【編集後記】

加藤 宣幸

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◎11月26日永田町の星稜会館でNDの会(新外交イニシアティブ)事務局長猿田佐世弁護士の『新しい日米外交を切り拓く 沖縄・安保・原発・TPP、多様な声をワシントンへ』出版記念シンポに、畏敬する竹中一雄氏と参加した。ベストセラー『永続敗戦論』の著者白井聡氏の基調講演に続く、著者と直木賞作家中島京子さんとの対談では、安部首相をはじめ世界中がトランプの一言一句に振り回されているが、今は慌てずに私たち自身が世界に何を望むのか自らの立ち位置をしっかり踏まえ、まずは彼の動きを見極めるべきだとの主張が400名を超える聴衆の強い共感をよんだ。

安倍は世界で一番早くトランプに会ったと鼻高々で、通訳を交えた僅か1時間余の会話で彼は「信頼できる」と評価したが大丈夫なのか。その答えは、トランプがこの会談直後にTPPは就任当日に離脱すると言明したことで明らかだ。白井聡氏に言わせれば、安部は選挙中にクリントン詣でをしているから「飼い主を見誤った犬が慌てて一生懸命に尻尾を振って駆け付けたように見える。恥ずかしい。惨めです。」(朝日新聞11月25日)となる。

安倍首相は地球儀俯瞰外交=価値観外交などと称してワシントンの意向を忖度し、対中包囲網形成のために世界中を走り回ったが、肝心の米国が「アメリカ第一主義だ」・「世界の警察官はもうやめた」と言い出したのだから全くの空振りで、安倍の内心の焦りは隠しようがない。彼はパックスアメリカーナが永遠に続くものと思い込み、すでにその時代が終わりつつある世界の動きを完全に見誤っているのだ。例えば2015年に世界57ケ国が参加して設立されたアジアインフラ投資銀行(AIIB)に不参加なのは米国と日本だけだが、トランプはアメリカが参加しなかったのは戦略的に誤りだったと言い出した。日本でも安倍の直系下村幹事長代理でさえ「TPPからアメリカが離脱すれば日本とアメリカは中国主導のAIIBに加盟せざるを得ない可能性がある」と言い出した。これなどはアメリカにゴマをすった安倍が国を誤らせた典型の一つだ。

◎トランプのアメリカについては『トランプ・ショックを超えて』として長年アメリカを研究されてきたアジア連合大学院機構理事長の進藤榮一氏に、ついで元朝日新聞政治部長・羽原清雅氏、福井県立大名誉教授・井上定彦氏に論じて頂き、初岡昌一郎氏・岡田充氏にはコラムでも取り上げて貰った。今月も新しいジャンルには、元NHKプロデューサーで映画監督の河邑厚徳氏に映画『笑う101歳X2 むのたけじ・笹本恒子』制作の意図を『預言者 故郷に容れられず』で、民藝運動のアーカイブ運動についてはアーカイブ制作委員会に、さらに行き詰まるアベノミックスについては成川秀明氏に『長引く日本のデフレ経済と日銀の量的緩和策の失敗』をご寄稿頂いた。

◎【オルタのこだま】安倍政権は年金抑制とカジノをセットで強行採決したが、私達は『日本にカジノはいらない』(元日本郵便副会長)を『月刊日本』からの許諾を得て転載した。

◎【メディア】オルタはささやかな市民WEBメディアだが、12年間毎月20日発行を厳守し内容も充実させてきた。最近は大手メディアからの問い合わせが増え、オルタ11月号・世田谷区長保坂展人氏の書評『公教育をイチから考えよう』(リヒテルズ直子/著)が、WEBメディア大手の『ハフィントンポスト』日本語版にオルタからとして全文転載された。オルタ148号の信田臣一氏の記事が銚子の日刊紙『大衆日報』に全文転載され地元で大きな評判になったことも嬉しい。

◎【訃報】10月30日、私の親友でオルタの支援者矢野凱也君(92歳)が亡くなった。心から哀悼の意を表したい。矢野君は漢籍に通じワグナーをこよなく愛す教養人だった。彼はオルタの創刊期に、私が数十通を印刷して知人に送るのを見かねて知人の山崎正樹社長に頼み、しばらく無償で印刷・発送をしてくれたオルタの恩人であり、改めて感謝したい。

◎【日誌】11月21日:自宅・山崎正樹・仲井富・山田高。22日:プログレス研究会。24日:議員会館・阿部知子。25日:日吉・久保孝雄・竹中一雄。26日:星稜会館・NDの会・白井聡。27日:自宅・小暮剛一・野沢汎雄。29日:自宅・阿部真彩。

12月2日:仏教に親しむ会。5日・6日:銚子・茂原・信田臣一・長尾治彦・羽原清雅・小林吉雄。10日:池袋・有田芳生忘年会。11日:ユニオン教会・復興バザー・加藤ディマ。12日:自宅・矢野凱也偲ぶ会打ち合せ。13日:自宅・河邑厚徳・野沢汎雄。14日:自宅・仲井富。17日:学士会館・清水浩之・鈴木一二三・大原雄。19日:学士会館・白井和宏・沢口。

◎今年もご愛読・ご支援有難うございました。来年も宜しくお願いします。

■【今月のオルタ動画案内】
  YouTube 配信 http://www.youtube.com/user/altermagazine

◎フランス大統領選挙と左翼の混迷       鈴木 宏昌


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