【オルタの視点】

立憲フォーラム通信について

福田 誠之郎
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 「立憲フォーラム通信」を毎朝9時前後に発信しています。今日、12月15日で525号を数えました。
 いま、スタートしたのは何時だったかを調べてみると、2015年5月26日に0号を発信していました。その時に記した前ふりは以下でした。

 「今日から衆議院安全保障特別委員会での審議が始まりました。
 そこで、立憲フォーラムとしては関係者の方がたに委員会での論議を知っていただくために委員会審議の議事録をなるべく早くにお送りしようと考えています。また、事前情報もお伝えします。」

 当初は、衆院特別委員会で開始された安保法制に関する国会審議をとにかく早く、正確な情報として伝えることを目的にしていました。国会の立憲フォーラムの議員事務所を通じ、当日、或いは翌日に委員会の速記録を入手し、直ぐに送信したのです。ただ、この速記録は確定版ではありませんから、いつも、取扱に注意してくださいと、2次使用を避けてもらいました(単純な転送は可ですが)。
 同時に国会周辺などでの様ざまな催し、集会などの予告、事前情報もなるべく入手して載せるようにしました。

 では、どういうキッカケでこうしたことを始めたのかと言えば、安保法などについて議論していた少人数の会合で、山口二郎さん(法政大教授・立憲デモクラシ―共同代表)が「皆で情報を共有できるものがあれば良いんだけれどね」と発言されたことでした。私は、それはそうだけれど誰ができるだろう、誰かやってくれる人はいるだろうか?と考えてみました。結局、そういう人は思い当たらず、決してネットなどに強くない私がやるしかないか、と考えてスタートした訳です。
 国会審議を読んでもらうためにはスピードが重要で、そういう意味では電子情報の強さを生かすものではありました。

 1年半、ほとんど休まずに出し続けてきた訳ですが(日本を離れる時には議連の秘書さんにどうしても必要な情報は発信してもらいました)、いまは相当にボリュームが増えた「通信」になっています。
 増えた理由のひとつは、メディアの劣化、権力チェック機能の低下が誰の目にも明らかになっている中、読んでおくべき記事、社説などを項目別に載せるようになったこと。もうひとつは、市民グループなどが催しの掲載を依頼してくることが増えたこと。IWJの中継などをできるだけ告知しようとしていること、沖縄の地元紙2紙の報道を丁寧に紹介することなどです。

 今朝、配信した525号でいうと、オスプレイの「不時着」報道に対し、米軍準機関紙「星条旗」は Crash(墜落)とヘッドラインで報じていることを取り上げ、また、4紙の社説、『琉球新報』や『沖縄タイムス』の報道など10本を超えてピックアップしています。オスプレイが南スーダンでゲリラの小銃に追い払われたという2014年11月15日の報道も採録しています。

 百聞は一見に如かず、fukuda@haskap.net の福田まで申込み頂ければ、見本の「通信」をお送りします。

 では「通信」の送付対象はどうなっているか、と言えば、国会議員・自治体議員、マスコミ関係者、学者、弁護士、平和・市民・労働運動関係者、政党本部、普通の市民などで、直接の送付は千人に少し届かない位でしょう。ただ、転送は自由としていますので、法曹関係や労組、自治体議員関係、沖縄関係などで相当数の転送をしているようです(事前の断りがある場合もあり、ない場合もあるので正確なところは全然把握できていません)。

 今年5月、韓国済州島で平和に関するシンポジウムがあり参加したのですが、受け入れた中心メンバーに「あなたの通信をいつも読んでいます」と言われて驚いたことがありますし、元最高裁判事から立憲フォーラムのブックレットの注文があり、鳩山由紀夫元首相にも送信していて、意外にすそ野は広がっているようです。

 この作業は自宅居間のテーブルで毎朝行っているのですが、実は隣のパソコンでパートナーの小竹雅子さんがほぼ週に一回、無料のメールマガジン「市民福祉情報オフィス・ハスカップ」情報を出しています。こちらは介護問題に特化したメルマガで、送信者が1,800人を超え、14年以上も続いていて、11月28日の発信が891号を数えています。このメルマガの申込みは http://haskap.net/ からできます。
 当初はしんどいことをしているな、と彼女の作業を眺めていただけでしたが、自分が当事者になるとは全く思いもしませんでした。

