【コラム】
あなたの近くの外国人(裏話)(44)

「近く」と「遠く」のコロナの話し⑤

       「私は陽性です」「入国拒否」
坪野 和子

 前回の続きのジェンダーについて書こうと思っていた。ほとんど原稿は終了していた。しかし、インド・パキスタン・ネパールでのコロナ感染拡大が自分にとってかなり身近な逼迫している話しになってきた。そして、5月12日。これら3カ国からの入国拒否が日本政府から発表された。外務省のホームページをご高覧いただきたく、文末に引用掲載する。

 ◆ 1.現地の実家に帰っていった社会人生徒たち

 日本の連休中、インドに帰国中だった生徒4人と、現地在住でインド支社があるチェンナイがロックダウンのため実家に帰った生徒1人の連絡が、しばらく音沙汰なしだった。インド正月で家族行事があったのと、帰国の名目が「出張」なのでインド本国のロックダウンによって実家からのテレワークをしていた。特に、勘定系システムエンジニアの仕事やブリッジエンジニアの仕事をしている生徒は、時差3時間半分の残業もしていたのだから忙しいのだろと思っていた。そして、生徒から5月11日からの連絡があり、オンライン授業が再開できるかな?って思った。その連絡の内容は後述する。

 ◆ 2.5月連休明けくらいから毎日「元気ですか?」「はい」「私は陽性です」

 参った!! テキストチャットを送ってくる人たちから、いつものように「元気ですか?」返事は「あいむ ふぁいん」しかし、次…「私は陽性です」え?「お大事に。ゆっくり休んでください」

 最初はインド西ベンガル州のネット友達だった。久しぶりの連絡と思ったらコロナに感染してしまったのか! 症状については何も言ってこないし、重症ならチャットを続けるわけにいかないし、無症状なら彼から大丈夫とか悪くならないか心配しているとか言ってくるだろうから、そのままチャットを終わらせた。この日を皮切りに毎日1回は「元気ですか?」「はい」「私は陽性です」となる。
 ついに「元気ですか?」「あいむ ふぁいん あんど セーフ」「それは良かった。私は陽性です」に変わっていった。毎日なんで気が滅入る。

 ◆ 3.パキスタンから「私は陽性です。骨が壊れたみたいに痛い」

 ほぼ同年代の男性。日本にネット上のガールフレンドがいる。コロナが終わったら日本に2週間、観光ビザで来るつもりだと言っていた。もしかしたら結婚(再婚)するための来日を予定していたのかもしれない。それが翌日「私は陽性です。とても気分が悪い。骨が壊れたみたいに痛い。全身が痛い」さらに「毎日 お茶やレモンティーでビタミンCを摂っている。レモン、オレンジ、イチゴを食べている」

 ええ? 去年拡散したネット上の怪文書を信じているのかしら? しかもこのデマはコロナ予防で、かかってからでは効果はないのに。日本では消費者庁からビタミンCやDの予防効果を謳う健康食品の表示に注意喚起を受けているくらいなのに。でも、なにかせずにはいられないだろうから、気休めになるならそれはそれ。特に返事はしなかった。

[昨年の拙ブログ]
 コロナウイルスに関する(怪)文書
  https://ameblo.jp/amalags/entry-12578678488.html
 コロナウイルスに関する(怪)文書2
  https://ameblo.jp/amalags/entry-12579387470.html

 ◆ 4.先生、陽性でした。(たぶん無症状?)

