【世界の動き】
「日印原子力協力協定」に反対する
<一>
2016年11月11日、日印両首相は首脳会談を東京で開催、「原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とインド共和国政府との間の協定」に署名した。
2010年6月、民主党菅政権により開始された交渉は、安倍政権に引き継がれ、「前の民主党政権が決めた政策を引き継いだだけ」という責任なし主張から、強引に交渉を進めての署名である。
11月7日には、昨年に引き続いて、被爆地の広島と長崎市長が、「交渉中止」を求める要請書を提出していた。
安倍政権の誘導を丸呑みする日本メディアは、政権側発表をそのまま垂れ流している。例えば、署名式直後、官房副長官会見において「インドが再び核実験を行った場合」として、読売新聞は「協力の停止」、日本経済新聞は「協定の破棄」と記述した。まったく、いい加減な政府とメディアである。
さて、インド国内メディアではすでに、「果たして協定は合意したのか?」という、疑問が示されている。つまり、上記の「核実験での協力停止」について、ほぼ「否定」するインド政府に対して、「日本政府の説明と違う」との批判である。
何とか玉虫色文書での決着を求めてきた両国政府だが、すでに論理は破綻している。直近の情報では、外務省高官はインド側メディアの報道について、「事実関係の確認中、誤解に基づく発言」と述べたされる。
本協定の内容の問題点については、次号にて詳しく論じるとして、以下、全国のNGO・市民団体・個人で構成した「日印原子力協定阻止キャンペーン2016」による「抗議書」、10月段階での交渉中止を求める「要請書」を掲載したい。
<二>
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
日印原子力協定阻止キャンペーン2016
「日印原子力協力協定」署名 抗議書
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
2016年11月11日
内閣総理大臣 安倍晋三殿
外務大臣 岸田文雄殿
「日印原子力協力協定」署名 抗議書
本日(2016年11月11日)、日印両首相は首脳会談を東京で開催、「原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とインド共和国政府との間の協定(以下、本協定)」に署名した。私たち「日印原子力協定阻止キャンペーン2016」は、両政府の蛮行に強く抗議する。
本協定署名は、核廃絶へ向かう世界の流れに逆行し、「民衆の声、核廃絶への世界の願い」を踏みにじるもので、到底許されるものではない。
2010年6月の交渉開始以来、本協定について、多くの問題が国内外より指摘されてきた。
特に、核拡散防止条約(NPT)や包括的核実験禁止条約(CTBT)に加盟せず二度も核実験を強行したインドとの本協定は、原発輸出だけでなく、核兵器増産を許す内容である。
本協定の署名は、日本がこれまで戦後一貫して堅持した「核廃絶とNPTを基本とする外交」を放棄することを意味する。
広島・長崎両市長の11月7日付「要請文」の通り、両被爆地の人びとの怒りは強い。さらに、東電福島第一原発の被災避難の人たちも、事故収束なき状態での原発輸出を厳しく批判している。
かねて私たちは、インドの原発反対・核兵器反対運動と協力し、交渉の即時中止を求め活動してきた。今後も日印運動の交流と連帯を強化し、国際支援を得て引き続き反対運動を展開する。
本日を「日印原子力協定反対・世界同時行動デー」として、首相官邸前、大阪など国内各地、インドの輸入原発建設予定各現地(ジャイタプール、コヴァダ、クーダンクラム)、デリー、ムンバイなど各都市、さらにイギリス、アメリカ、ドイツにて大規模抗議集会を開催、抗議メッセージ発表を行う。
世界の人びとは、安倍・モディー両首相による締結への決断を許すことはない。重ねて、本協定署名に抗議する。
私たちは今後、国会の承認手続きにおける徹底した情報公開での慎重審議を求め、志しを共にする多くの衆参議員と協力し、「承認阻止」のために闘う。
日印原子力協力協定の締結反対! 日印原子力協力協定承認阻止!
<三>
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「日印原子力協力協定」に反対する共同アピール
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
日本国内閣総理大臣 安倍晋三様
インド共和国総理大臣 ナレンドラ・モディー様
「日印原子力協力協定」に反対する共同アピール
私たちは、11月中旬予定とされるインド・モディー首相来日時における、「日印原子力協力協定」(以下「協定」)の調印・締結に強く反対します。
本「協定」は、NPT(核拡散防止条約)非加盟ながら核兵器を持つインドに対して、日本が原子力関係の技術を輸出することを目的とします。戦争被爆国である日本の協力で原発建設となり、「協定」で認めるとされる「使用済み核燃料の再処理」により抽出されたプルトニウムが、国際的監視もなく軍事転用される可能性もあります。
「協定」締結は、NPTやCTBT(包括的核実験禁止条約)を無視して核軍拡を続け、国際的批判を受けるインドに「原発と核兵器の増産」をもたらし、それを日本が助力することとなり、核廃絶をめざしてきた日本が、「協定」締結により世界の核廃絶・核兵器禁止へ向けた動きに反することは明らかです。
本年9月以降、核兵器をもつ隣国であるインドとパキスタンは、カシミール地方紛争を激化させ、核戦争への危機も高まっています。まさに11月に「協定」締結となれば、南アジア地域の軍事緊張が一層高まることは明らかです。
また、世界中を震撼させた東電第一原発事故の収束もできず、多くの避難者への補償もないまま、インドだけでなく広く世界に原発を売り込む日本政府の非倫理性は、国際的な非難にさらされています。
インド現地では、原子力発電所に懸念を抱く地元住民が反対運動を大規模に展開し、これに対する激しい弾圧が行われています。また、住民に対する土地の補償、安全対策、避難計画、補償も全く不十分です。
私たちは、日本政府が日印原子力協定を締結しないこと、交渉を中止することを強く訴えます。
日印原子力協定阻止キャンペーン2016
呼びかけ:グリーンアクション、原子力資料情報室、コアネット、「しないさせない!戦争協力」関西ネットワーク、たんぽぽ舎、とめよう原発!!関西ネットワーク、ノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパン、NPO法人ピースデポ、ピースボート、美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会
賛同:31か国、450団体、3282名
団体一覧は http://nonukesasiaforum.org/japan/archives/209 からご覧いただけます
(岐阜女子大学南アジア研究センター長補佐)