◇ 西村先生の「靖国神社考」     今井 正敏

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 西村先生の「靖国神社考」(「オルタ」21号)で靖国神社の宮司だった松平永芳
氏の講演内容を詳しく紹介された。それによって聞くことの少なかった当事者で
ある靖国神社側の言い分がよくわかり大変勉強になりました。
 靖国問題のもっとも大きな焦点は「A級戦犯合祀」問題だが靖国神社側が合祀
理由の第一に挙げるのは「東京裁判を認めない」ということ、そして「東京裁判
で処刑された方々を国内法によって戦死者と同じ扱いにすると政府が公文書で通
達しているんですから合祀するのに何の不都合もない、むしろ祀らなければ靖国
神社は僭越にも御祭神の人物評価を行って祀ったり祀らなかったりするのか、と
なってしまいます。」と紹介されている。
 こうした理由は、小泉首相もよく承知していると思うのだが、それを承知で参
拝するということは「A級戦犯」を認めないことに通ずることになるので中国や
韓国が厳しくとりあげるのがよく理解できる。
 次に印象的だったのは、中曽根首相が初めて行った「公式参拝」に対しての松
平宮司の「言い分」。中曽根首相の参拝は「非礼参拝」であるとして宮司は出て行
かず社務所の窓から見ていて「天皇でさえ拝殿から中へは警護なしなのにボデー
ガードを4人もつれて入った。靖国の祭神は手足が四散して亡くなられたが大部
分なのです。その聖域で御身大切とは何事かと7年たった今でも無念の情が消え
ません。」という宮司の弁。さすが幕末の賢君松平春嶽の血を引く宮司の面目躍如
と言いたいところですが、現在の宮司は小泉首相がポケットから小銭を出して一
礼した「参拝」をどう感じたのか。その感想を聞きたいものだと思った。
 国内にも多くの反対があり、中国や韓国が強く批判し最近ではニューヨークタ
イムスですら「無用な挑発」と評しているのに参拝を強行する小泉首相の無神経
さにはあきれるばかりだが来年9月にはようやく幕を閉じる。しかし、彼の愚行
によって、日本が失ったものは余りにも大きく残念に思う。
                        (筆者は元日青協本部役員)