 5月12日。「先生。今、成田にいます。インドのPCR検査では陰性だったのに成田空港では陽性と判定されました。10日間の隔離となり療養宿泊施設に泊まっています。明日、気分が悪くならなければ、自宅に帰れます。来週から授業を受講できると思います。宜しくお願い致します」「ご家族は?」「家族は全然大丈夫です。元気です」(※次の授業で「全然」をなおさなければ…全然~ない)「なっらどぅ(タミル語でgood)」「先生も元気ですか? 気を付けてください」「私は問題ないです。気を付けます」

 うーん。インドのPCR検査はもしかしたらザルなのだろうか? 潜伏期間に検査をしたのだろうか? それとも機内感染なのだろうか?(だとしたら早いか?)家族は元気といっても濃厚接触者だから検査をしたほうがいいのではないだろうか? 本人はすでに入国済みなので数日前に発表された日本政府の宿泊施設滞在日数は延びることはないだろう。そう思っていた数時間後、新たな方針が発表された。

 ◆ 5.え? 入国拒否?

 5月9日。「Hi Kazuko san! 家庭の行事があります。今晩のクラスは12日にしてください」(母の日かしら?)「はい。ですが、高校の仕事があるので21:40日本時間にスタートでいいですか?」「はい、大丈夫です」「では水曜日に」「はい、ありがとうございました」(※初級後半レベル)
 そして、12日当日20:30頃、「政府、インドなど3カ国から入国拒否」の速報をみつけた。高校の仕事が終わってネットチェックをした時だった。ほぼ同時に本人からYahooニュースのリンクが送られてきた。

 「インドからの水際対策強化 日本人の帰国者除き入国拒否へ」(送られた時には【速報】がついていた)
 https://news.yahoo.co.jp/articles/5f845d58ca5d27145d33706382677b36d90d8e68

 このすぐあとのテキストチャットは英語。緊急事態なので日本語の勉強どころではないので。「私は会社の人事部と日本大使館(チェンナイ領事館)に連絡をしなくてはなりません。私はクラスに出席できません。遅い連絡でごめんなさい」そして…「私は明日のフライトをチェックして飛びます」

 外務省のホームページをチェックした。そこには14日00:00から適応とある。そこで電話をした。いつもお世話になっている旅行会社GNHトラベルの山名訓さんに。13日11:59までに到着するチケットを探していただいた。山名さんと私が感じたことが一致していた。インド人の「まず行動ありき」やっぱり彼ら凄いですよね。取り敢えず行動しますものね。いや尊敬モノですね。インド人とベタベタなお付き合いを経験している同士だから分かり合える。

 「デリー、ムンバイの近くならば可能性がなくもないけれど、チェンナイからなら難しいけれど探してみます。もしかすると政府の臨時便が出るかもしれないのでそれも調べてみます」とおっしゃた。…結果…「今から4時間でチェンナイの空港に行けるなら可能性があります。チェンナイからハイデラバードへ飛んでドバイ、そこからシンガポール、日本。ギリギリ23時のうちに到着します」すごい!さすが敏腕!

 早速、本人に電話した。まず、無理だった。彼の実家からチェンナイまで普通でも6時間かかる。おまけにロックダウンなのでもっと時間がかかるし、移動の許可をもらわなくてはならない。さらにPCR検査の結果が出ているか問い合わせたら、まだ出ていなかった。断念した。「入国拒否は2週間くらいだという情報が入りました。明日、大使館から期限の終わりの日の連絡がくることになっています。28日に日本に戻ります」そして、もう1人の生徒の安否を訊いた。「彼女は日本で単身赴任をしていたので旦那さんと子どもの世話で忙しいようです」ああ、彼女は元気なのね。良かった。

 ◆ 6.まだ音沙汰なし

 4月10日。「先生、おはようございます。旅行で気分が悪いので明日はクラス参加できません。ご不便おかけして申し訳ございません」「お大事に」
 4月17日。時差を考えて授業を遅い時間にしようと私から連絡した。一緒に受講する生徒はインド在住。「気分は いかが(どう)ですか。今度の土曜日のクラスですが、インド時間を考えるといつもの時間では早いと思います。インドにいる間、少しおそい時間にスタートしましょうか? 明日、22:00 JSTでどうですか?」「先生 いま元気です。明日、22:00 日本時間は 大丈夫です」

 4月18日。「先生、娘は今日の朝から熱が出て、娘を病院に連れて行かなければなりません。申し訳ありませんが、今はクラスに参加できません」
 …その後、連絡がない。彼も最初の予定では、日本の連休明けには帰っているはずなのだが。もしかしたら出国の機内感染したのではないか? 到着直後に市中感染したのではないか? もしかしたら奥さまとお嬢さんも一緒に日本に戻る際、誰かが陽性になっていたのか?(日本から妻子を連れての帰国)いや、便りがないのは達者な証拠?

