【沖縄の地鳴り】

「辺野古新基地」巡り新たな動き

平良 知二

 秋田、山口両県への「イージス・アショア」配備計画が停止になって、「ならば辺野古新基地も建設中止だ」との声が強い。変化が来るのだろうか。

 河野太郎防衛相は地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備停止の理由を3つほど挙げている。そのひとつ、予算(カネ)がかかり過ぎるということで言えば、「辺野古」は「アショア」以上に最初の見込みを大幅に上回る建設費となる。何しろ1兆円に近い。「アショア」は改修のための費用3,000億円ほどと見られているから、「辺野古」の半分に足りない。新型コロナの感染拡大に悩む今、「辺野古」のカネはコロナ対策に回せ、という声が出るのも自然だ。

 迎撃のためのブースター改良などミサイル改修に時間がかかるというもう一つの理由も、完成が最低12年も先の「辺野古」に比べると大きな問題ではあるまい。世界一過密で危険な普天間基地の1日も早い撤去を、というのが「辺野古」問題の始まりであるが、危険解消のために今後12年もかかるというのでは「アショア」の改修時間どころではない(すでに20年は経過している)。

 迎撃ミサイル発射後にブースター部分をうまく制御できないという技術的な問題について言えば、「辺野古」こそ軟弱地盤という根本的な技術問題を抱えている。マヨネーズ状と揶揄される地盤をいかにして“制御”しようというのだろうか。専門家の多くは警鐘を鳴らしている。

 配備計画を停止せざるを得ない背景には秋田県民ら地元の根強い反発があった。計画のデータにほころびが出て、防衛省が謝るなどし、県民の怒りはさらに大きくなった。防衛省は結局、地域の声に押し込まれた。原動力は地域住民だった。
 秋田、山口に比べ沖縄の反「辺野古」の声が小さいわけはない。全県的に何度も明確に意思表示をしている。にもかかわらず、安倍政権は「辺野古が唯一」のリフレインばかり。「アショア」とは大違いである。

 「イージス・アショア」はほんとに必要なのか、との疑問が専門家にはあったという。地上イージスは最新鋭のミサイルには対応できないという疑念のようだ。装備の高度化は年々著しいといわれ、彼我の対抗関係でその装備がいつまで有効なのか、改めて問題視されたのである。
 その点、「辺野古」についても同様であろう。海兵隊基地はいつまでも沖縄でなければならないのか。訓練のため各地を転々と部隊移動し、沖縄に固定的に張り付くわけでもない。グアムへの移転もある。今さら大がかりな新基地がなぜ必要か。戦略的観点からも見直しの声がある。

 「アショア」と比較せずにおれなくなったか、元防衛相の中谷元氏が今月、玉城デニー知事と面談し、「辺野古」に関し提案をしてきた。自衛隊も使える飛行場、あるいは軍民共用の飛行場にしたらどうか、という案である。個人的な考えというが、完成まで12年という「あまりにも長い」今の状況を何とかしたいという思いのようだ。
 軍民共用案はかつての案のひとつで、「辺野古」反対の玉城知事はさすがに即拒否したのだが、注目されるのは「辺野古が唯一」のリフレイン状況の中、“別案”を持って自民党有力者が動いたことである。「辺野古」反対にくさびを打ち込む動きになる恐れもあり、警戒が必要と思うが、「アショア」での思い切った路線変更が「辺野古」に影響を及ぼし始めたとも見られる。

 米国議会(下院軍事委員会)で軟弱地盤の問題が浮上し、「辺野古」に懸念を示す動きも強まっている。がんじがらめに堅固に見えるものでも、内部に問題があれば表面化は避けられない。変化の兆しが表れて来た。

 (元新聞記者)
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