【沖縄の地鳴り】

「猛威をふるう新型コロナ」

平良 知二

 沖縄は新型コロナウイルスの猛威に震えている。その勢いは凄まじく、年明けたった10日間でそれまでの何カ月分にも匹敵する感染の広がりとなり、多くの学校は冬休み明けと同時に急きょ臨時休校へ、各種催しや集まりも中止が相次いでいる。感染者は全国的に急増しているのだが、沖縄の突出は尋常ではない。
 例えば新春3日から9日までの1週間、東京の感染報告は計3,554人だったが、沖縄は6,638人、東京の1.8倍にも上った。この7日間は毎日、沖縄の感染者数が東京より多く、連日全国一の数だった。人口比を考えれば、実数で東京の上を行くという異常さが分かろうというもの。

 感染力が強いオミクロン株の広がりが今回の深刻さの原因と思われるが、一方で米軍基地の存在が見のがせない。基地内の感染者はかなり増加しており、民間での急増は米軍基地から漏れ出たのが大きな要因との見方は強い。

 確かに昨年12月は中旬まで、県内の1日の感染者はゼロからせいぜい6人まで、米軍基地内もゼロか1人がほとんどだった。これが15日から特に基地内の感染者が急に増え、15日8人、16日7人、17日14人、そして18日は133人と一気に跳ね上がった。海兵隊キャンプ・ハンセン(金武町)でクラスターが発生したのである。以後、基地内は20日の1日だけが1ケタで、新年までずっと2ケタがつづいた。そのころ、2ケタ感染の都道府県は北海道、東京、神奈川、大阪など10もなかったというのに。

 この影響が沖縄側に現れたとみることができる。県内ではクリスマス・イブ前日の23日がターニング・ポイントだった。米軍から約1週間遅れである。この日、2カ月ぶりに20人台(25人)に増え、以後33人、29人…年末の30日に50人、31日44人と上昇傾向をたどった。新年での増加も予感させていた。

 米軍基地でのコロナは岩国(山口県)などでも広がって、日本政府は基地内での感染防止を徹底するよう米側に働きかけたが、結局、日米地位協定内での措置にならざるを得ず、沖縄から見れば不十分に終わっている。クラスターが起きた12月に沖縄側の医者は「基地内で流行が始まっていたが、気づくのが遅れたのではないか」と指摘していたが、基地内の防止策は中途半端だったと思われる。日本政府も気づかなかったのか。

 海兵隊の部隊は移動が多く、入れ替わり立ち代わり若い兵員が動く。基地内では自由に行動し、民間地への出入りも絶えない。感染に対する強い防止策を取らなければ、基地の外に漏れ出るのは時間の問題であった。キャンプ・ハンセンのゲート周辺の住民たちは、マスクなしの米兵が目立つと嘆いていた。酔っ払い姿も少なくなかったようである。オミクロン株は米軍由来とみられている。

 玉城デニー知事は米軍からの流出に「強い怒りを覚える」と批判したが、ここは基地司令官を呼びつけるくらいの気概で厳しく立ち向かったらどうだったか。「基地を完全ロックアウトすべきだ」と。かつて県民が1人1人、手と手をつないで基地を取り囲む基地包囲闘争というのがあったが、この逆の、中からの包囲を米軍自身にやってもらうのである。

 とまれ、今のコロナ状況は最悪だ。感染者の増え方が普通ではない。地元紙・沖縄タイムスも連日1面トップで警戒を呼びかけている。623人の感染者が出た翌6日紙面は「まん延防止9日にも」、7日紙面が「感染者最多981人」、8日は「1414人感染 初の4桁」、9日「1759人感染 連日最多更新」、10日「1533人感染 3日連続4桁」…の大見出し。

 この期間、先述の通り東京の感染者数を上回る急伸であり、県民自身の驚きは普通ではない。「オミクロンは簡単にうつるらしい」とマスク越しの小声で、その感染力に警戒感を高めている。医療ひっ迫は深刻化しつつあり、関係者の悲鳴も上がる一方。広島、山口とともに「まん延防止等重点措置」の適用が始まって、第6波はどう展開するのか。

 筆者自身が幹事的任務をもつ集まり(飲み会、半公的な会)が複数あるが、いずれも中止を余儀なくされた。何度目かの中止であるが、今回は何のためらいもない決断だった。ためらいを許さない状況下にある。

 (元沖縄タイムス記者)

(2022.1.20)
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