 彼は自分の息子と性格が似ていて(良くも悪くも…頭の回転が速いので飲み込みが速いが、そそっかしい。観察力が高いが、やたら無意味に着目点が細かい。など)彼の年齢もお子さんの年齢も私の息子と孫と同じなのでいつも離れて暮らす息子に教えているようで楽しい。
画像の説明

<絵を見て、受身形を作る問題>
・模範解答
 1.私は彼女に嫌われました。
 2.私は誰かに傘を間違えられました。
 3.私は犬に手をかまれました。

・彼の解答…間違えではないです。正解です。
 1.私は彼女に心をこわされました。→ Heart broken
 2.私は誰かに(私の)傘を持っていかれました。→ 手許より自分の傘?
 3.私は犬に手首をかまれました。← wrist と呟いた。

 彼と彼の家族の安全と健康を祈る。

 ◆ 7.「特段の事情」外務省・法務省・厚生労働省

 5月2日、外務省はインドにいる日本人に対して「早く帰ってください」と注意喚起を出した。そして今回の入国拒否に関しての外務省の発表は、「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」及び「特別永住者(日本在住の北朝鮮・韓国国籍と台湾人)」は入国拒否とならない。今回ではなく、法務省が4月22日に発表した「上陸拒否」に関する文章とは隔たりがある。

 その曖昧な内容は5月12日に書き換えられた。たった1日で解釈が狭くなった。さらに厚生労働省は簡潔だ。しかし、なぜクンブメラ(インド正月:地域によって名称が異なる)やラマダンとイード(イスラム教徒)で帰国して、密になって遊んで帰ってくる日本人の配偶者が入国できて、日本人との婚姻がない、仕事で帰国して日本に戻ってくる人たちが入国できないのか? 不公平だという声があり、緩すぎの水際対策だと当事者(配偶者外国人)の日本人妻さんの声があり、日本人と結婚すればなんでもありなのかという法のありかたへの指摘が見られた。いやいや、潜在的に日本での外国ルーツの人たちへの待遇をわかっていないことが露呈しただけに過ぎない。突如日本に戻れなくなった人たちの安全が気がかりだ。

      *****************

▼[引用]特段の事情について(法務省)4月22日

 次の(1)から(4)のいずれかに該当する場合には,特段の事情があるものとして上陸を許可します。
 なお,防疫上の観点から,法務省ホームページ「出国前検査証明について」のとおり,入国・再入国に当たっては,原則として,出国前72時間以内の新型コロナウイルスに関する検査証明の取得が必要となりますので,御注意ください。
(1)再入国許可(みなし再入国許可を含む。以下同じ。)をもって再入国する外国人
(2)新規入国する外国人であって,以下のいずれかに該当する者(注2)
 ア 令和2年8月31日までに再入国許可をもって現在上陸拒否の対象地域に指定されている国・地域に出国した者であって,その国・地域が上陸拒否の対象地域に指定された後,再入国許可の有効期間が満了し,その期間内に再入国することができなかったもの
 イ 日本人・永住者の配偶者又は子
 ウ 定住者の配偶者又は子で,日本に家族が滞在しており,家族が分離された状態にあるもの
 エ 「教育」又は「教授」の在留資格を取得する者で,所属又は所属予定の教育機関に欠員が生じており,その補充がないと当該教育機関の教育活動の実施が困難となるなどの事情を解消するために入国の必要があるもの
 オ 「医療」の在留資格を取得する者で,医療体制の充実・強化に資するもの
 カ 令和2年10月1日以降に入国する者で,必要な防疫措置を確約できる受入企業・団体が本邦にあるもの(「外交」又は「公用」の在留資格を取得する者を除く。「短期滞在」の在留資格を取得する者については短期間の商用を目的として査証を受けた者に限る。手続の詳細については外務省ホームページを参照。)
 なお,この仕組みにより本邦へ渡航する者は,当分の間,特段の事情がないも
のとして上陸拒否
 また,この仕組みにより発給された査証は,上陸拒否対象地域以外から入国する場合についても,令和3年1月21日以降,使用できませんので御注意ください。
 http://www.moj.go.jp/isa/content/930006078.pdf

