【コラム】
あなたの近くの外国人(裏話)(33)

「アベノマクス」ではなく「○○マスク」(1)


坪野 和子

 先月から、えらいことになっていますね。コロナウイルス。私の周辺の外国人たちはマスクや消毒液等を配布するボランティアを行いました(行います)。今回はその様子について、次回はそれらの活動以前の過去のボランティアを加え活動の深さをお伝えします。

1.「アベノマスク」より嬉しい「パキスタンマスク」

 3月1日、野田市でパキスタン料理レストランがオープンし、そのオープニング・パーティに呼ばれパキスタン人コミュニティの要人が集まっていました。その時、知り合ったハーフィーズ・メハール・シャマースさん。彼が自分のボランティアグループとともに4月6日、東京渋谷でマスクを無料配布しました。その時の様子は Twitter でも話題になりました。<#パキスタン>で検索すると、多くの感謝のツイートを見つけることができます。

 「渋谷に行ったらパキスタン人と日本人がマスクを配っていた!」日本人から「5日間マスクを切らしていて困っていたので助かります」「配ると言っていつになるかわからないアベノマクスより早くもらえたパキスタンマスク、ありがとう」「素直にありがたい」「コロナで行きたくなかった渋谷…マスク貰って気持ちが晴れた」
 またハーフィーズさんが2011年に南三陸町に駆け付けたボランティアを覚えていらした方もいらっしゃいました。

 ハーフィーズさんがマスク配布のボランティアを思い立ち、行動をはじめたのは約1か月前。ご自身が子だくさん7人のお子さんを持ち(奥さんはひとりだけ)マスクを箱から出して1日9枚なくなっていくうちに、あちこちの店頭からも消えだしたので「みんな困っているだろうな」そこで彼が主催するパキスタン・コミュニティ・ジャパンのグループの仲間に声をかけ、3,000枚配布を目標にあちらこちらから集めて…しかも日本製にこだわって。パキスタンから直接送られたと思われているようですが、現地はロックダウン中ですから。

 10人の仲間が直接参加できないので資金を援助してくださった。配布には10人のパキスタン人と日本人数名が参加しました。ハーフィーズさんご自身は42歳ですが、上は50歳から下は16歳まで。年上の仲間も仕切ることなく、みんなで協力して配布しました。渋谷で配布したのは「ひとりひとりに渡したかった」そうしたら「パキスタンいいな」ってみんなに言ってもらえたのがすごく嬉しかった。パキスタン人と日本人が繋がれる、パキスタンを知ってもらえたし。

 マスクは1枚ずつビニール袋に入れ、そこに「パキスタン日本友好1952 私たちはこの困難な時期に日本人と一緒にいます」とカラー印刷した紙を貼ってあります。マスクの準備はハーフィーズさんと4人のお子さんが5日間パッケージし、紙とともにホチキス止めしました。本当は貼った紙はシールにしたかったけれど、印刷屋に話すと28万円かかると言われて、自分で印刷して紙をカットして作ることにしました。ビニールに入れたのはなるべく衛生的に渡したかった、渡す手もビニール手袋で覆って渡しました。

 日本人のご協力を頼んだのは、中国人がマスクを配って受け取ってもらえなかったことがあったと聞いたので、外国人だけだと怖いと思う人に安心してもらうためでした。またマスクなので「白」にこだわってテーブルもお揃いのパーカーも「白」。準備のためのお金もかなりかかった…。テーブルは2つ用意したけれど、ハチ公前なので1脚しまうことになりました。同じ場所でユーチューバー(動画を発信する人)が真似されると困るからだそうでした。

 この日は10時にハーフィーズさんの事務所に集まり、12時に渋谷の現場に到着。13時にハーフィーズさんのアザーン(コーラン朗誦)を皮切りに配布をスタートしました。これだけ時間をかけて準備した甲斐があって、みんながうれしそうに受け取ってくれました。今後は、幼稚園に消毒液、病院、市役所を通してマスクを寄付する活動を考えています。
 拙ブログにこの日の動画を載せました。
  https://ameblo.jp/amalags/entry-12588790677.html

画像の説明
◆ 2.「アベノマスク」とどちらが先?「東トルキスタン(ウイグル)マスク」

 ウイグル人の知人からメッセージがきました。以下、ほぼ原文のままです。
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 中国が世界にばら撒いた新型コロナウイルスが、私たちウイグル人の第二の故郷である日本
 でも大きな脅威となり、人々の命を危険に晒しています。

 思いやりや助け合いが最も必要なこの時こそ、
 私たちウイグル人も、微力ながら「マスクのボランティア活動」を通じて、皆様と共にこの
 災難に立ち向かいたいと考えます。

 私たちは、在日ウイグル人有志らを動員し、手作りも含め、可能な限りのマスクを集めて、
 逗子市や相模原市などの保育園や高齢者施設へ届けるボランティア活動を始めています。
 皆様の手元に余分なマスクや消毒液があれば、一人分でも構わないので、是非とも私たちの
 ボランティア活動を通じて有効活用して頂けますようお願い申し上げます。

 期間は2020年4月15日迄
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 日本ウイグル協会からの連絡です。4月15日に逗子市、16日に相模原市、市長さんに会ってマスク、消毒液をお渡しする予定です。今回はメールマガジン原稿締め切りと発行の間の時期なので、この時の様子は次回、読者さまにお伝えします。また今回だけではなく、収束・終息まで何か活動を続けるつもりのようです。
 日本ウイグル協会がなぜ相模原・逗子なのかというと、10月の令和元年東日本台風(ハギビス・台風19号)で土砂崩れなどにより大きな被害を受けたことから、11月5日、復興の手伝い・炊き出しに30人ほどで行ったことに由縁があります。
 「中国ウイルスを一体となって乗り越えるため少しでもチカラになれればと考えています」

 拙ブログに相模原市での活動を少しだけ載せました。
  https://ameblo.jp/amalags/entry-12588786866.html

画像の説明
 次回、パキスタンのハーフィーズさんからマスクの話を伺い、出てきた東日本大震災の時に駆け付けた南三陸町のエピソード。日本ウイグル協会のマスク・消毒液寄付の続報です。

 (高校時間講師)

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