 ただ、毎朝「通信」のため新聞などのチェックをルーチン化すると、それほど大変ではありません。時間の限りがあるので集中力をそうとう高めた作業になりますが、私は長く新聞をつくる仕事に携わってきたので、情報の取り方はこれまでとそんなに変わりません。ただ、いまは大切な情報の洩れがないようにすること、できれば新聞以外の電子情報の紹介もしたいと考えているところが違っていると思います。

 そして、何と言ってもスタート時からの変化は各紙の電子情報の有料化が急速に進んだことです。長らく『毎日』を主として配信していましたが、『毎日』はこの間、大型企画はもちろん、200字程度の記事でさえ有料化してきています。ですから、勢い共同通信や時事通信などが主な記事となっています。
 『朝日』は先日、社説まで有料化(他紙は無料)しました。私の「通信」を送っている『朝日』の論説委員に国会内の学習会で会う機会があり、社説はネットで読めるようにしてほしいとお願いしました。検討しますということで、それから1週間ほど経って無料で読めるようになりました。
 ある意味、ネット配信の有料化の基準が各紙不明で、『沖縄タイムス』は長い記事はほとんどプレミアムマークがついて読むことができません。
 私としては『日刊ゲンダイ』やロイター通信(経済記事は日本に全国紙とは違った切り口)などに目を通すようにして、内容を充実していくつもりです。

 最後に、いま私たちがどのような情報環境にあるかについて、気が付いた点に触れておきます。

 情報の過多は、情報アパシー、情報忌避を生じさせることは明白で、そのことから脱するために情報に優先順位をつけて整理して行くことが大切です。いわゆるメディア・リテラシーですが、これも「言うは易し」で、私の作業はこの手助けになれば、という気持ちがあります。

 もう一点はSNSという新しい情報ツールです。私はツィッターをやりませんが、トランプ氏を見ていると、企業批判も閣僚人事も皆ツィッターで明らかにするという本当に新しい事態に立ち至っています。これまでの「アラブの春」のような市民、民衆サイドの活用だけでなく、権力側が「つぶやき」で株価も操作し、権力者の任命まで行ってしまっている訳で、この事がこれまで積み重ねてきた民主主義の手続き、ルールとどのような折り合いをつけることになるのか、ここは注意すべきところだと思います。

 もう一つは、12月12日の立憲デモクラシ―の記者会見のときに哲学者の西谷修さんが指摘した「ポスト・トゥルース(真理)」という事態です。西谷さんはこれを、本当(真理)であろうとなかろうと情動的に言った者勝ち、ということになっていて、全体性が個に圧倒的に勝る、という事態だと説明しました。
 その代表的なものを「通信」521号で以下のような紹介しました。

 米大統領選:「偽ニュース」批判高まる ネット上で拡散 https://l.mainichi.jp/1bOV6L

 「偽ニュース」とはどんなレベルかと言えば、オノ・ヨーコさんが「私は1970年代にヒラリー・クリントン氏と性的関係を持った」と告白、等といった事実無根の情報です。こうしたものを流して投票行動に影響を与えたというのです。
 まさに「ポスト・トゥルース」時代の選挙と情報の関係を示すものです。
 このような時代に突入しているいま、私たちがそれに対峙するには地道にトゥルースの情報を入手し、人びとに伝える作業が不可欠なのだと思います。その一翼を担うつもりで早起きを続けます。

 立憲フォーラムについて説明をしておきます。
 2013年4月に発足した超党派(民進、社民、自由、沖縄の風)の議連で現在は衆参48名の議員が参加、代表は近藤昭一衆議院議員、幹事長は辻元清美衆議院議員。毎月19日午後5時から院内集会を開くほか、憲法、安保、沖縄などで各団体と連携。ブックレットなどの発行を行うほか、毎朝「通信」を配信。自治体議員立憲ネットワークと連携しています。HPは http://www.rikken96.com/

 (立憲フォーラム事務局)


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