▼[引用]新型コロナウイルス感染症の感染拡大に係る上陸拒否措置等及び国際的な人の往来の再開の状況(概要)(出入国在留管理庁)5月12日

②再入国許可(みなし再入国許可を含む。)による再入国
 なお,上陸の申請 日前14日以内にインド,パキスタン又はネパールに滞在歴のある者は,当分の間,原則として上陸を拒否
③日本人・永住者の配偶者又は子の新規入国
④その他人道上の配慮の必要性がある場合 など
 http://www.moj.go.jp/isa/content/001347329.pdf

▼[引用]新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について(外務省)5月12日

2 インド、パキスタン及びネパールからの再入国禁止(NEW)
 インド、パキスタン及びネパールの3か国に、本邦への上陸申請日前14日以内に滞在歴のある在留資格保持者の再入国は、令和3年5月14日から当分の間、拒否されます。
 (注1)5月13日までに再入国許可をもって出国した「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、又は「定住者」の在留資格を有する者が、これら3か国から再入国する場合は、特段の事情があるものとされます。なお、「特別永住者」については、今回の再入国拒否対象とはなりません。
 (注2)上記に基づく措置は、5月14日午前0時(日本時間)前にこれら3か国を出発し、同時刻以降に日本に到着した者は対象となりません。
 なお、令和3年5月14日以降、上記措置に準じ、令和2年8月31日までに再入国許可をもって現在上陸拒否の対象地域に指定されている国・地域に出国した者であって、その国・地域が上陸拒否の対象地域に指定された後、再入国許可の有効期間が満了し、その期間内に再入国することができなかったとして新たに在留資格認定証明書を取得し査証の発給を受けたもののうち,インド、パキスタン又はネパールに本邦への上陸申請日14日以内に滞在歴のあるものについては、当分の間、原則として上陸拒否されます。

3 検疫の強化(NEW)
(2)インド、パキスタン及びネパールからのすべての入国者に対する検疫の強化
 インド、パキスタン及びネパールからのすべての入国者及び帰国者に対し、本年5月10日から、当分の間、検疫所長の指定する場所(検疫所が確保する宿泊施設に限る)での待機が求められます。その上で、帰国後3日目及び6日目に改めて検査を行い、いずれの検査においても陰性と判断された方については、検疫所が確保する宿泊施設を退所し、入国後14日間の自宅待機が求められます。
(3)インド、パキスタン及びネパール以外の変異株流行国及び変異ウイルスの感染者が確認された国・地域からの入国者に対する検疫の強化
 ア 変異株流行国・地域
 すべての日本人帰国者及び再入国外国人に対して、出国前72時間以内に実施したCOVID-19に関する検査による「陰性」であることの検査証明の提出に加え、当分の間、検疫所長の指定する場所(検疫所が確保する宿泊施設に限る。)での3日間の待機が要請されています。その上で、入国後3日目において改めて検査を行い、陰性と判定された方は、検疫所が確保する宿泊施設を退所し、入国時から14日間が経過するまでの間、引き続き、自宅等での待機が求められます。
 https://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/fna/page4_005130.html

厚生労働省 水際対策強化に係る新たな措置(12)5月12日
 https://www.mhlw.go.jp/content/000778994.pdf

 (東京ベイインターナショナルスクール顧問)

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