしてインドに帰り、ディワーリーを妻子と過ごし、妻子を連れて、いざ日本に戻ってくることになったら3日の自宅隔離になったと喜んでいたが、インドからの入国者は14日間の自宅隔離だった。お子さんがワクチン未接種なので交渉もできないだろうとのことだ。
 試験は隔離期間に行われた。受験していれば合格するレベルだった。彼は超ポジティブなんで「このまま残ったN3レベルの練習を続けて、ビジネス日本語も並行して勉強したいです」と試験を受けそびれたことをくよくよせずにグレードアップを目指している。尊敬できる。

 ''◆ 4.インドに帰省兼社員旅行

 日本在住のオンラインのインド人生徒もう1人。彼は新丸子で日本人共同経営者とともに開いている南インドレストランのオーナーシェフだ。私のオンライン授業の生徒はITエンジニアか主婦ばかりだったので、はじめての業種。彼は永住権の試験のために日本語を勉強したいと思っていたが先生が見つからなかった。オンラインで教え、インドの言語がわかる私が見つかって非常にハードに勉強してくれた。

 会話は上級者並みだが読み書きは初めてだった。電子メモパッドを買って何回も漢字の練習をしていた。私も同じころ同じものを買っていたので、以心伝心みたいな気持ちになった。日本語能力試験N4は「できた」と報告してくれた。N3レベルまで頑張って永住権試験に向けて勉強を続ける固い決意があるので、真剣さは忙しい店の仕事があっても時間を作っていた。

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  共通に購入した電子メモパッド

 10年以上、店をやっているので、コロナ禍にあっても短い営業時間でも、日本人も外国人もファンや常連さんが入ってくる。時短解除になってからはランチタイムとディナータイムの休憩時間が短くなった。その合間に授業を行っていた。インドの行事があるときはインド人のお客さんでいっぱいになって休講したこともあった。お店の創業イベントでお客さんが並んだ。

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  行列ができた創業祭

 その翌日からしばらく休業に入った。帰省とインド人スタッフとの社員旅行を兼ねて12月8日にインドへ向かった。当日も成田から「行ってきます」のメッセージを送ってきた。
 彼は昨年ロックダウンのため、帰国できなかった。そのため、今回は長期の帰省。コロナ前にできた下の子にはじめて会えるのがものすごく嬉しそうだった。帰国したらオンラインで、彼だけでなく妻子にも授業を行ってほしいという要望も出ている。永住権が取れたら妻子を呼び寄せるつもりだ。

 日本に来る前に少しでも日本語がわかるとかなり違う。ゼロで日本に来た生徒たちを見ているので彼の考えは正しいと思う。1年以上帰国できずにいて、はじめて下の我が子を抱く様子が見たいので写真を送ってほしいと思っていたら、2歳の誕生日ケーキを家族で囲んでお子さんにカットさせる写真を送ってくれた。

 ◆ 5.花嫁を連れて戻りたかったオンライン生徒

 5月に日本を出て短期で仕事を済ませて日本に戻るつもりだった生徒。ひとたび戻りそびれると、あとは戻れるようになるまで待つしかなくなった。それからずっとチャンスを伺いながら過ごしていた。思いついたのが…自分たちの間で結婚を誓っていたカノジョがいる。この際、きちんと婚約して連れて帰ろう!

 南のインド人の結婚事情は、機会があったら、当事者たちのエピソードを交えて詳しく述べたいと思うが、ここでは簡単に説明する。インドでは見合い結婚が主流である。私はこれを「まだ」という表現はしたくない。私は恋愛結婚だが、日本の合コン、マッチング、紹介は見合いに近い、もしくは事実上の見合いと思っている。知り合うきっかけはなんでもいい。

 さて、彼はすでにプロポーズ済みだ。そこで、カノジョと相談して親に婚約報告、親戚に結婚のお伺いをたてて結婚式を挙げて一緒に日本へ戻ろうと目論んだ。ありがちな、というか、よくきく話しと同じ展開だった。両家のご両親や兄弟は「あなたが選んだ人だから間違いない」とすぐに認めた。
 その後、それぞれの親戚廻りを各1週間かけて行った。難色を示す親戚、難色を示すふりをする親戚、なんでもいいから水を差したい親戚など、面倒くさい2週間を送った。結論は結婚できることになった。しかし…星占いの結果、結婚式は来年。つまり、今回、単身で日本に戻ることとなった。戻ってから14日間の自宅隔離を独りで過ごすことになった。

 ◆ 6.パキスタンに帰った友人②

 前回にも書いた新潟在住のパキスタン出身友人は、11月16日にスリランカ航空で帰省した。途中、成田空港で「見送りに来て」と無理難題。公立学校で仕事をしているのだから、成田空港に行って間違って感染したら学校に迷惑をおかけする。3万円の検査・証明の費用は「痛い」と言っている。
 「鼻ぐりぐりで、金、こんなに取るのか」私は笑って「鼻ぐりぐりって痛いの?」とわざと訊いた。「違う、3万円」そして、「でも日本人のゲートは空いているでしょ?」「うんガラガラだったね」…「ぐりぐり」「「ガラガラ」勉強して日本語を覚えた人には難しいオノマトペの日本語をスムーズに話すんだ!

 コロンボ空港のカフェから連絡。それから毎日、まるで定時連絡。ところがある日、連絡が来なくなった。前日、「映画を見に行く」と言って、それも金曜日。モスクにお祈りに行く日でしょって思った。その日の現地の夕方、私から連絡した。「お祈りに行ってから映画に行こうと思っていたら面倒くさくてやめた」そして連絡がなくなった。
 と思ったら、その数日後「夜中の4時、強盗に入られた。金とか日本の携帯を持っていかれた」「家族は大丈夫だったの?」「家族はここにいる。しょうがないから携帯を買った」

 携帯や当座のお金を盗られても無一文にならないで、現地の携帯を買える…パキスタンの泥棒事情は、脅かしてドネーションしてもらう感覚なのかもしれない。思った通り、友人は電話のバックアップをとっていなかった。全部「案の定」だった。しかし、支払いにはシビア。au へは一時停止をいち早く連絡したそうだ。強盗はコロナ禍とは関係ないけど、日本国内でお金をたくさん使ったから、可哀想だと感じた。まだ警察の事情聴取が終わっていないらしく、呼び出しが毎日のようだ。暇をしに帰省したけれど、忙しそうだ。

 (東京ベイインターナショナルスクール顧問)

(2021.12.20)
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