■【編集後記】

加藤 宣幸


◎ 私たちは戦後何回もの解散・総選挙をやってきたが、国民の多くは今回の解散理由に納得しなかった。9月27日の朝日新聞調査で70%が不支持だったが、他社も似た傾向で、与野党支持の枠を超えたものだ。安倍首相が『「国難」突破解散』と叫んでも、国民は彼がモリ・カケから逃げ、野党がモタつく「今なら勝てる」と賭けに出た「ご都合」解散と分かっていた。憲法53条による野党の臨時国会召集要求を3ヵ月もほったらかし、「仕事師内閣」と謳って内閣改造をしながら、施政方針演説も質疑もせず冒頭解散の奇策に出た。本来は重大な集団自衛権の解釈変更、共謀罪の成立強行などの「安倍政治」が問われるべきなのだ。憲法7条の解散権乱用が問われる。

◎ さらに今回の解散で国民を唖然とさせたのは、民進党前原代表が議論の積み上げもなく曖昧な談合により一夜で野党第一党を解体し、実態もなく安倍政権の補完勢力である「希望の党」から全員を立候補させようとした無軌道ぶりだ。しかも、安倍と戦った民進党路線と違ったものを踏み絵にし、一部は選別・排除と宣言した。これも憲政史上類を見ない異形だ。国民はこんなぶざまも立憲政治を壊するものとして厳しく審判するだろう。ただこの騒動の中で生まれた立憲民主党が、焦らずに「下からの民主主義」を訴える枝野代表のもとで、立憲政治前進のために地味な活動に取り組めば、今までの民主党がことあるごとに党の意志をまとめきれなかったから、それなりに確りとした政党に育つ可能性はある。

◎ 枝野氏は結党のスピーチで従来型の政党タイプでない新しい型の政党を創りたいと述べたが、まずは党の基盤を平和の追求と立憲政治の確立に置き、政策としては格差是正・社会保障・教育の充実・原発廃絶・沖縄基地移設・隣国との友好増進など基本をがっちり固め、党組織・運営にも新しいアイデイアを活かした野党を創り、政権と明確に対峙すべきだ。日本の政治は、自民党が対米従属のしがらみの中で地域や業界の既成利権を塗り固め、公明党の宗教組織がこれを補完している。これに、政治的組織としては共産党が明確に対向するが力に限界がある。しかも一夜で解体されるような民進党的組織力は対権力には非常に弱い。選挙はこれらの政治組織の動きとともに40%近くを占める無党派といわれる人々の動向で決まる。ただ、既成政党の組織力は必ずしも国民の多様な要求を組み上げていないから、結党されたばかりの立憲民主党がこれを確りと踏まえれば、新らたな機能を持った政党になれよう。

◎ 俗に選挙は告示になれば終盤だと言われるが、まさに選挙戦も終盤に入り各社の調査が出た。選挙前の予想とは大幅に違って希望は大失速し自民が大勝利、立憲民主の大躍進となった。勿論30%~40%の態度未定者や終盤にかけての突発事態などで変動要因はあるが、自民勝利は野党乱立、希望失速は小池党首の「排除」発言を契機に党の成り立ちが国民に問われ、立憲民主は政権への明確な対峙が求められ、最大の眼目となった。

◎ 選挙戦では勝利した与党に風は吹かず、自民党支持率は高くても、安倍支持率より不支持率がどの調査でも高いという異常さなのだ。むしろ立憲民主の健闘に励ましがあった状況だ。私が注目したのは、告示直後の10月5日に、2日前の3日に結党された立憲民主党のツイッター・フォロワー数が122,000人となり自民党が金力や大手広告会社の力で4年かけて作った113,000人を抜いた瞬間のニュースだ。その時、公明71,000・共産32,000・自由27,000・社民19,000・希望4,000なので、すべての関係者は大変驚いていた。その後、各党も手を打ったようだが、17日にはまだ立憲民主が180,000人で依然リードしていた。フォロー数がすべてではないがネットの役割は大きいので、立憲民主党が一時的でなく継続して注力し、各党をリードしきれば後発政党の弱点をカバーすることになる。

【日誌】9月20日:自宅・トレーラー打ち合わせ・白井・澤口。21日:学士会館・編集懇談・仲井斌・浜谷惇。新宿・会食会・岩根サロン・岩根邦雄。22日:半蔵門グランドホテル・小島弘パーテー。24日:神保町ロシア亭・編集懇談・京大・拓徹・荒木重雄。25日:自宅・トレーラー打ち合わせ・リアト・野沢汎雄。26日:稲城・仏教の会・竹中・浜谷・山田。27日:竹橋・毎日新聞ホール・ユーラシアアジア動向セミナー・汪・下斗米。

10月1日:自宅・編集・加藤公男。7日~9日:福岡旅行・田中四七郎・竹中・小林。14日:東大・山上会館・『不確実性の時代における東アジア協力の在り方』シンポ。16日:学士会館・北東アジア動態研究会・倉重篤郎。17日:都市センターホテル・矢野凱也しのぶ会。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最新号トップ掲載号トップ直前のページへ戻るページのトップバックナンバー執筆者一覧